6年間の絶縁と平和賞の爪痕 ノルウェーと中国が国交正常化、その意味は?
19日、ノルウェーのブレンデ外務大臣は、北京で中国の王毅外相との会談後、6年間続いていた中国との関係正常化で両国が合意したと発表した。
2010年、中国の民主活動家、劉暁波氏に、ノルウェー・ノーベル委員会がノーベル平和賞を授与。委員会は同氏の釈放を求め、中国側は「内政干渉」だと激怒した。以来、両国の交流はほぼ停止状態だった。
ノルウェーサーモンなどの輸入が止まり、ビジネスに大きな支障が出た漁業関係者の声などは、ノルウェー現地の報道でもよく紹介されていた。ノルウェーは中国の「ブラックリスト」入りとなり、もはや「冷戦状態」という表現は、筆者の取材中にもこれまで何度も耳にした。
ブレンデ外務大臣を率先とした、政府の粘り強い長期的な協議が実を結んだとして、ノルウェーでの反応は明るい。
「2010年以降の中国との状況は困難を極めた」として、「2013年の政権交代以来、政府は中国との国交正常化を優先課題としてきた」と外務大臣は自己評価。「経済大国との国交正常化は、産業界に大きな可能性を与える」と、ソールバルグ首相は喜びの声明を発表した。
信頼回復のために、ノルウェー政府がこれまでどのようなアプローチをし続けてきたかは、詳しくは明かされていない。
1989年の平和賞受賞者であるダライラマ14世は、2014年にノルウェーを訪問。しかし、中国との国交関係を懸念した首相や政府関係者は、公式な面会を断固として拒否。報道陣や左翼・野党は、「中国の顔色をうかがってばかりだ」と、政府を批判する姿勢をとった。
中国との国交正常化が何を意味するのか。ノルウェーの小政党や左翼政党の間では、中国の人権問題を批判する動きが以前から強い。今後、批判的な立場をとりにくくなるのではという指摘が挙がっている。
両国の声明には、ノルウェー政府は中国の社会システムを尊重し、中国の核となる関心事を害する行為はサポートせず、両国関係に将来的なダメージを与えることは避ける努力をする、というような内容が含まれている。
ノルウェー国営放送局のマグヌス記者は、事実上、政権を担う政党は、政治・人権の問題などにおいて、中国を今後批判することはないだろうと断言した。
Text: Asaki Abumi