本日公開 話題のボクシング映画「春に散る」ボクサーの勇気と厳しい現実をリアルに描く
8月25日ボクシング映画「春に散る」が公開される。
本作は数々のベストセラーを生み出した作家・沢木耕太郎の集大成であり、最高傑作として注目を浴びている。
本格的なボクシングに注目
本作は、渡米し40年振りに帰国した元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)と、不公平な判定で負けを喫しボクシングから離れた黒木翔吾(横浜流星)が出会い、世界チャンピオンを目指していくストーリーだ。
主演の横浜は役作りのため、本格的なボクシングのトレーニングをこなし、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏から指導を受けるほどの熱量だ。
空手経験者でもあり、中学時代には世界大会で金メダルを獲得している。
今年6月には役作りの一環としてボクシングのプロテストを受験し一発合格。役に真剣に取り組みならがら、ボクサーとしての才能も見せつけた。
実際にパンチを受けた佐藤浩市は「手が痛くなるほどのパンチだった」と話していた。
ボクシング好き必見
本作には元ボクサーや関係者も多く出演している。ボクシング好きであれば小さな発見もあり、より一層楽しめるだろう。
例えば、試合の解説役として元OPBF東洋太平洋ウェルター級王者の亀海喜寛氏が出演。
また、ジムの練習風景には、元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏が登場している。山中氏は、技術指導者としても本作に関わっていたようだ。
その他にも、リングアナウンサー役に冨樫光明氏が、主審役に日本ボクシング界を代表する名レフェリー福地勇治氏が出演している。
出演者以外にも、作中の世界チャンピオンのベルトが、元WBA世界スーパーバンタム級王者の下田昭文氏から提供されたものであったり、撮影地として、三迫ボクシングジムやボクシングの聖地・後楽園ホールが使われていたりと見どころ満載だ。
ボクシングアドバイザーとして、現役トレーナーの田中繊大氏が用具提供やキャスティングに協力するなど、多くの業界関係者が本作に関わっている。
そして何より、ボクシング演出家として名高い松浦慎一郎氏が手がけた作品だけに、実にリアルに仕上げられている。
特に試合のシーンは必見だ。汗が飛び散るシーンやインパクト音など、実際の試合を忠実に再現しており、私も現役時代の戦いを思い出すほどの迫力だった。
リアルなボクシングを描く
本作には、ボクサーが引退した後の人生の紆余曲折もリアルに描かれている。選手のセカンドキャリアにも焦点を当てていた。
ボクシングは常にリスクが伴うスポーツだ。私もプロボクサーとして10年活動してきたが、怪我は日常茶飯事だった。
また、パンチの衝撃やダメージはすぐに影響が出なくとも、少しずつ体に蓄積されていく。
栄光を掴むために全てを犠牲にしてリングに向かう。そんなボクサーの心情を克明に描いた作品だった。
試写会の際、主演の佐藤浩市氏は「娯楽映画ですが、皆さんが最後、場内が明るくなって席を立つ時に、大きなお土産を抱えて帰ることができる映画になったと思います」と語った。
私も本作を観終えた時、現役時代を振り返りながら、心にずっしり残る何かを感じた。
本作は8月25日に全国公開される。ぜひ劇場に足を運んでほしい。