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次はカネロか!? WBC暫定スーパーミドル級チャンプ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/SHOWTIME

 井上尚弥のニックネームは御存知の通り"モンスター"だが、WBC暫定スーパーミドル級王者のそれは、"ザ・メキシカン・モンスター"だ。

 試合前から罵り合い、互いに嫌悪感を露わにしていたが、WBC暫定スーパーミドル級タイトルマッチは、見応え十分だった。

 デビッド・ベナビデス(26)とケイラブ・プラント(30)との対戦が話題になったのは、5年も前のこと。ベナビデスが体重オーバーでWBC168パウンドのベルトを剥奪されなければ、もっと早く実現していたかもしれない。

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 今回は、ベナビデスの持つ暫定王座に、元IBF同級チャンプのプラントが挑む形となった。

 序盤はプラントがペースを取った。元IBFチャンピオンはコンスタントにコンビネーションを放ち、ベナビデスのカウンターを封じる。しかし、徐々にベナビデスに押され、8ラウンドに入ると動きが鈍る。ホールディングも次第に阻まれ、WBC暫定王者がリングを支配した。

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 当初、ベナビデスは我慢を強いられたが、次第にリズムを掴み、自身のボクシングを貫く。パワーパンチでもジャブでも手数で優り、ライバルに打ち勝った。ローブローに顔を歪めたシーンもあったが、随所に見せた左右のアッパーが効果的だった。

 最終的には117-111、116-112、115-113で完勝した。

 勝者は言った。

 「俺たちの関係については色々と言われたが、男らしく決着がついた。この5年間において、最高のライバル対決をファンに提供できたことを嬉しく思う。とても幸せだよ。

 コツコツとラウンドを重ねるしかないと思っていた。ケイラブはタフなファイターだ。彼は最初の数ラウンドで手の内を見せなかった。俺はケイラブの穴を見付けなければならなかったよ。でも、今夜は自分がパワーパンチャーであることを示しただけではないよな。ディフェンスも頭の動きも冴えていただろう。リングをいかに動くべきかも考えたよ」

Esther Lin/SHOWTIME
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 プラントも話した。

 「我々はライバルだがボクシングには勝者がいて、敗者がいる。そういうものだ。俺たちはここで雄々しく戦った。デビッドはとんでもないファイターだよ。

 俺は必要だと感じる時にホールドし、パンチを出し、コンビネーションを放とうとした。しかし、ベストの選手同士が戦うと、どちらが劣るのさ。自分は世界最高のファイターと対戦してきた事を誇りに感じている。咬ませ犬は選んでいない。彼とだって、将来的に再戦できるかもしれないよな」

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 終盤に見せたベナビデスの粘り強さは、精神面の充実も物語っていた。ベナビデスはプラント以上にアグレッシブに前進し、元IBFチャンプの鼻を潰し、様々な角度からショートフックを浴びせた。

 かつて、体重超過でベルトを剥奪された彼とは別人に見えた。スーパーミドル級リミットの168パウンドさえ作れなかったベナビデスが166.75パウンドで前日計量をパスしたのは、この一戦に懸ける思いを示していたのだ。

写真:ロイター/アフロ

 そして今、暫定王者が狙うのは正規タイトルだ。

 「カネロ・アルバレスのことは尊敬しているけれど、今すぐに挑戦させてほしい。それはファンも望んでいることだ。是非、実現させよう!」

 スーパーミドル級の頂上対決ーーーワクワクするカードである。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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