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ブーム再燃「ダイアナ妃ファッション」 今すぐ真似できる7つのおしゃれテクニック

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
ダイアナ妃 Swindon, Britainにて(1985年)(写真:REX/アフロ)

今もなお愛され続けるダイアナ元英皇太子妃(以下、ダイアナ妃)の早すぎる死去から25年を迎えました。この節目にドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』と女優クリステン・スチュワート主演の『スペンサー ダイアナの決意』という2本の映画が公開されます。2作品とも彼女ならではの着こなしが見どころの一つに。

今回は品格とおしゃれ感を兼ね備えた「ダイアナ・ルック」の魅力を、7つのテクニックから読み解いていきます。2022-23年秋冬シーズンのファッショントレンドは「ネオ・クラシカル」。古風な装いをモダンにアップデートするスタイリングです。ダイアナ妃のコーディネートは格好のお手本になってくれるでしょう。

■映画『プリンセス・ダイアナ』

クロップド丈ジャケットが主役 3色カラーブロック

映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Kent Gavin
映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Kent Gavin

まずはドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』から見ていきましょう。ダイアナ妃はそこにいるだけで、周囲をパッと華やがせるような雰囲気がありました。赤や青といったはっきりした色を堂々と着こなしたのも、彼女の存在が際立って見えた理由です。

赤のノーカラー(襟なし)ジャケットが上品なレディー感を演出。ジャケットの着丈が短いクロップド丈で上半身をコンパクトに整えています。このクロップド丈のジャケットは、今シーズンはトレンドアイテムとして復活。クラシカルなムードが見直される中、注目のアイテムです。

白のトップスとパープルのスカートで、鮮やかなトリコロール(3色使い)に仕上げました。パーツごとに色を使い分ける「カラーブロック」が装いにリズム感を加えています。つば広帽子の赤と響き合わせたのも好アレンジ。ゴールドのジュエリーでリュクスを上乗せしています。

巧みなジュエリー使い パールネックレスで優雅な華やぎ

映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Richard Ellis _ Alamy Stock Photo
映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Richard Ellis _ Alamy Stock Photo

「ダイアナ・ルック」のムードメーカーを担ったのは、巧みなジュエリー使いです。王室コードにしばられた、フォーマル系の装いでも、お好みのジュエリーでゴージャス感やエレガンスを添えていました。

公式なセレモニーにふさわしい、シックな黒のワンピースに身を包んだダイアナ妃。沈んだブラックコーディネートにまとまってしまいがちですが、大粒パールのネックレスを巻いて、気品とリュクスを同居させました。耳にもビッグパールのイヤリングを添えて、つやめきを響き合わせています。服とのコントラストを際立たせ、視線を顔周りに集める効果も発揮しました。

映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Michael Dwyer _ Alamy Stock Photo
映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Michael Dwyer _ Alamy Stock Photo

たくさんの雑誌で表紙を飾ったダイアナ妃の写真を眺めると、やはりイヤリングやネックレスを迎えて、顔周りを明るく見せていることがわかります。デコルテ(鎖骨周り)を露出したベアショルダーの装いでは、とびきりグラマラスなジュエリーをあしらって、格上感を印象づけていました。

カジュアルコーデにも品格忘れず 軽やかさときらめきをマリアージュ

映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Kent Gavin
映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Kent Gavin

王室を離れた後は、割とカジュアルな服装も増えました。それでも、品格を失わないのは、さすがのダイアナ流。チャリティー活動に熱心だったダイアナ妃は世界の危険地域にも乗り込みました。

ダイアナ妃は地雷撲滅のキャンペーンでアフリカのアンゴラで地雷原を歩きました。この日の服装は、白のボタンダウン・シャツとカーキ色のチノパン。危険が伴う場所だけに、飾り気を遠ざけたシンプルコーデですが、シャツの両袖をまくり上げ、パンツもクロップド丈を選んで、動きを出しています。イヤリングはゴールドを選んで、ラフな雰囲気の装いに適度なきらめきをもたらすことも忘れてはいません。

映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Jeremy Sutton-Hibbert _ Alamy Stock Photo
映画『プリンセス・ダイアナ』 (C)Jeremy Sutton-Hibbert _ Alamy Stock Photo

広く愛されたダイアナ妃の悲劇的な死は、英国民に深い悲しみを与えました。死去を知った人たちからは無数の花とメッセージが手向けられました。ここまでは映画『プリンセス・ダイアナ』からのスチール写真でご紹介しました。

■映画『スペンサー ダイアナの決意』

「黒×赤」で複雑な内面を表現 ボウタイ・ブラウスで淑女風に

映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain
映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain

ここからは映画『スペンサー ダイアナの決意』に描かれたダイアナ・ルックを見ていきましょう。女優クリステン・スチュワートが演じるダイアナ妃は生前の姿にそっくり。王室メンバー時代は正統派のクラシックな装いを選ぶ機会が多かったダイアナ妃。夫の浮気に気づいた後のシーンでは、内面を映すかのように暗いムードの服も増えていきます。

黒のボウタイ・ブラウスに、赤いジャケットを重ねた、一見、オーソドックスなルックです。しかし、悩みを抱えた複雑な心境を、「黒×赤」という象徴的な色合わせで表現しているようにも見えます。色数を極端に絞った着こなしがミステリアスな雰囲気をまとわせました。帽子から顔にかぶったネットも、アンニュイな気分を感じさせます。

極上ブラウスで別格のステータス つやめきホワイトでレフ板効果

映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain
映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain

ロイヤルファッションにはいくつかの特徴があり、飾り立てすぎない抑制的なバランスもその一つです。派手な見え具合を避けながらも、別格のステータスを漂わせることができるのは、素材やディテールのおかげ。ダイアナ妃の着こなしでも、シンプルさと特別感を併せ持ったスタイリングが選ばれています。

モノトーンコーデにも特別感が漂います。古風なディテールが施されたビクトリアン風ブラウスは、身頃の部分プリーツをはじめ、クチュール感が際立っています。シルキーなつやめきは貴婦人テイストを帯びていて、まるでレフ板を当てたかのように顔周りを明るく見せています。

大人かわいい「ドット柄」が決め手 キュートさも演出

映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain
映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain

かしこまった出で立ちのイメージが強い王室ルックですが、屋敷の中では、ぐっとトーンがやわらぎます。それぞれの好みやキャラクターが色濃く出てくるのも、プライベートな装いだからこそ。ダイアナ妃の装いでは、やさしさや愛らしさを感じ取ることができます。

全体にパステルカラーのドット(水玉)柄を配したブラウスは、大人かわいいムードを寄り添わせました。ソフトな質感も、フレンドリーな人柄を示すかのよう。両袖は程よい袖コンシャスで、キュートな雰囲気も醸し出しました。不規則にちりばめられた、ピンクとブルーのドット柄がほのかな遊び心を感じさせます。

コンパクトな「タートルネック・ニット」で引き締め効果を発揮

映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain
映画『スペンサー ダイアナの決意』 (C)Pablo Larrain

王室のマナーでは、あまり露骨にボディラインを強調しないものです。体の線を拾いすぎないシルエットが好まれますが、プライベートな時間は別。映画の中のダイアナ妃も、しばしば抜群のプロポーションを示す装いを選んでいます。

2人の息子と過ごす時間は、ダイアナ妃が自分好みの服をまとう時間でもあったようです。赤いタートルネック・ニットはボディにぴったり沿って、コンパクトなシルエットを描き出しました。ボトムスには千鳥格子のタイトスカートを迎えて、引き締まったイメージを上下で強めました。無駄を削いだ、動きやすいコンパクトトップスに、伝統的モチーフのスカートを引き合わせ、クラシックとアクティブを融け合わせた着こなしは、今の時代にもお手本になります。

永遠の王道 クラシカルなファッションが再注目

映画『プリンセス・ダイアナ』と『スペンサー ダイアナの決意』の2本は、ドキュメンタリーとフィクションの違いを生かして、それぞれのアプローチでダイアナ妃の素顔に迫っています。様々な場面にふさわしくコーディネートされた彼女の装いには、私たちの着こなしにも生かせそうなヒントが詰まっています。

「クロップド丈ジャケット」「ボウタイブラウス」「ヴィクトリアン風ブラウス」などのエレガントなアイテムから、「シャツ&チノパン」「タートルネック」などのカジュアルファッション、そして愛らしい「ドット柄」、品格ある「パールネックレス」まで、どれも廃れることない王道的ファッションです。

クラシカルな装いに再び関心が集まっている今、25年の節目にはダイアナ妃の足跡を振り返るのにまたとないタイミング。伝説的なおしゃれアイコンからスタイリングの知恵をお裾分けしてもらえる機会にもなるでしょう。

『プリンセス・ダイアナ』

https://diana-movie.com/

9月30日(金)TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー

配給:STAR CHANNEL MOVIES

(C) 2022 DFD FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

『スペンサー ダイアナの決意』

https://spencer-movie.com/

10月14日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:STAR CHANNEL MOVIES

(C) 2021 KOMPLIZEN SPENCER GmbH & SPENCER PRODUCTIONS LIMITED

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ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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