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これぞ名人芸! 渡辺明名人(38)練達の指し回しで名人戦第4局を制し、防衛まであと1勝!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月19日・20日。山口県山口市「名勝 山水園」において第80期名人戦七番勝負第3局▲斎藤慎太郎八段(29歳)-△渡辺明名人(38歳)戦がおこなわれました。

 19日9時に始まった対局は20日19時3分に終局。結果は100手で渡辺名人の勝ちとなりました。これで七番勝負は渡辺名人が3勝1敗。防衛、3連覇まであと1勝としました。

 第5局は5月28日・29日、岡山県倉敷市・倉敷市芸文館でおこなわれます。

 両者の通算対戦成績は渡辺11勝、斎藤5勝となりました。

名人、練達の指し回し

 斎藤八段先手で、戦型は相掛かり。角交換から斎藤八段が自陣角を据えたのに対して、渡辺名人はあえて香を取らせて馬(成角)を作らせる驚きの構想を見せました。それでバランスが取れていると見た名人の大局観が素晴らしかったということになりそうです。

 1日目から激しい戦いとなり、斎藤八段が65手目を封じて指しかけとなりました。

 2日目。開かれた斎藤八段の封じ手は、得した香を自陣に据える自然な一手。相手の飛車を追ってよく利いているように見えました。

 終盤、斎藤八段は二枚の飛車で渡辺玉を左右から包囲します。しかし中段の渡辺玉は薄いようで広く、なかなか捕まらない形。このあたりは練達の上手、名人芸の指し回しを思わせました。

 第3局では逆転負けを喫した渡辺名人。本局では万全を期して、慎重に斎藤玉を寄せに出ます。堅そうに見えた斎藤玉は、次第に受けが難しい形に。皮肉なことに、封じ手で打ったよく利く香が、斎藤玉の逃げ道をふさぐ壁にもなりました。

 100手目。渡辺名人は相手玉の上部に銀を打ちます。斎藤八段は攻防ともに見込みなしと見て、投了を告げました。

 第80期という節目を迎えている将棋名人戦。渡辺名人はあと1勝で防衛です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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