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全国学力テストをめぐる不毛な闘いが全国に広まりそうだ

前屋毅フリージャーナリスト

序列化することが最終目的といわんばかりの動きが止まらない。

大分県の教育委員会は、全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)の結果について「公表基準」を決めた。「調査対象の全教科で昨年度と今年度の両年度とも全国の平均正答率を上回った学校名と学力向上の取り組みをホームページで公表する」(『朝日新聞』6月18日付 電子版)らしい。

平均正答率を上回った、つまり成績の良い学校名を公表するのだからいいだろう、というわけだ。2013年度の全国学力テストの結果公表をめぐって、静岡県の川勝平太知事は県教育委員会の反対を押し切って、成績上位校名を公表した。

全部を公表するわけではないから序列化にはつながらないし、悪いところではなく良い学校名の公表は懲罰ではなく賞めることになるから問題はない、という理屈だった。大分県の公表基準も、それと同じ理屈のようだ。

ただし、成績の良いところだけ公表すれば、公表されなかったところは成績が悪かったと断定される。結果的に序列化されるのだ。それが理解できていないわけがなく、成績の良い学校と悪い学校を色分けする確信犯でしかない。そうやって競争心を煽り、全国学力テストの成績向上につなげようというわけだ。

成績の良い学校の校名だけを公表するという確信犯的手法で物議を醸した静岡県では、いまだに公表をめぐり知事と教育委員会の対立が続いている。ほんとうの学力を向上させるには何が必要なのか、その前に、ほんとうの学力とは何か、といった議論ではなく、公表の是非ばかりが熱心に議論されている印象しかない。

成績の良い学校名を公表することで、結果的に学校を色分け(序列化)する静岡方式は、大分県をはじめ、これから広がっていくことが予想される。公表されることを目指す不毛で、熱い戦いが全国の学校に広まっていくのかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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