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レジェンド羽生善治九段、A級即復帰は厳しい状況に B級1組7回戦で屋敷伸之九段に敗れ2勝4敗

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月20日。東京・将棋会館において第81期B級1組順位戦7回戦▲羽生善治九段(52歳)-△屋敷伸之九段(50歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時34分に終局。結果は132手で屋敷九段の勝ちとなりました。これでリーグ成績は羽生2勝4敗、屋敷2勝5敗。羽生九段は2連勝スタートからの4連敗で、今期のA級復帰は厳しい状況となってきました。

屋敷九段、まくり一発の桂打ち

 羽生九段先手で戦型は相掛かりとなりました。飛車先の歩の交換はできるだけ遅らせるのが現代のトレンドですが、後手の屋敷九段はすぐに交換します。現代最新の布陣を見慣れている観戦者の目には、比較的珍しい進行に映りそうです。

 互いに浮き飛車に構えたあと、羽生九段は手早く動き、右端1筋を詰めるなどポイントをあげました。羽生九段はさらに積極的に攻め続け、形勢は羽生ペースで進んでいきます。

 屋敷九段は羽生九段の攻めをしのぎ続けて逆転のチャンスをうかがいます。そして74手目、屋敷九段が羽生玉を左右はさみうちにする桂を打った手がさすがの鋭手。このあたりで形勢は逆転していたようです。

 屋敷九段優勢で迎えた最終盤。羽生九段は手段を尽くして一手違いの形に持ち込みました。羽生玉は「連続王手の千日手」できわどく耐える場面も生じます。

 屋敷九段は先に持ち時間6時間を使い切って、あとは一手60秒未満で指す一分将棋に。順位戦らしい深夜ドラマが起こってもおかしくはないところで、屋敷九段は正確に指し続けます。

 屋敷九段は羽生玉を受けなしに追い込みました。あとは屋敷玉が詰むや詰まざるや。しかしきわどく詰まず、羽生九段が投了。屋敷九段が熱戦を制しました。

 屋敷九段はこれで2勝5敗。まずは残留に向けて大きな1勝をあげました。

 一方の羽生九段は2勝4敗。今期のA級復帰がかなり難しくなりました。しかし順位は1位。可能性がなくなったわけではありません。過去には順位上位の8勝4敗で昇級に届いた例も多くあります。

 一人無敗で走っていた中村太地七段は近藤誠也七段に敗れました。

 展開次第では今後、昇級争いは混戦になるかもしれません。最終戦の羽生-中村戦はどのような状況で迎えることになるでしょうか。

 羽生九段と屋敷九段の対戦成績は羽生25勝、屋敷8勝となりました。

 一時期は羽生九段が16連勝するなど、羽生九段が圧倒していましたが、直近は屋敷九段が4連勝と巻き返しています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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