こけおどしの天気解説
今回の局地的豪雨に関して、「クラウドクラスター(Cloud cluster)」が原因との解説を聞きました。クラウドクラスターの説明は気象衛星センターの用語欄を参考にしていただくとして、簡単に言えば、積乱雲のかたまりが、次々にやってくることと理解すればいいと思います。
しかし、ここで私が取り上げたいのは、その字句のことではなく、最近のテレビの天気解説の用語の使い方についてです。
簡単に「積乱雲のかたまり」といえばいいのに、なぜ「クラスター」と、わざわざ英語に置き換えるのか?最近読んだ「日本人のための世界史入門(小谷野敦)」という本に、以下のようなことが書いてありました。
”小林秀雄は「アキレスと亀」を、わざわざフランス語読みで「アシルと亀の子」とした。わざわざ一般人に分かりにくいフランス語を使ったのは、小林のこけおどしである。また吉本隆明も「マタイ伝」を「マチウ書試論」とか、イエス・キリストを「ジェジュ」とフランス語で呼んだりして、こけおどしをしている”
これを読んで、”ああ、天気解説もそうだ”と、妙に腑に落ちました。
昔、詩人の谷川雁の本で(他者を批判するとき・・)「知識人には知識を持たない者の言葉で、知識を持たない者には知識人の言葉で・・・」というような文章を読んだことがあります。いま考えると、この谷川雁の言葉も、こけおどしの効用を言ったように思います。
テレビの天気解説に限らず、日常用語の中にも横文字がやたら氾濫し、私は「こけおどしの時代」だと考えています。
誤解なきように言いますが、私はこうした「こけおどし」の表現を批判するものではありません。むしろ、おおいに「こけおどし」をやればいいと思っているくらいです。
ただそのとき、発信者に知識の源泉が無いと、すぐに底の浅さを感じ取られて、やがては消えていくということになるのでしょう。
気象衛星の解 析用語というのは、アメリカから伝わった技術なので、日本語に置き換えられない用語もいくつかあります。以下のホームページを参考になさって下さい。
気象衛星センター