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粘り強い斎藤慎太郎八段(29)辛抱実らせ渡辺明名人(38)に逆転勝利! 名人戦七番勝負第3局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月7日・8日。福岡県福岡市・アゴーラ福岡山の上ホテル&スパにおいて第80期名人戦七番勝負第3局▲渡辺明名人(38歳)-△斎藤慎太郎八段(29歳)戦がおこなわれました。

 7日9時に始まった対局は8日21時5分に終局。結果は134手で斎藤八段の勝ちとなりました。

 2日目夜に入った時点では渡辺名人優勢。しかし斎藤八段は辛抱を実らせて逆転に成功しました。

 七番勝負は渡辺名人2勝のあと、斎藤挑戦者が1勝。第4局は5月19日・20日、山口県山口市「名勝 山水園」でおこなわれます。

 両者の対戦成績はこれで渡辺10勝、斎藤5勝となりました。

終局後コメント

斎藤慎太郎八段「(角換わりで渡辺名人の19手目▲2四歩からあまり前例のない形になった)そうですね。(36手目△7六角成と)馬を作るぐらいのところで『一局なのかな』とは思ってはいたんですが。ちょっと馬を作ったあとが構想がわからなかったので、あまり自信がなかったなと・・・。(1日目は48手目まで進んで封じ手)桂損なので、徐々に厳しくなる局面かなあ、というふうに思っていました。(2日目は)少しでも先手玉にいやみが残るようにしておきたいな、とは思っていました。(79手目▲3七桂で夕休)あそこもちょっと手が難しくて。手渡しでは足りないかなあ、とは思っていたんですが。(その後)△2五桂とか△3三桂みたいな筋が逆転をねらうためには必要なのかなあ、とは思っていました。(その後逆転して120手目)△6一金と打って自玉がしっかりしたので、ギリギリつながったのかな、と思っていました。壁銀なので、最後△3三桂とか(△3三)銀とかいう形を常に目指して、一応その形を作れたのかなと。(一局を振り返って)序盤からどういう構想で指していいかわからなかったので、ずっと苦しい将棋になってしまっていたかな、と思います。(第4局以降について)5月は次が早くあるので、本局を反省して次にいかせるようにと思います」

渡辺明名人「(19手目▲2四歩からは用意の作戦?)あの形になったら(やろうと思っていた)作戦だったんですけど。手将棋にはなりやすいかな、とは思ったんですけど。(43手目)▲8八飛車と回るぐらいまでは定跡というか、ある形なのかな、とは思ってたんですけど。桂得したあとの方針が難しかったんで封じ手にしたんですけど。そうですね、なんかちょっと、穏やかにやってるのも、なんか忙しくなりそうだったんで。(51手目)▲4五角から打って出る感じになっていました。(2日目夕休時点で79手目▲3七桂まで進み)あそこは指しやすいとは思ったんですけど。ちょっとでも、3七桂かかった(攻められた)っていうところで、結果的にはいやみが残る展開になってしまったんで。『▲3七角の(ほう)がよかったかな』という感じのことも思っていました。(93手目)▲2八歩と受けた手がたぶんよくなかった。その前に△2五桂と打たせたのもよくないと思うんですけど。そうですね、方針がちぐはぐになってしまって。なんかそうですね。(84手目)△6三金のあとの指し方がちょっとちぐはぐだったですね。(▲2八歩に△同馬を読んでいた?)ああ、そうですね。それで受けて長く指そう・・・それでもちょっと元よりは失敗してるんですけど(苦笑)。まあちょっと長く指そうかな、と思っていたんですけど。(△2八同馬ではなく先に△3七桂成で)ええ、いっぺんにダメになってしまった感じがしました。(98手目)△2八馬のところが思ったよりダメになってしまったんで。一手で、そうですね、いっぺんにわるくなってしまったかな、という感じですね。(一局を通して)手将棋で難しい将棋で。封じ手のところもかなり悩ましかったんですけど。ちょっと終盤、方針が決まらないでやってしまったのが、そうですね、そこが悔いが残りますね。(これで2勝1敗)また来週あるので切り替えていきたいと思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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