オリンピック陸上競技 記録の裏に天気あり
リオデジャネイロ五輪、中盤からはいよいよ陸上競技が始まります。過去には、陸上競技の記録に天気が影響したことがありました。
記録が続出した高地のオリンピック
男女の陸上競技における五輪記録で、現在、最も長く破られていない記録は「男子走り幅跳び」です。1968年メキシコシティ五輪での、ボブ・ビーモン(アメリカ)の8m90cmの記録が残っています。
メキシコシティ五輪は標高2000m超えの高地で行われました。高地は気圧が低く、空気は薄くなります。空気抵抗が少なくなるため、平地より遠くに跳べ、遠くに投げられ、速く走れます。
この大会では、短距離走など多くの陸上競技で、記録が塗り替えられました。そのうちの一つが、50年近くたった今もまだ残っているのです。
世界記録にも気圧が影響?
ちなみに、男子走り幅跳びの“世界記録”は、東京で出ています。1991年8月の「世界陸上」で、マイク・パウエル選手が8m95cmを跳んだ記録です。
標高の低い東京は、当然、メキシコシティのように気圧は低くありません。
ただ、この日は、東京に台風14号が接近中で、翌日、静岡から関東にかけて上陸しています。どんどん気圧が下がる条件が、記録を後押しした側面があるのでは、と一部の陸上関係者の中では言われているそうです。
もちろん、マイク・パウエル選手の実力が素晴らしいことに、違いはないのですが。
追い風はどこまで味方するか
陸上競技では、追い風が平均風速2.1m/s以上だと、風によって記録が伸びたとされて「追い風参考記録」となり、正式な記録としては認められない競技があります。100メートル走もその一つです。
日本陸上競技連盟の方に伺った話によると、100メートル走の場合、体型などにもよりますが、追い風が1m/s増すにつれて、タイムが0.05秒~0.1秒ほど速くなると言われるそうです。
現在、100メートル走の日本記録は10.00秒。これは追い風1.9m/s、つまり、正式な記録として残る上限に近い条件下で出ています。
国内でその記録に次ぐのが、リオ五輪にも出場する桐生祥秀選手の10.01秒です。この時の追い風は0.9m/s(※)。あと1m/sほど強い追い風が吹いていれば、10秒を切っていた可能性も十分に考えられます。
ちなみに、ウサイン・ボルト選手の世界記録9.58秒が出た時は、追い風0.9m/s。こちらも風次第では、記録がさらに伸びていた可能性もあるというわけですね。
1~2m/sといった木の葉を揺らす程度の風が、リオ五輪では記録や結果にどんな演出を加えるのでしょうか。
(※機械式風向風速計による。五輪などで使われるのは超音波式風向風速計。)