中国入国後の日本人隔離ホテルに変化。ANA利用の青島では和食ルームサービス、日本のテレビ視聴が可能に
新型コロナウイルスで中国への入国が制限されるようになって約1年。昨年(2020年)3月31日以降、中国へ入国する際にビザなしでの入国(ノービザ入国)は出来なくなっている。
現在、駐在員やその家族など外国人居留許可書を持っていれば中国への入国が可能であるが、その場合でも14日間~21日間の完全隔離をする必要があるが、隔離生活を少しでも快適に過ごせるように航空会社が頑張っている。その様子をメール・電話で取材することができた。
日本~中国への運航便一覧(1月15日現在)北京への直行便は運航なし
1月15日現在、中国の日本大使館が発表している日本~中国間の直行便運航予定について、日本の航空会社では、ANA(全日本空輸)は成田から上海、青島、広州、深圳、杭州の5都市へ各週1往復。JAL(日本航空)は成田から大連(週4往復)と広州(週1往復)、LCCのスプリングジャパン(春秋航空日本)は成田からハルピン(週1往復)、天津(隔週1往復)、南京(隔週1往復)で就航している。
その他に中国の航空会社では、中国国際航空は成田から上海と杭州へ週1往復ずつ、中国東方航空は成田から上海と西安へ週1往復ずつ、中国南方航空は成田から瀋陽と広州へ週1往復ずつ、上海吉祥航空は関西から上海と南京へ週1往復ずつ、春秋航空は成田から上海、関西から常州へ週1往復ずつ、厦門航空は成田から福州へ週2往復、深圳航空は成田から深圳と無錫へ週1往復ずつ就航している。
運航している便はわずかしかないことは運航便数からも読み取れるが、現状では首都の北京には日本からの便は乗り入れておらず、北京へ向かう際には一度別の都市で入国した上で隔離を終えた後、中国国内線での移動となる。
日本から中国へ向かう日本人のほとんどが駐在員関連
昨年夏以降、駐在員やその家族など外国人居留許可書を持っている日本人の中国入国が可能となったが、日本では14日間の自宅やホテルなどでの自主待機を日本到着時に実施しているが、中国では入国後に14日間は全て中国政府から指定されたホテルに完全隔離となる。部屋から外出することも一切許可されず、14日間は部屋の中で過ごすことになる。(2月4日現在、中国国内で感染者が出ていることで多くの都市で21日間に変更されている)。具体的な罰則規定のない日本と比べると中国での隔離政策は大きく異なる。
駐在員などの中国入国が可能になった当初はニュースなどでも一部報じられていたが、中国の空港に到着後、PCR検査や入国審査を終えた後、14日間の隔離されるホテルへ移動することになるが、滞在先の食事や生活環境はお世辞にも快適とは程遠く、それを見越して日本出発前に隔離期間中のカップラーメンやレトルト食品、ご飯などを持参して中国に入国する人も多い状況になっていた。そんな状況を改善すべく航空会社が快適な隔離生活を過ごせるように尽力し、実現したケースを紹介する。
隔離ホテル生活が快適になった青島。1泊3食付きで約8200円
日本人の隔離環境が大きく改善しているのが山東省の青島(チンタオ)だ。青島は成田空港から約3時間40分で到着する日本からも近い沿岸部に位置している。青島ビールと聞けば聞いたことがあるという人も多いだろう。現在ANAが週1便で成田から就航しているが、日本人到着客については、ANAの要請を受けた青島市政府が調整した上でホテルの固定化が実現した。現在、青島市内西部の開発区にあるホテル「マングローブ ツリー リゾート ワールド 青島 (青島紅樹林度假世界)」での隔離生活となっており、このホテルはANA外国人旅客用隔離施設となっており、日本人向けのサービスを充実させている。
宿泊料金は、政府指定メニューによる3食のお弁当込みで1日500元(約8200円)となっている。部屋については、ツインもしくはキングダブルのタイプがあり、45平米~50平米の広さになっている。
実際に滞在した日本人駐在員からは
このホテルに実際に隔離生活を過ごした日本人駐在員からの評判が高く、駐在員の中でも快適な滞在が可能できるということが口コミで評判になっているとのことである。主な声としては、50代の商社勤務の男性は「お客様からの様々な要求に、真摯かつ誠実な態度で一生懸命対応されている。防疫上エアコン使用不可だが、室内のヒーターで快適な温度が保たれている」といった声をはじめ、40代のIT関連会社勤務の男性は「清潔感が高く、オーシャンビューで嬉しい。Wi-Fiも早くて助かる」、40代の公務員の男性は「日本のテレビが観られるのは素晴らしい」と話す。
和食のルームサービス、日本のテレビも観られる環境に
日本人駐在員からは4つの充実ぶりが挙げられた。「和食のルームサービス」「日本のテレビ視聴」「ホテルの日本語対応」「テレワーク環境充実でのリモートオフィス化」の4つである。
食事については、従来は政府指定メニューによるお弁当に加えて、味噌汁や太巻き、納豆などを別途提供してもらえることもあったほか、ホテルのルームサービスから別途注文することが可能で、洋食、アジア料理、中華、果物などのメニューもあったが、日本人宿泊者に対応するべく、新たに和食のルームサービスも1月20日より注文可能となった。
メニューとしては、上記のメニュー表にもある、豚カツ、カツ丼、カレーライス、焼き鯖、鶏肉の唐揚げ、チャーハン、巻き寿司、納豆、漬物など15種類以上から注文可能で価格も1000円以下となっている。実際に注文した人からは「果物のオーダーや、料理の味付け(油の多い、少ない)やフライの上げ加減などにも対応してくれる」と話す。また、青島ビールも注文可能でしっかり冷えていて感動だったという日本人駐在員の声もあった。
日本のテレビについても、1月20日からは1ヶ月300元(約5000円)を支払うことで日本の全ての地上波と衛星チャンネル(BS・CSなど)をリアルタイム視聴できるようになり、インターネット以外にテレビでの情報収集や娯楽が楽しめることで、外に一切出られない隔離生活においては、日本にいる以上にテレビ視聴する時間は多くなっており、大切な隔離ツールになっている。
またホテル内では日本語が話せるスタッフが常駐しており、中国語が話せない日本人にとってはありがたい存在である。宿泊ルールなどにおいても日本語で案内されている。
部屋の中での仕事環境も問題なし
そして日本人の中国渡航者の多くが駐在員であることから、仕事環境も気になるところであるが、部屋のWi-Fiの速度は問題なく、WEB会議などもスムーズに実施できているとのことだ。部屋からは海も一望できることで、部屋からの外出はできないが、海を眺めながらのテレワークができることで隔離生活中のリモートオフィスとしての環境が整えられているそうだ。
ANAの青島支店空港所の中原伸二所長は、日本人の利用者数について「週1便の成田からの日本人利用は週によってばらつきはあるが、少ないときで10数人、多いときには40人弱で平均すると20人程度になっている」とのことだ。青島だけでなく、隔離生活後は北京、上海、更には浙江省、湖北省へ国内移動する駐在員もいるそうだ。
現在は3週間の隔離生活の青島、ANAが直接関係各所と交渉した。青島市内は日常生活に戻っている
現状、日本からのビジネストラックでの中国入国者はほとんどおらず、駐在員やその家族など外国人居留許可書を取得している場合やそれに準ずるビザを持つ場合に限られているとのことだ。当初は14日間の隔離期間となっていたが、中国国内での感染者が出てきたことで青島を含む中国国内の多くで21日間の隔離が主流になっており、約3週間を過ごす上でホテルの快適度は重要となる。
中原空港所長は「ANAから要望を直接、当局やホテルと交渉できる体制が構築できたことが大きかった」と話す。青島市内の状況は感染者もほとんどおらず、中国国内の中でも少ないとのことで、空港職員は2週間毎のPCR検査が義務づけられているが、青島に在住の日本人駐在員も新型コロナウイルス前の生活に戻っており、ショッピングやアウトドア・インドアスポーツもできるようになっており、隔離生活が終われば、日常の生活が可能とのことだ。
日本入国時の水際対策強化の再考も
電話・メール取材を通して、外国人の入国においては中国では厳格な隔離ルールが徹底されていることを改めて感じた。日本では海外からの入国時に自粛要請レベルの自主待機になっており、強制力・罰則などがないルールになっているが、感染者が大幅に減少するまでの間は一定期間(少なくても1週間)、入国者全員がホテルに滞在し、その費用も入国者の自己負担にすべきだろう。特に入国後の行動を確認できない外国人においては必須だろう。
日本入国時の14日間の自主隔離及び公共交通機関を利用しないというルールの徹底において、今後罰則規定を設ける方針が示されているが、世界各国で変異種による感染者拡大も続くなか、入国時の水際対策の更なる徹底が日本でも求められる。