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プレミアリーグ、チェルシーのオーナー、アブラモビッチ氏が英政府の制裁対象に

小林恭子ジャーナリスト
アブラモビッチ氏(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア・プーチン政権の弱体化を目指す英政府は、ロシアの銀行、企業、実業家などに対する制裁措置を次々と発表している。

 10日、追加の制裁対象となったのが、プーチン政権と密接な関係を持つ、7人の富豪「新興財閥(オリガルヒ)」だ。この中には、サッカーのイングランド・プレミアリーグのチェルシーを所有するロシア人富豪ロマン・アブラモビッチ氏が入った。

 2月24日、ウクライナへの侵攻が開始された同じ日に、英政府は直ぐに制裁対象とする個人、企業、組織を発表。2日後の26日、アブラモビッチ氏はクラブの経営を慈善財団に委託する、と述べた。3月に入るとチェルシーの売却案が発表され、同氏は売却から得た利益を慈善団体を通じてウクライナの戦争犠牲者に寄付する意向を示した。

 まるで英政府からの制裁を回避するような動きにも思えたが、とうとう対象になってしまった。

 英外務省の発表によると、アブラモビッチ氏は資産を凍結され、英国の個人及び企業との商行為及び渡航が禁止となる。

 同氏のビジネス上のパートナーだった、実業家オレグ・デリパスカ氏にも同様の制裁が科される。

制裁対象の7人とは

 以下はそのリストと米「フォーブス」誌の計算による推定資産額だ。

ロマン・アブラモビッチ氏:鉄鋼大手「エブラズ」、非鉄金属生産「ノリリスク・ニッケル」の株を持ち、チェルシー所有。推定純資産は94億ポンド(約1兆4300億円)。1990年代に勃興した新興財閥の一人で、今でもプーチン政権と良好な関係を持つ。現時点で、ほかの欧米諸国は彼に制裁を科していない。

オレグ・デリパスカ氏:世界最大のアルミニウム生産企業「ロシア・アルミニウム(ルサール)」を所有する「En+ Group」の株を所有。英国に巨額不動産を持つ。推定純資産は20億ポンド(約3000億円)。

イーゴリ・セーチン氏:ロシア最大の国営石油企業「ロスネフチ」の経営責任者。特にプーチン大統領と近いと言われている。

アンドレイ・コスティン氏:ロシア第2の「VTB銀行」会長。プーチン大統領の側近の一人で、銀行を通じて政権を支援してきた。推定純資産は3億7900万ポンド(約564億円)。

アレクセイ・ミレル氏:エネルギー企業「ガスプロム」の最高経営責任者で、ロシアの政権を支援する、重要な経営者。プーチン氏がサンクト・ペテルブルクの副市長だった時、ともに働いていた。

ニコライ・トカレフ氏:ロシアの国営石油パイプライン運営会社「トランスネフト」の社長。1980年代、東ドイツでプーチン氏とともにソ連時代の秘密警察「KGB」で働いた。現在まで、親しい関係を維持してきた。

ドミトリ・レベデフ氏:「ロシア銀行」の取締役。政権の金庫番的役割を果たしていると言われている。

 ウクライナ侵攻後、英政府はプーチン政権とつながりがあるとみられる、200を超える個人、企業、組織への制裁を発表している。

 また、ロシアの富豪による不正資金の取り締まりを強化するための経済犯罪法が、来週には施行される見込みだ。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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