元F1ドライバーが3人も参戦!今年の「スーパーフォーミュラ」はツワモノ揃いで何だかスゴイ!!
2014年はモータースポーツ界にとって、どんな1年が待っているのだろうか。自動車メーカー、バイクメーカー共に本格的なモータースポーツ活動再開に積極的な動きを見せ始めている2014年は業界が「V字回復」する1年になるか。今年のモータースポーツ界を沸かせてくれそうな話題をピックアップする「Go! for 2014」。Vol.4は国内最高峰のフォーミュラカーレース「全日本選手権スーパーフォーミュラ」をピックアップする。
スーパーフォーミュラ、大変革の年
2月7日(金)、東京都内でホンダのモータースポーツ体制発表会が開かれ、様々なモータースポーツ活動の体制が発表された。1月末に発表が行われたトヨタのモータースポーツ活動の発表内容と合わせて、今シーズンを戦うチームとドライバーのラインナップが確定したのが「スーパーフォーミュラ」である。
「スーパーフォーミュラ」は全日本選手権の冠が付けられた国内最高峰のフォーミュラカーレース。日本のトップフォーミュラレースは「全日本F2000」(73年〜77年)、「全日本F2」(78年〜86年)、「全日本F3000」(87年〜95年)、「全日本フォーミュラニッポン」(96年〜12年)、そして「全日本スーパーフォーミュラ」(13年〜)と名称を変えて変化してきた。F1ドライバーを目指すためのF1傘下のレースというイメージをいまだに持っている人も多いが、ここ10年くらいは独自路線を歩んでおり、実力派ドライバー達がハイレベルな接近戦を展開している。
レースの内容は面白い。ただ、観客動員は伸び悩み、人気は「SUPER GT」に比べると今ひとつなのは否めない。しかしながら、昨年、海外でのレース開催を視野に入れて「スーパーフォーミュラ」と名称を変更。さらに、2014年はニューマシン「SF14」を製作し、エンジンも「SUPER GT」と共通の2.0L直噴ターボエンジンを使用するなど、車両規定に大幅な変更が加えられ、これまで以上のスピードアップが期待されている。
元F1ドライバーも3人、史上最強のメンバー集結
新車導入という変革のシーズンを戦うドライバーは19人。ホンダエンジンを使用するのが8人、トヨタが11人という布陣だ。そんな中、注目すべきは実績を充分に積み重ねた実力派ドライバーが多いということだろう。
今年はなんと元F1ドライバーが3人も「スーパーフォーミュラ」を戦うことになった。2008年〜09年、「ウィリアムズ」で走った中嶋一貴、2005年に「ジョーダン」2011年〜12年を「HRT」で走ったナレイン・カーティケヤン、さらに「レッドブル」「トロロッソ」「フォースインディア」「HRT」で80回以上のF1出走経験を持つヴィタントニオ・リウッツィの参戦も決定した。
その元F1ドライバーたちの他に、ルマン24時間レースの総合優勝を果たしたアンドレ・ロッテラー、ロイック・デュバル。「ホンダ」「フォースインディア」などでF1テストドライバーとしての経験も豊富なジェームス・ロシター。さらに元「インディカー」ドライバーの武藤英紀など、海外での実績と経験が充分なドライバーが多く、「スーパーフォーミュラ」はかつてのF1を目指すためのレースとは趣が異なる。
ドライバーラインナップは下の画像にまとめた
ドライバーラインナップの変更としては、伊沢拓也(2013年シリーズ7位)がヨーロッパのF1傘下のGP2へ転身。2007年、08年フォーミュラニッポン王者の松田次生(2013年シリーズ6位)がカーティケヤン加入により今年は参戦しないことになった。新人としてはF3からチャンピオンの中山雄一、ランキング4位の野尻智紀がレギュラー参戦。また石浦宏明が2011年以来、3年ぶりに参戦する。
群雄割拠!!交錯するドライバー達の思惑
リウッツィ、カーティケヤン、ロシターなどF1のドライブ経験が豊富な外国人ドライバーたちが日本に活躍の場を求めるのは、単純にF1を諦めたからだけではない。
彼らはプロドライバーとしての次のステップとして、WEC(世界耐久選手権)、ルマン24時間レースでの活動を視野に入れている。WECやルマンには「アウディ」「トヨタ」「ポルシェ」が最高峰クラスLMP1に参戦しているが、今後は「フェラーリ」「ニッサン」の参戦も噂されているほか、先日の記者会見ではホンダの開発陣が新型NSXでの(GTクラスへの)参戦に「興味はある」とも発言している。
今後、F1とは別の形で自動車メーカーが力を入れる事が予想されている耐久レースの世界でプロドライバーの需要が増し、そのシート争いに残るためにはF1を降りた後も、スピード域の高いレーシングカーに乗っておかなくてはならない。海外のGP2などのレースは基本的に若手向けのレースになっており、年間戦うだけで数億円の持ち込み金を要求される。米国のインディカーは楕円形のオーバルコースもある特殊なフォーミュラカーレースであり、経験豊富なドライバー達がF1での実力を活かして戦えるレースは世界的に見ても「スーパーフォーミュラ」ぐらいである。
日本国内のレース「スーパーフォーミュラ(旧フォーミュラニッポン)」や「SUPER GT」で実績を残したトレルイエ、ロッテラー、デュバルなどのドライバーが実力を認められ「アウディ」のエースとして活躍していることからも、外国人ドライバー達は開発競争が激しい「SUPER GT」に乗れて、なおかつ、F1に近いスピード域で戦う「スーパーフォーミュラ」にも乗れる日本のレース環境に注目しているのだ。
そんな思惑を持った彼らのフル参戦に加え、オリベイラ、ロッテラー、デュバルなどの優勝を何度も成し遂げている実力派外国人ドライバー達が今年も「スーパーフォーミュラ」を戦うわけで、今年は過去に例を見ないほどハイレベルな外国人ドライバー達が集う選手権に変貌する。こうなったら、日本人ドライバー達は絶対に負けてはいられない。
昨年のチャンピオン、山本尚貴は王座を争ったロッテラーやデュバルがフル参戦する今年は、真のチャンピオンドライバーとしての実力を披露するためにも連覇に向けて気合いの入るシーズンになる。さらにGP2に挑戦する伊沢に続けと、塚越広大、中嶋大祐らホンダのF1撤退(2008年)でF1進出の梯子を一度は外されてしまった世代のドライバー達にとって、もう一度チャンスを掴むための大事なシーズンだ。まさに群雄割拠なドライバー陣たちのそれぞれの「勝ちたい」という思いがこれまで以上に色濃く出るレースになるだろう。
新車はF1より速い!? F1以上の激しい戦いに期待
ニューマシン導入ということも2014年の楽しみな要素だ。トヨタ、ホンダの2.0L直列4気筒・直噴ターボエンジンのサウンドは、これまでの甲高いV型8気筒のエンジンから一変し、低いサウンドになる。このサウンドの変化に違和感を覚える人が多いかもしれないが、F1もターボになって低音サウンドが当たり前になるのでじきに慣れるだろう。
今年導入される新車はイタリアのダラーラ社製の「SF14」。スーパーフォーミュラ専用に作られた新型シャシーはルックスも格好良く、F1のようにマシンのスピードを抑える制限も少ないので、ダウンフォース(下向きのクルマを押さえる力)が強大でコーナリングスピードが強烈に速い。F1がターボ&ERS(エネルギー回生システム)の新規定に移行してスピードダウンも懸念される中、スピードを速くする方向で新開発された「スーパーフォーミュラSF14」はF1以上あるいはF1に匹敵する速さを見せてくれる期待もある(マシンが熟成された11月の最終戦・鈴鹿では、まさかのF1タイム越えの可能性も!?)。
また、新車導入のタイミングということもあり、エンジニアリング面での積み重ねが一旦リセットされるため、チームの勢力図も変わる。そのため、ルーキーがいきなり元F1ドライバー以上の速さを発揮する可能性だってある。そんな彗星のごとく登場する若手の活躍も今年の楽しみだ。
F1傘下なのか、国内でトップになる意味は何なのか、ドライバー達は何を目標にするのか、などなど、その立ち位置が微妙で、ファンの間でも答えの見えない議論が交わされてきた「スーパーフォーミュラ(旧フォーミュラニッポン)」のあり方。しかしながら、ホンダがF1までの道のりを作り、トヨタがWECとルマンへの道を持ち、海外の自動車メーカーがその戦績を評価しているわけだから、このレースの立ち位置は複雑なようでいて、極めてシンプル。これだけ実力派揃いの中でチャンピオンになれたら、それは価値のあることで、高い評価を得る事にもなろう。
何だか凄い選手権になりつつある「スーパーフォーミュラ」。願わくば米国のインディカーレースなど独自の立ち位置を確立した人気レースのように、プロモーションやファンサービスなどを充実させ、エンターテイメントとして確立できるようになってもらいたいものだ。今はただ、シーズンの開幕が待ち遠しい。「スーパーフォーミュラ」の新車&全ドライバーは3月1日、2日に鈴鹿サーキット(三重県)で開催される「ファン感謝デー」で出揃うことになる。
【全日本選手権スーパーフォーミュラ】
鈴鹿、富士、もてぎ、菅生、オートポリスを舞台に全7戦で開催。2013年シーズンより「フォーミュラニッポン」から名称を変更。フォーミュラニッポン時代に高木虎之介、野田英樹、中嶋一貴など元F1ドライバーがF1後に戦った例はあるが、今年のように3人もの元F1レギュラードライバーが戦う例は過去にない。