黄砂が多いとサクラが早い?
黄砂とサクラに意外な関係が。黄砂の観測日数が多い年は東京のサクラが早く開花することがわかった。
天気図から知る春
季節の移り変わりは人それぞれ感じ方が違うでしょう。365日天気に携わっていると天気図から季節の変化を感じることがあります。こちらは3日(土)午前9時の地上天気図です。
天気図は通常、色がついていませんが、イメージしやすいように(相対的に)気圧の低い場所を暖色に、気圧の高い場所を寒色にしてみました。
すると、大陸は暖色(低気圧)に、日本列島付近は寒色(高気圧)になりました。これまでとは逆の色合いになったことにお気づきでしょうか。日差しの強まりとともに、大陸が暖まってきていることがわかります。
春は黄砂の季節
そして、3日はモンゴル付近で黄砂が観測されました。黄砂とはゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、黄土地帯から強風により大気中に舞い上がった黄砂粒子が浮遊しつつ、降下する現象をいいます。
日本で黄砂が観測される日は一年間に約24日、全体の8割以上が春(3月-5月)に集中します(点線で囲んだ部分)。
近年は中国の経済発展や温暖化による気候の変化で、環境問題として注目されるようになり、春の風物詩としてのイメージは消えつつあります。
黄砂が多いとサクラが早い?
黄砂を大陸の雪解け=春と考えると、なにか関わりがあるのでしょうか。試みとして、3月の黄砂観測日数が一番多かった年と観測されなかった年、いずれも上位7年と東京のサクラ開花日を比較しました。
すると、黄砂が多く観測された年はサクラが平年より早く開花した年が目立ちます。2002年は東京で最も早くサクラが開花し、黄砂の観測日数も平年の2倍と多くなりました。
一方、黄砂が観測されなかった年は全体としての傾向はみられず、最近はサクラの開花が早いものの、昔は遅かったようです。
もちろん、サクラの開花は冬から春にかけての気温がとても重要ですから、黄砂の多い少ないだけで判断することはできません。確かな理由を見つけるというよりも、関わりのおもしろさに目が留まりました。
【参考資料】
気象庁ホームページ:黄砂情報
気象庁ホームページ:生物季節観測の情報
田中泰宙,小木昭典,2017:「報告」気象庁全球黄砂予測モデルの更新について ,測候時報,84,109-128.