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今季DeNA二軍コーチだった藤岡好明は、なぜ「現役復帰」を選んだのか?

田尻耕太郎スポーツライター
中央が藤岡投手兼コーチ。左は神田代表、右は西選手兼バッテリーコーチ(筆者撮影)

 2季ぶりの現役復帰となる。

 今季はDeNAで二軍投手コーチを務めていた藤岡好明氏が、プロ野球独立リーグ「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」の火の国サラマンダーズに投手兼投手コーチとして入団した。2日に熊本市内のホテルで就任会見に臨んだ。

 藤岡投手兼コーチは05年ドラフトでソフトバンクに入団。1年目に62試合に登板し、稲尾和久氏が保持していた当時のパ・リーグ新人投手最多登板記録を塗り替えた。日本ハム、DeNAでもプレーし2020年に引退。15年間で通算成績は337試合登板、22勝16敗1セーブ57ホールド、防御率3.78を収めた。そして今シーズンはDeNAで二軍投手コーチを務めていた。

「九州に戻ってきた」

 大阪出身だが、プロも含め高校(宮崎日大)、社会人(JR九州)と九州にはかねてから縁がある。そして火の国サラマンダーズの馬原孝浩監督はソフトバンク時代の先輩。ともにブルペン陣を支えてきた。コーチングスタッフ決定については「馬原監督の意思を尊重した」と神田康範球団代表。藤岡投手兼コーチも「九州には『戻ってきた』という感覚。馬原監督のもとで野球をできる喜びを感じています」と昔から変わらぬ笑顔で話した。

 ともかく、なにより驚かされたのは「現役復帰」である。

 藤岡投手兼コーチは次のように語った。

「今年1年間コーチを務めてその中で良い部分も経験しましたが、自分がプレーヤーとしてまだ上手くなりたいとの思いと、やっぱり野球が好きなんだとの思いを実感した1年でもありました。体もまだいける。また、最近はデータや分析など、野球に関して可視化されるものが多くなってきました。そういったものを自分なりにプレーヤーとして活用したい。まだやれるならやらないと損ではないか。その心に嘘をつけなかった。コーチを1年間やらせてもらった中でも、闘争心は持ち続けていた。それを表現できる場所が、今の僕には必要でした」

伝統とトレンドの融合

 昨今の球界は動作解析によるパフォーマンス向上を推奨する流れが強い。藤岡投手兼コーチはその効果を認めつつも、現役時代は積極的に活用する方ではなかった。

「この(コーチとしての)1年間があったから以前とは違った視点で取り組めることもある。新しい考えが自分の中で生まれるのも楽しみだし、それでパフォーマンスが上がれば、自分が体現することで若い選手たちにも還元できる」

 伝統的に野球界に伝わる練習法にも目を向けながら、現在のトレンドとの落としどころを探っていくことになりそうだ。そして、指導者としても「馬原監督もそうだけど、新しい練習法とかコーチングを作っていけるよう、型にハマらないコーチングを見つけていきたい」と意気込みを述べた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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