汚染の残る豊洲新市場問題「ここで働くって、人体実験じゃないですか!」
11月7日の豊洲新市場(江東区)開場を間近に控え、築地市場(中央区)の水産仲卸業者ら有志が8月10日、市場の移転延期を求める小池百合子都知事宛て要請書を都の秘書課職員に手渡した。
移転先を巡っては、豊洲新市場予定地が東京ガスの製造工場跡地だったことから、発がん性物質のベンゼンやシアンなどによる土壌や地下水の汚染が次々に表面化。いまも残存するベンゼンが新施設内の空気中でも検出されるなど、市場関係者の不安は拭えていない。
また、2020年の東京五輪に間に合わせるための環状2号線工事を優先させ、繁盛期の11月に開場日が設定されたことから、6月には半数以上の319社の仲卸業者が延期を求める請願に署名。ここにきて、新市場施設の床積載荷重の不足や物流上の不備などの構造的な欠陥も次々明らかにされ、施設そのものも魚河岸仕様にはなく市場機能を果たせないことが指摘されている。
1メートル40の幅では、とても商売ができない
10日に要請書を出したのは、市場で仕事する水産仲卸業者らでつくる「築地市場・有志の会」(代表呼びかけ人・和知幹夫氏ら6人)などの団体。
「これから新市場で働くと、どうなるのか、病気になるのではないかという不安を感じる。気持ちよく移転できるのなら移転します。でも、おかしいと思うから、おかしいと言っている。都は“安心”とか“業界の皆さんの意見を聞いた”とか言いながら“(新市場では)海水は流せない”などと言っている。体裁だけは整えているが、メッキがはがれた場合、都は本気で守ってくれるのか。役人は2~3年で異動になるから関係ないと思うかもしれないが、私たちは20年、30年と新市場で生きていかなければならない。ベンゼンなどの公害を知らないうちに吸ってガンになったら、何年後に病気になったという資料にされる。ここで働くって、人体実験じゃないですか!」
会見に臨んだ仲卸の1人、戸田水産の戸田開太郎氏は、実際、問題の多い現場の新市場で働かされること自体、「人柱」ではないかと訴える。
「東京五輪が決まったことによって、どんどん工事が進められて、仲卸には使い勝手の悪くお金もかかるような市場をつくられてしまった。1店舗で1メートル40の幅では、とても商売ができない。結局、借金をしてでも、もう1店舗を買わざるを得なかった。90年近く営業して来て、代々続いてきたこの店をつぶしたくなかった。どこのお店もお金を借り入れて、豊洲に行かなければならない。汚染された土地でやっていかなければならないという不安もあって、辞めていかれた人たちもたくさんいる。知事は、業界の代表だけでなく、現場の個々の人たちの思いも確認してほしい」(瀬古商店・瀬古知佐子氏)
都知事としては初めて現場の仲卸らにヒアリング
「3・11のとき、豊洲の用地は100カ所以上で液状化していました。でも、都は“噴砂”という言い回しに変えて、市場の建設工事を進めてきた。あのときから、おかしいと思った。止めたかった。都の職員の方も、誰も本当のことを言えなかったのでしょうか?」(堀江チヨ氏)
「皇室の方々にもここからお魚が出ている。こんな汚染の疑わしい新市場から、お魚を出してもいいのか?」(山口タイ氏)
会見した市場で働く人たちからは、豊洲市場への疑問や不満が次々に噴き出した。
団体の関係者によると、今年2月、都の中央卸売市場の職員に提出した公開質問状が当時の舛添知事に渡らず、知事は存在すらも知らなかったようだという。
小池知事は、都知事選の期間、豊洲への移転について「一旦、立ち止まって考える」などと訴えてきた。
12日午後には、都知事としては初めて、小池知事が直接、現場で働く仲卸ら3人に面会し、ヒアリングを行うことになっている。