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麻生副総裁の北海道コメ発言の何が問題か コメ価格暴落への自民党農政の無策の象徴ではないか

松平尚也農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。
(写真:アフロ)

  米所・北海道の数百年の稲作の歴史を踏みにじる発言

 麻生副総裁の北海道米発言が波紋を呼んでいる。北海道のコメがおいしくなったのは、農家の絶えざる苦労と努力の結晶である。江戸期の松前藩時代、北海道地域は、寒冷の地のため米作りは困難とされ、石高上の評価は「無高」とされていた(※1)。しかし今や北海道米は全国2位のコメ生産量の大産地になっただけでなくブランド米としての位置も確立し、全国の食卓に上るようになった。北海道の稲作農家は憤懣やるかたない状況であろう。

 一方、北海道のコメ作りにおいて農家は絶えず冷害や水害に遭い、辛酸を嘗めながらも稲作(経営)を発展させてきた。多くの農家が離農しながら残った稲作農家が北海道稲作を支えている。そこでは、高齢化と稲作継続が課題となっている(※2)。

  米価暴落、自民党農政の無策?

 2021年、全国で米価が暴落し多くのコメ農家が来年のコメ作りが継続できるか悩んでいる。麻生氏が発言した小樽は北海道の中でも比較的温暖な気候を利用し稲作の中核地帯を形成する道央地域の中心地だっただけに問題が深い。  

 自民党は、農協などコメを集荷する業者に保管経費を補助する事業で15万トンの「特別枠」を設置すると公約に掲げている。市場に出回るコメの量を減らし、コメ余りによる値下がりを防ぐとするが野党や識者からは対策として不十分であり来年もさらなる下落が起こりえると批判する。

 そもそも米価下落は昨年の新型コロナによる影響で需給構造が変化し、今年初めから指摘されてきたことだ。政府の無策が招いた結果と批判されても仕方がないことだ。その中での米どころ北海道での麻生発言。その発言は自民党農政の無策を象徴したものといえるのではないか。

(脚注・参考資料)

(※1)「おいしい北海道米ができるまで・北海道米の歴史:第6回」『開発こうほう』北海道開発協会、2021年10月号

(※2)「北海道水田地帯における農業構造の変動と特質─農業センサス分析を主とした接近─」『農業問題研究』細山 隆夫、50 巻 (2018) 1 号

農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。

農・食・地域の未来を視点に情報発信する農業ジャーナリスト。龍谷大学兼任講師。京都大学農学研究科に在籍し国内外の農業や食料について研究。農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜の宅配を行ってきた。ヤフーニュースでは、農業経験から農や食について語る。NPO法人AMネットではグローバルな農業問題や市民社会論について分析する。有料記事「農家ジャーナリストが耕す「持続可能な食と農」の未来」配信中。メディア出演歴「正義のミカタ」「めざましテレビ」等。記事等に関する連絡先:kurodaira1974@gmail.com(お急ぎの方は連絡先をご教示くだされば返信します)。

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