九州豪雨 雨の降り方は通常の20倍
九州で発生した「線状降水帯」をとらえたひまわり8号。朝倉市では通常の20倍もの強さの雨が降った。いつもと雨の降り方が違うと感じたら、気象庁の「大雨・洪水警報の危険度分布」をみて、行動してほしい。
ひまわり8号がとらえた「線状降水帯」
表紙の写真は気象衛星ひまわり8号がとらえた「線状降水帯」です。非常に発達した積乱雲に特有なゴツゴツとした質感がわかります。このとき、福岡県朝倉市では猛烈な雨が降っていました。
一方で、発達した雨雲以外の場所に目立った雲はありません。朝倉市で雨が激しかった頃、16キロ離れた太宰府市ではほとんど雨は降っていませんでした。「夕立は馬の背を分ける」というけれど、雨は強くなれば強くなるほど、狭い範囲に集中するようになります。だから、天気予報では「局地的に弱い雨が降る」とは言わないのです。
空梅雨列島から一転、大雨に
こちらの図は梅雨前半(上)と最近10日間(下)の雨量を比べたものです。
九州北部は梅雨の前半、雨が極端に少なく、とくに福岡県は平年の2割と全国で最も少なくなりました。
しかし、その後、状況が一変、梅雨前線と台風3号の影響で、これまで雨が少なかった地域で雨が降り出したのです。
最近10日間の状況をみると、東北南部から九州北部にかけての広い範囲で平年の1.3倍から2倍の雨量となりました。
このように空梅雨から一転、大雨に見舞われた年は過去にもあります。そのひとつが1982年7月の長崎豪雨です。梅雨入り後、ほとんど雨が降らなかったのが、7月11日頃から雨が強くなり始め、23日には未曾有の豪雨災害が起こりました。長与町で観測された1時間雨量187ミリは日本歴代最高の記録です。
梅雨の雨は「西高東低」
梅雨に降る雨は西日本で強く、東日本で弱いという特徴があります。たとえば、ある期間の総降水量を降水日数で割った値「降水密度」で梅雨の雨をみてみると、東京は一日平均15ミリに対して鹿児島は30ミリなど、地域によって一度に降る雨に大きな違いがあります。
そこで、朝倉市の降水密度を調べてみました。梅雨の雨は一日平均すると26ミリくらいですが、今回の雨は一日で516ミリ、実に20倍もの雨が降ったのです。雨は地域による差が非常に大きいため、単純な比較は難しい。
気象庁の大雨・洪水警報の危険度分布はその地域の雨の降り方や過去の災害事例を基に、災害が差し迫っているような地域が一目でわかるように色で表現しています。
お住いの地域が赤色になった場合は避難の準備をして、早めの避難を心がけてください。薄い紫色は災害が差し迫っている非常に危険な状況、濃い紫色はすでに災害が起こっているような極めて危険な状況を表しています。
いつもと雨の降り方が違うと感じたら、大雨・洪水警報の危険度分布をみて、行動に移してほしいと思います。
【参考資料】
気象庁ホームページ:警報の危険度分布
長崎地方気象台:1982年(昭和57年)7月長崎豪雨