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実は日本よりも実力は上!?北朝鮮の平昌五輪参加表明でフィギュアペアが出場する可能性は?

金明昱スポーツライター
札幌冬季アジア大会のフィギュアペアで銅メダルを獲得した北朝鮮のリョムとキム(右)(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 2月に開催される平昌冬季五輪に北朝鮮が参加の意向を表明した、というニュースが飛び込んできた。

 北朝鮮の金正恩労働党委員長が1日の2018年新年の演説で「新年はわが人民が共和国創建70周年を祝い、南朝鮮(韓国)では冬季五輪競技大会が開かれることで、北と南にこのように意義のある年だ」と語り、さらに「平昌冬季五輪は、民族の地位を誇示する良いきっかけとなり、私たちは大会が成功裡に開催されることを心から願っている」、「代表団の派遣を含めて必要な措置を執る用意がある」と話したという。

 これを受けて韓国側は、9日に南北高官協議を提案。北朝鮮選手団の参加の可能性を話し合うのはこれからで、まだ正式な参加が決まったわけではない。

それでも、国際オリンピック委員会(IOC)も「大会組織委員会、韓国政府、北朝鮮オリンピック委員会との緊密な協力を続けていく」と歓迎しているのだから、北朝鮮参加の可能性は大きく進んだと言える。

 さらに韓国では「北朝鮮の美女応援団は来るのか?」との見出しで、選手団や応援団の来韓を期待するとの内容を報じるメディアも多く見られる。

出場資格があるフィギュアペア

 ただ、素朴な疑問なのが、そもそも北朝鮮に五輪出場資格を持つ選手がいるのか――ということだ。

 実は北朝鮮の選手で五輪出場権を得ているのは、フィギュアのペア、リョム・デオク、キム・ジュシクの2選手しかいない。

 去年の9月、ドイツでフィギュアスケートの平昌冬季五輪予選を兼ねた「ネーベルホルン杯」が行われ、ペアで北朝鮮のリョム・テオク、キム・ジュシクが出場枠を獲得。残り5の出場枠争いで3番手に入った。

 あまり知られていないのだが、2人は昨年2月の札幌冬季アジア大会で銅メダルを獲得している。当時、彼らは日本メディアの取材にも笑顔で受け答えしていたと聞いた。

 昨年11月にサッカー北朝鮮代表の取材で平壌を訪問したとき、スポーツ関係者から「このペアが五輪出場権を持っているが、参加するかどうかはまだわからない状態にある」と聞いていた。

 「それでも2人は毎日、平壌で1日4時間ほど練習している」と聞いていたし、どう話が転ぶかわからない状態のなか、五輪に出場する準備はしていたという。

カナダ人コーチの指導で成長

 それに現地の北朝鮮スポーツ関係者は「リョムとキムの2人は昨年の夏に行ったモントリオールの合宿で、カナダ人のマーコット・コーチから指導を受けて鍛えられたことで、実力を上げた」と言っていた。

 このマーコット・コーチは、日本の須藤澄玲(神奈川FSC)、フランシス・ブドローオデ(カナダ)組(五輪出場枠逃す)や2015年と16年に世界選手権を2連覇したデュアメル、ラドフォード組(カナダ)を指導している人物。

 五輪出場を心待ちにしているのは、北朝鮮のフィギュアペアの2人であることは間違いない。

未エントリーで恩恵受けた日本

 ただ、出場枠を持っていたのにも関わらず、北朝鮮が国際スケート連盟(ISU)に正式なエントリー期限までに出場意思を示さなかったため、補欠1番手の日本(須崎海羽、木原龍一組が出場)が繰り上がった。

 つまり、北朝鮮の未エントリーは、全体的には影響を及ばさないものだったが、唯一恩恵を受けたのは日本だったというわけだ。

 それでも五輪の場合、IOCの招待による特別枠からの出場が可能で、今後の調整次第では1枠増やして実施することも考えられる。それに他の種目でも特別枠での出場が考えられるが、冬季競技ではほとんど実績がない。

 というのも、これまで北朝鮮は冬季五輪で獲得した通算メダル数は2個。1964年インスブルック五輪のスピードスケートで銀メダル、1992年アルベールビル五輪のショートトラックで銅メダルを獲得しているが、冬のスポーツはそこまで盛んではないのだ。それに4年前の2014年ソチ五輪は不参加だった。

 それでも北朝鮮のフィギュアスケートのペア2人が出場権を手にしたのだから、ぜひともその雄姿を五輪で見たいものだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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