【ミッキーはビールが苦手だった?】ウルトラマンやプリキュアをも巻き込んだ知られざる「お酒の力」とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)と申します。
特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて、日々活動をさせて頂いております。
うだるような暑さが続いている昨今ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
お風呂上がりのビールが恋しくなる季節になりましたが・・・
さてさて・・・今回のお話のテーマは「お酒」です。
「んっ?今日は大人向けの記事なの?」と言われると決してそういうわけではなく・・・。
今回は、子ども達に向けて発信された日本とアメリカの映画やテレビ番組に焦点を当て、これらの作品の中で描かれたお酒のあり方についてお話しをしたいと思います。
本題に入る前に・・・突然ですが、皆様はお酒はお好きでしょうか?
「お前はどうなの?」と聞かれると私は嗜む程度です(笑)。仲の良い友人や先生方とはよく飲みに行きますし、コロナ禍でのステイホーム中もよくzoom飲み(宅飲み)をしていました。(「要は好きなのね?」と言われると何も言い返せませんが・・・)
このように、お酒を飲むことは味を楽しむだけでなく、人と人を繋げるコミュニケーションとしても機能しており、私達が暮らす日本という国では、お酒は神様とのコミュニケーション手段としても機能してきました。私達の祖先は「お酒」を「清らかなもの」、「神様の領域に近付けるもの」と捉えており、仏教が伝来する以前より神様にお願いをし、教えを聞く「神事」が暮らしの中に浸透し、その場面には必ず「御神酒」が存在していたのだとか。
現代の私達の暮らしでも神棚にお酒をお供えしたりしますが、本来お酒というのは神様と人々を繋げる神秘的な飲み物でもあったのです。
日本最古の書物である「古事記」においても、須佐之男命(スサノオノミコト)が美しい娘達を食い殺してきた怪物、八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)を退治する際、お酒(八塩折之酒)の入った酒桶でヤマタノオロチをおびきだし、酔って寝てしまったところを退治したという神話が掲載されています。
このように、お酒と神様には古来より切っても切れない密接な関係があったわけですが・・・
そんな人や怪物を酔っ払わせてしまう「お酒の力」ですが、それは日本のアニメや特撮番組に登場するスーパーヒーローや怪獣達も例外ではありませんでした。さらに、私達がよく知っているアメリカの有名キャラクター達ですら、時にお酒の力に屈してしまったこともあったようです。
そこで今回は、国内外で数多あるアニメ・特撮ヒーロー番組に登場するキャラクター達の中から、円谷プロ制作のウルトラマンシリーズ、東映アニメーション制作のプリキュアシリーズ、ウォルト・ディズニー・カンパニー制作のミッキーマウスシリーズに焦点を当て、お酒と日米キャラクターの関係史について紐解いていきます。
☆本記事は「私キャラクターものをよく知らないわ」、「難しい話はちょっと・・・」というみなさまにもお届けできるよう、概要的かつ深すぎないお話を心がけておりますので、お好きなものを片手に、ゆっくりご覧頂けますと幸いです。暑い時期ですので、是非お部屋を涼しくしてご覧ください。
【この酔っぱらい怪獣!】ウルトラマンタロウも大あきれ?タロウに水をぶっかけられた怪獣って誰?
まずお話しをさせて頂くのは、円谷プロ制作のウルトラマンシリーズ。
皆様はウルトラマンシリーズをご覧になられたことはありますでしょうか?
少しだけ、ウルトラマンシリーズについて概要的にお話しさせて頂ければと思います。
ウルトラマンシリーズは株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』を起点とする特撮シリーズです。
1966年に『ウルトラマン』が放送され、身長40mの銀色の巨人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、『帰ってきたウルトラマン(1971)』、『ウルトラマンエース(1972)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』とシリーズが続いていきました。
今回は『ウルトラマンタロウ(1973)』の物語の中で発生した珍騒動についてお話しします。
『ウルトラマンタロウ(1973)』は、ウルトラの父とウルトラの母の息子であり、ウルトラ6番目の弟(※1)として地球に派遣されたウルトラマンタロウが、特捜チーム『ZAT』の隊員である勇敢な青年・東光太郎と一心同体となって、怪獣や宇宙人から地球を守る物語。
本作では、ウルトラマンタロウの活躍はもちろんのこと、彼と対峙する怪獣達も非常にユニークに描かれたのも特徴でした。大笑いする怪獣、餅つきの怪獣、野菜好きの怪獣、歌を歌うのが大好きな怪獣・・・といった具合に、単に暴れる怪獣を描くだけでなく、子ども達にも親しみやすい個性が与えられていました。
そんな愛らしいタロウの怪獣達ですが・・・この中に、酔っ払いの怪獣がいたことをご存知でしょうか?
その怪獣とは、酔っ払い怪獣ベロン。ベロンはウルトラマンタロウ第48話『日本の童謡から 怪獣ひなまつり』で登場しました。身長54mという巨体で口から火を噴く、「酒もってこーい!」と人間の言葉をしゃべり、「ドロンパ~」と叫んで姿を消し様々な場所に移動する、極めつけは酔っ払って暴れ回るという・・・いろいろな意味で「タチの悪い」怪獣だったのです。
さらに厄介だったのは、本質的にベロンは「悪い怪獣ではない」ということでした。ベロンは宇宙人(ファイル星人)のペットであり酒好きなだけ。しかもベロンを連れ帰らなければ宇宙人達は母星に帰れないらしい・・・つまり宇宙人達の事情を汲めば、タロウでもむやみにベロンを殺せないわけです。
とはいえ街中で暴れられては困る。そこでウルトラマンタロウを支援する特捜チームZATは、ベロンを宇宙に返す2つの作戦を実行します。
まずひとつめが「ダンス」作戦でした。酒好きのベロンは踊りも好きという性格を利用し、ZATの隊員達と地球の子ども達が、日本のヒットソングに合わせてベロンと一緒に踊るというものでした。
そのヒットソングというのが、フィンガー5さんの『恋のダイヤル6700』、山本リンダさんの『狙いうち』、金井克子さんの『他人の関係』でした(1973年当時のヒットソングが、これだけ子ども番組に集結するだけでもかなり豪華ですが・・・)。
奮闘する子ども達やZAT隊員と共に、ベロンは踊り狂うも、まだ大人しくなりません・・・。
そこで提案された2つ目の作戦が「白酒」作戦でした。ZATの戦闘機の中で白酒を調合し、それをベロンに大量に飲ませることで眠らせてしまおうというものでした。
「副隊長・・・変な話なんですがね、スカイホエール(戦闘機)で白酒が合成できますかね?」(ZAT隊員)
「なぁにィ~?」(ZAT副隊長)
「白酒!」(ZAT隊員)
「できる!それを奴に飲ませるんだな!」(ZAT副隊長)
ずいぶんと軽いノリで話が決まってしまっていましたが(ZATの科学力は優秀なのです)、戦闘機での白酒の合成に成功し、それを大量にベロンに飲ませたところ、大問題が発生しました。
それは「アルコールの量を間違えてしまった」のです。
アルコールを多く合成してしまったので、ベロンはますます凶暴になり、「えぇーい!くそぉー!」と大暴れ。お酒を提供した戦闘機まで墜落させていまいます。
「おぃっ!アルコールの量が違ったかな?」(ZAT副隊長)
とうとうZATでも手がつけられなくなってしまい、ウルトラマンタロウが登場。タロウとベロンは戦いますが、圧倒されたベロンは戦意喪失。その上突然踊り出し、「おどろうよぉ~」とタロウに呼びかけます。タロウはベロンに同調し、山本リンダさんの『狙いうち』の振り付けでダンスをしますが・・・(タロウはダンスに馴れていないのか、これがなんとも微妙な踊りでした。下手とは言ってません)
「ちがぁう!ちがぁう!」とベロンはタロウに火炎放射。これにタロウは呆れてしまいます。そこでタロウは、ベロンの酔いを冷ますため、巨大な水入りバケツを召喚して水をぶっかけます。これが功を奏し、ベロンは眠ってしまいました。ベロンはその後、宇宙人達と共に宇宙へ帰って行ったのでした。
上述してきた『ウルトラマンタロウ』は、ベロンのようなコミカルな怪獣達がその後も多数輩出されて物語を終了しました。その後、ウルトラマンタロウの物語は、彼の息子である『ウルトラマンタイガ(2019)』へと継承されますが、本作でも雷様のような風格の怪獣を筆頭に、個性豊かな怪獣達が多数登場しています。是非、配信サービス等(外部リンク)でチェックしてみて下さいね♪
※1 :ウルトラ6兄弟とは、『ウルトラマン(1966)』から『ウルトラマンタロウ(1973)』まで登場した6人のウルトラマン達の総称。ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウで構成されるウルトラ6兄弟は、血の通った本当の兄弟ではありませんが、この6人は兄弟のような強い絆を有していることから、自分達を「ウルトラ6兄弟」と名乗っています。
【酔うと絡んでくるプリキュアがいた?】アラサー女子かつ酒好きのプリキュアが登場した伝説のイベントとは?
みなさまは、プリキュアシリーズをご覧になったことはありますでしょうか?
プリキュアシリーズは東堂いづみ先生の原作で、2004年に放送が開始された東映アニメーション制作のアニメ作品『ふたりはプリキュア』に端を発するアニメシリーズです。
「女の子だって暴れたい!」というキャッチコピーのもとで誕生した『ふたりはプリキュア(2004)』は、性格の異なる2人の女の子が伝説の戦士・プリキュアとなり、邪悪な組織「ドツクゾーン」と戦う物語。
好評を博した『ふたりはプリキュア(2004)』はその後、『ふたりはプリキュア Max Heart (2005)』や『ふたりはプリキュア Splash Star(2006)』と派生作品が毎年放送され、以降も『Yes!プリキュア5 (2007)』、『ドキドキ!プリキュア(2013)』、『スター☆トゥインクルプリキュア(2019)』と世代を跨ぎながらシリーズ化され、現在放送中の『ひろがるスカイ! プリキュア(2023) 』において、プリキュアはシリーズ誕生20周年を迎えました。
「ちょっと待て!プリキュアって、中学生の少女達が変身するお話じゃない?そもそも中学生はお酒飲めないでしょうよ?(お酒は20歳になってから!)」
驚くなかれ・・・実は、プリキュアがお酒を飲んだ事例は存在していました。
その作品こそ、2019年に放送されたプリキュアシリーズ第16作目『スター☆トゥインクルプリキュア』でした。
本作は、中学二年生(星奈ひかる)、中学三年生(天宮 えれな、香久矢まどか)、宇宙人(羽衣ララ、ユニ)で構成される5人のプリキュアが、全宇宙の支配を企む悪の組織『ノットレイダー』から、宇宙の平和を守る物語。
この『スター☆トゥインクルプリキュア』は1年に渡る放送を終了した後、その続編をイベント(舞台)で描くというプリキュアシリーズで初めての試みが実践されました。
そのイベントというのが、2020年2月に中野サンプラザホール(東京)で開催されたイベント『スター☆トゥインクルプリキュア感謝祭』。
当イベントにおいて、『スター☆トゥインクルプリキュア』から15年後の世界を描いた朗読劇「キラやば☆朗読劇 15年後の再会」が披露され、アラサー女子となった5人の元プリキュア達が中野の居酒屋で女子会を開き、(良い意味で)やりたい放題の大騒ぎを起こすという彼女達の自由奔放な姿が描かれました。
ひかるは宇宙飛行士に、えれなは通訳士に、まどかは有人ロケット開発プロジェクトのリーダーに、ララは惑星調査員に、ユニは母星の復興に尽力・・・と時を経て離れ離れになっても、集合すればすぐに親友に戻った彼女達ですが・・・・。
今回ご紹介するのは、メンバーのひとりである香久矢まどか(キュアセレーネ)。
プリキュア達の通う観星中学校で生徒会長を務め、「観星中の月」と呼ばれる生徒達の憧れの存在でした。性格は冷静沈着かつ穏やかな名家の令嬢であり、ピアノと弓道が得意。父は政府高官で母は世界的なピアニストであり、当初は父の考えに則り行動してきたものの、ひかる達との交流やプリキュアへの覚醒を通じて、父の意に背き自分の意思で生きることを決意するという、いわば「箱入り娘」のようなキャラクターでした。
そんな彼女は15年後、有人ロケット開発プロジェクトのリーダーとなり、宇宙飛行士となったひかるのサポートに徹していることが明らかになります(ちなみに未婚)。
普段は言葉の語尾に「です」「ます」、挨拶は「ご機嫌よう」と上品かつお嬢様の風格が漂う彼女ですが、なんと非常に厄介な酒癖があることが発覚しました。
つまり、「酔うと絡む癖」があったのです。
「じゃあ私は・・・とりあえず生で。あとはポテサラと軟骨唐揚げ、えーたこわさを3人前ずつ。あっ、ホッケはどの位の大きさですか?あーなるほど。じゃあ2枚お願い致します。」(まどか)
仕事関係で居酒屋行きに馴れており、「飲まないとやってられない」と言及した上、ウォッカを豪快に一気飲み。
さらに日本初の有人ロケット宇宙飛行士となったひかるが、巷でサインをねだられて大変だと語ったのに対し・・・
「ちょ~しのってんじゃないわよぉ〜?ろけっとはぁ〜、ひこうしだけでとばしてんじゃないのぉ〜、わたくしたちぃ、うらかたのばぁっくあっぷがあるからとべるんだよぉ〜?」(まどか)
さらに、ヒカルの報告書が「中学生の書いた絵日記」のようだと絡んでいった上、ララの変身したキュアミルキーの物真似をしてララをいじる・・・。
「てぇ~んにあまぁねくぅ~、みぃるきぃ~うぇい!きゅあみぃるきぃ~!たこわさぁきてぇないる~ん!およぉ~!およぉ~!およぉ~!ルン♪」(まどか)
1年間『スター☆トゥインクルプリキュア』において、まどかというキャラクターに理解を深めてきたファンにとって、正に「キャラ崩壊」とも呼べる事態でしたが、他のメンバーも例外ではなく、梅干しサワーを注文したひかるは酔うと高倉健さんのような性格になる、テキーラ3ショットを注文したえれなは泣き上戸になる、ウォッカではなくふぐのヒレ酒を注文したユニはアイドルで再デビューを宣言する・・・と酒浸りに成る中、カルーアミルクを注文したララは朗読劇の最後・・・・
「オヨォォォォォォォォォ・・・・」(ララ)
盛大に戻してしまい、朗読劇は閉幕します。
上述したとおり、朗読劇そのものは「やりたい放題」であった反面(私もお腹を抱えて笑いましたが・・・)、「どこまでいけばプリキュアとして許されるのか?」といった挑戦的な描写も見受けられたと思います。好評を博した当イベントはその後も継続され、『ヒーリングっどプリキュア感謝祭(2021)』、『トロピカル~ジュ!プリキュア感謝祭(2022)』、『デリシャスパーティプリキュア感謝祭(2023)』と、プリキュアシリーズの1年を締めくくる恒例催事として、現在まで定着していくようになります。
「ところで、記事読んで大人のプリキュアに興味を持ったんだけど、なにか他に作品ない?」
・・・と言われますと、時を経て大人に成長したプリキュアを描いた作品は、実は数多存在しています(※2)。その中でも最新作は、東映アニメーション・スタジオディーン制作で今年10月にNHK Eテレで放送予定の『キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~』(外部リンク)があります。
本作は『Yes!プリキュア5(2007)』、『ふたりはプリキュア Splash Star(2006)』の2作品で活躍したプリキュア達が大人になった姿が描かれるのだとか。既にいくつかの情報が解禁されておりますので、続報が楽しみですね♪
※2:歴代プリキュアシリーズでは、各作品の最後に大人になって活躍する少女達(元プリキュア)の姿が描写されることは度々ありました。『Go!プリンセスプリキュア(2015)』や『魔法つかいプリキュア!(2016)』の最終回では成長したプリキュア達の姿が描かれ、『HUGっと!プリキュア(2018)』の最終回では、主人公・野乃はな(キュアエール)が母親となり、娘(はぐみ)を出産するシーンまで描写されています。
【ミッキーはビールが苦手だった?】飲酒に喫煙・・・素行不良だったミッキーマウスが紳士になった大人の事情とは?
ここまで、日本のアニメや特撮作品における「酔っ払い」について上述してきました。子ども達の憧れであるヒーローや怪獣達も酔っ払わせてしまうお酒の力、恐るべしですが・・・
実はこのお酒の力に翻弄されたのは、日本のキャラクターだけではありませんでした。
その代表格が、エンタメ業界の王者である「ディズニー」のキャラクター達。
今年会社創業100周年を迎える同社ですが、『ピノキオ(1940)』や『ダンボ(1941)』等、これまでディズニーが制作した数々のアニメーション映画の中には、キャラクターの飲酒シーンが度々登場していました。
例えば、空飛ぶ象の成長を描いた映画『ダンボ(1941)』では、空飛ぶ子象であるダンボと、その相棒であるネズミのティモシーが、誤ってビール入りの水を飲んだために酔っ払ってしまい、幻影である「ピンクの象」の姿を見てしまう描写。結果的には、この酔っ払い事件が契機となってダンボは空を飛べるようになるきっかけを掴むのですが、このように物語の重要な鍵を握るシーンにもお酒の力が絡んでいたのです。
このお酒を巡る描写、今やディズニーを代表する世界的なスーパースター・ミッキーマウスも例外ではありませんでした。
本題に入る前に、簡単にミッキーマウスのことをおさらいしてみると・・・。
ミッキーマウスは、1928年11月18日に米国・ニューヨークにあるコロニー劇場で公開された、映画『蒸気船ウィリー』で、恋人のミニーマウスと共に銀幕デビューを果たしました。
本作はたちまち観客の心を掴み、その後ミッキーマウス主演の映画はシリーズ化され、ミッキーは全米で一番人気のアニメーション・キャラクターとして定着するようになります。
また、ミッキーの活躍は映画やテレビ番組だけに留まらず、東京ディズニーランドをはじめ世界各地に点在する大型テーマパーク「ディズニーランド」でも、ミッキーはホスト役として現在も変わらず活躍し続けています。
スミソニアン国立航空宇宙博物館(National Air and Space Museum)
住所:Independence Ave SW & 6th St SW, Washington, DC 20024
TEL:+1 202-633-2214
Web:https://airandspace.si.edu/(外部リンク)
そんなミッキーマウスですが、かつてはやんちゃかつ悪戯っ子だったのは有名な話。特に、デビュー間もない1920年代から1930年代の作品において、その動向は顕著でした。
驚くかもしれませんが、ネコを踏みつけた上で尻尾を掴み、ぶんぶん振り回した上で放り投げるわ、母豚の乳を飲む子豚達を蹴っ飛ばすわ、鳥にジャガイモは投げつけるわ、喫煙はするわ、恋人のミニーにキスを強要してひっぱたかれるわ・・・といった悪行を、常習的に繰り返していた時代がありました。
東京ディズニーランドで活躍するような、紳士的かつフレンドリーな性格のミッキーマウスをよく知る私達日本人にとって「ミッキーはそんなことしないよ」と思われるかもしれません。
もちろん現在と比較して時代背景も異なる上、ギャグのツボや国民性も違うので、一概にこれらの描写を「よろしくない」と一蹴できるものではありませんが、銀幕デビューしたばかりのミッキーの性格は洗練されておらず、私達がよく知る子ども達に模範的な性格となるのは少し後のこととなります。
そんなデビューして間もないミッキーが「やらかした」事件のひとつが、飲酒でした。1928年12月30日に公開された映画『ギャロッピン・ガウチョ(英題:Gallopin'Gaucho)』では、なんとミッキーマウスの貴重な飲酒シーンを観ることができます。ミニーマウスが踊り子となって働く酒場に到着したミッキーは、喫煙後にビールを一杯ひっかけます。
・・・・とはいえ、飲み慣れていないのか、ビールの泡に手こずってしまったよう。その後、ミッキーの宿敵・ピートにミニーがさらわれてしまいますが、ミッキーはピートに戦いを挑み、ミニーを助け出して勝利を納めます。
物語そのものはハッピーエンドで閉幕しますが、実はこの『ギャロッピン・ガウチョ』が公開された1928年は、アメリカで酒類の製造、販売を一切禁止する禁酒法(1920年~1933年)の時代でした。つまり、当時のミッキーは大胆にも、大勢の観客の前で違法行為を披露してしまったのです。
現在は、公開前の映画における特定の描写が問題視され、場合によっては公開中止に追い込まれた事例も複数確認できますが、それに比べると当時はおおらかだったのかもしれません。
ところが、やがてミッキーの人気が高まるにつれ、上述してきたようなミッキーによる数々の悪行描写は、次第になりを潜めていくようになります。
国立アメリカ歴史博物館(National Museum of American History)
住所:14th St NW & Constitution Ave NW, Washington, DC 20004
TEL:+1 202-633-1000
Web:https://www.si.edu/unit/american-history-museum(外部リンク)
アメリカの映画史研究・映画評論家であるレナード・マルティン氏によれば、ミッキーの人気が高まるにつれ、ミッキーマウスの映画のストーリーに制約が生じてきたことを指摘しています。つまり、子ども達に悪い影響を与えないように、ミッキーに模範的な性格が求められるようになったことを挙げた上で、初期のミッキーが担っていた破天荒な性格は、同じくディズニーのキャラクターであるドナルドダックに継承されたことを述べています。その結果、怒りっぽい性格のドナルドはミッキーやグーフィーと好対照で、大衆的な人気を得てきたことを言及しています(DVD Walt Disney TREASURES「ドナルドダック・クロニクル Vol.1」、レナード・マルティン氏によるイントロダクション)。
つまり、「ミッキーができなくなったことを、ドナルドが引き受けるようになった」と言っても過言ではなく、ドナルドの自己中心的だけれども憎めない、思い通りにいかず人や物に当たる、自分から他者に悪戯を仕掛け、逆襲されて自滅するといった、「聖人君子」とは言い難いドナルドの人間臭い個性も、その背景には大人の事情から「良いやつ」となったミッキーの存在があったと言って良いでしょう。
いかがでしたか?
本記事ではお酒と日米キャラクターの関係について、3つの事例からご紹介しました。
お酒の力は、神のような力を持ったヒーローや怪物、そしてスーパースターをも翻弄させてしまう大きな力を秘めていたことが、本記事を通じて皆様に伝わりましたら嬉しく思います。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
参考文献・URL・DVD
・美酒伝承 酔山 https://suisenshuzo.jp/special/kamisama.html#%E3%80%8C%E3%81%8A%E9%85%92%E9%80%A0%E3%82%8A%E3%81%AF%E7%A5%9E%E4%BA%8B%E3%81%9D%E3%81%AE%E3%82%82%E3%81%AE%E3%80%82%E3%80%8D(外部リンク)
・松田孝宏(ブレインナビ)・木川明彦、『ウルトラマン画報上巻 光の戦士三十五年の歩み』、株式会社竹書房
・小宮山みのり、『ディズニー・トリビア』、株式会社講談社
・DVD Walt Disney TREASURES「ミッキーマウス/B&Wエピソード VOL.1 限定保存版」
・DVD Walt Disney TREASURES「ドナルドダック・クロニクル Vol.1」
・DVD Walt Disney TREASURES「ドナルドダック・クロニクル Vol.2」
・DVD Walt Disney TREASURES「ドナルドダック・クロニクル Vol.3」
・DVD Walt Disney TREASURES「ドナルドダック・クロニクル Vol.4」
上記でご紹介した作品ですが、『ウルトラマンタロウ(1973)』と『ウルトラマンタイガ(2019)』はTSUBURAYA IMAGINATION(外部リンク)にて配信中です。また、『スタートゥインクル☆プリキュア(2014)』もamazonプライムビデオ(外部リンク)で配信中です。さらに歴代ディズニーアニメーション作品もディズニープラス(外部リンク)にて配信中です。百聞は一見にしかずですので、是非ご覧になってみてくださいね♪
この記事をご覧頂き、「海外での日本特撮やアニメ作品の展開に興味を持った」という皆様、私の過去の記事やTwitterにて、海外現地での様子や商品展開についてもお話をさせて頂いております。宜しければ、ご覧ください。
(Twitterアカウント)
・Masamitsu Futaesaku Ph.D(Twitter)(外部リンク)
(Yahoo! Japanクリエイターズプログラム)
・二重作昌満(CREATORSサイト)