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ジャッカルは「野生の勘」で。サンウルブズ姫野和樹の自己分析。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
突進役としても躍動。(写真:アフロ)

 国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦のサンウルブズが5月12日、開幕10戦目にして今季初勝利を挙げた。東京・秩父宮ラグビー場での第13節でレッズを63-28で制し、チーム史上初のオーストラリア勢撃破を決めた。

「今日の試合がよかったから気が緩むのではなく、いままで通りに次の試合へ集中して100パーセントやる。それがチームとしても個人としても大事かな、と思います」

 勝って兜の緒を締めよ、と言いたげだった1人が姫野和樹だ。この日はナンバーエイトとして先発フル出場し、攻守で持ち味の頑健さを発揮。おおらかな態度などでも人気を集める23歳は、取材エリアで自らの働きを振り返るなか「野生の勘」を強調した。

 当該のシーンは28-14とリードして迎えた前半36頃。自陣22メートル線付近右で守勢に回るなか、倒されたレッズのランナーが持つボールへ姫野が絡む。

 ジャッカルと呼ばれるこのプレーは、そのまま球を奪い取るか、相手の反則を誘うことが目的とされる。ラグビーでは寝たまま球を手放さない選手はノット・リリース・ザ・ボールというペナルティで罰せられる。姫野がここで決めたジャッカルも、見事に相手のノット・リリース・ザ・ボールを誘い、ファンの歓声を呼んでいた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり。質問は全て当方)。

――あのジャッカル、振り返ってください。

「ボールが見えたので、いけると思いました。結構、皆は『こうした方がいい』『ああした方がいい』と理詰めでジャッカルに行くんですけど、僕は野生の勘で行っているので。ふふふふ。頭で考えすぎると、自分のプレーができなくなる。そう、自分のことを理解しています。もう、試合中は考えすぎない」

――自己分析を重ねた結果、「試合中は頭で考えない方がいい」と考えるに至った。

「初めて代表に入った週(昨年10月に候補合宿、事前合宿があった)も、(言い渡される)情報量が多く、それをめちゃめちゃ頭に入れてしまって、『次はこうしなきゃ』『ああしなきゃ』と思って自分の持ち味を出せないことがありました。やはり僕は、野生の勘、本能でやるのが一番いいと思います」

 各種プレーの理論は日々、体系化され、ジャッカルもその例外ではない。しかし姫野は、その論理に縛られない方が自分の力を発揮しやすいというのだ。あれこれと思索をめぐらした結果、「野生の勘」を大切にする。

 もちろんそれは、何も考えないこと、判断しないことと同義ではない。

 例えば、当該のジャッカルについてこうも話している。

――改めて、ジャッカルそのものに話を戻します。あの場面、複数人の相手が姫野選手に体をぶつけていましたが、姫野選手は球から腕を離しませんでした。

「今日のレフリーの方はジャッカル(への判定が)遅くて、2~3秒したら(相手のノット・リリース・ザ・ボールを)やっと取ってくれた。他にも何本か(相手のノット・リリース・ザ・ボールを)取れるタイミングがあったのですが。きょうに関しては、ジャッカルをするよりもボール(の真上)を越えるプレーをした方がよかったかもしれないですね」

 姫野の出身校である帝京大学では、ルールの理解と当日のレフリング傾向への対応力が強化されている。ジャッカルが効果的でないのなら、他の防御方法を取る。これも「野生の勘」の範疇にある。

――好ジャッカルが流されやすかったことを含め、全般的に防御側のプレーが厳しく見られていた印象があります。レッズも、サンウルブズボールの接点周辺でよく笛を鳴らされていたような。

「ディフェンスには、厳しかったと思います。結構、ブレイクダウンはきっちり取っています。結構、僕たちのプラスになることは多かったので、よかったです」

 身長187センチ、体重108キロ。昨季は帝京大学を経て入社したトヨタ自動車でキャプテンを任され、国内トップリーグ4強入り。その間に日本代表デビューを果たし、同代表と連携するサンウルブズ入りを決めていた。

「ハイレベルな環境で試合に出続けているので、すごくタフになった。開幕戦から調子はよかったので、でも、日本人が弱いと言われますが、全然そんなことはない。普通に当たり負けしないですし、そこで普通にがつがつやれるなと。サンウルブズで学んだことはたくさんあるので、それを日本代表でいつも通り自分のプレーに集中してやれれば」

 サンウルブズは19日、香港でストーマーズとぶつかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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