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円山川・由良川の堤防決壊と伊豆大島の土砂災害 10月の台風は大雨に警戒

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(平成29年10月20日0時00分)

台風21号が北上中

 台風21号が発達しながら日本に向かって北上中です(図1)。

図1 台風21号の進路予報(平成29年10月19日21時の予報)
図1 台風21号の進路予報(平成29年10月19日21時の予報)

台風21号の情報については、常に最新のものを入手して下さい。

 日本の南海上には停滞前線があり、台風の北上ともに前線も北上し、東日本から西日本の広い範囲では曇や雨となり、所によっては強く降る可能性があります(図2)。

図2 予想天気図(平成29年10月21日9時の予想)
図2 予想天気図(平成29年10月21日9時の予想)

 10月に日本に接近する台風は、前線を刺激して大雨を降らせ、大きな被害を出した事例が少なくありません。

 平成16年の台風23号、平成25年の台風26号という10月の台風では、大雨によって大きな被害が発生しました。

 総選挙中に北上中の台風21号も、前線と台風の大雨に警戒が必要です。

台風の年間最多上陸

平成16年(2004年)の台風は、発生数は29個とほぼ平年並でしたが、平年より北東に

偏った太平洋高気圧の周りを北上することが多く、年間上陸数は平年の約4倍の10個と、これまでの記録6 個を大幅に更新しました。日本周辺は海面水温が高く、衰えないまま襲来したため、日本各地で大きな被害をもたらしました。

 10個目の上陸台風が、10月20日に高知県土佐清水市付近に上陸した台風23号です(図3)。

図3 平成16年(2004年)10月20日9時の地上天気図
図3 平成16年(2004年)10月20日9時の地上天気図

平成16年の台風23号

 マリアナ諸島近海で発生し、宮古島の南東で超大型で強い台風となった台風23号は、秋雨前線を刺激しながら大型で強い勢力で北上し、10月19日に沖縄本島付近に接近し、20日に土佐清水市に中心気圧955ヘクトパスカルという強い勢力で上陸しています。

 気象衛星からみると、台風23号の雲は、沖縄本島付近では台風23号の雲ははっきりした円形の渦巻きをしていましたが、上陸時には円形の渦巻きが崩れています(図4)。しかし、台風の勢力は強いままでした(図4)。

図4 平成16年(2004年)10月19日12時と20日12時の可視画像
図4 平成16年(2004年)10月19日12時と20日12時の可視画像

 高知県室戸市では高波で堤防が決壊し、波やコンクリートが市営団地を襲い、家屋をつぶしました。

 台風23号は、大阪府泉佐野市付近に再上陸したあと、近畿、東海をへて関東地方で温帯低気圧に変わっています。

 九州から関東にかけてこれまでの日降水量の記録を上回る大雨が降りましたが、短時間に非常に激しい雨が降ったのではなく、台風の移動速度が遅かったために長時間の雨となるという大雨でした。

 そして、兵庫県豊岡市の円山川の堤防が決壊して、1000世帯 (市の中心部は8割)が浸水しました。

 また、京都府舞鶴市では、由良川が氾濫し、国道175号線では渋滞で止まった車列が水没し、バスの屋根の上に37 人が避難して夜をあかし、9時間後に救助されました。

 台風23号本体による強風・高波、および台風の北側にあった秋雨前線による大雨などが原因で、死者・行方不明者99人、住家被害1万9000棟、浸水家屋5万5000棟などの大きな被害がでています。

平成25年の台風26号

 平成25年(2013年)の台風26号は、10月15日に大型で強い勢力で関東地方に接近しています(図5)。

図5 平成25年の台風26号の経路
図5 平成25年の台風26号の経路

 平成16年の台風22号は、10月9日に伊豆半島に上陸し、この年9番目の上陸台風でしたが、この台風以来、10年に一度という勢力で伊豆大島の南海上を北上しました。 

 台風の北上に伴って前線が形成・強化されることがありますが、このように形成された前線の多くは、暖気の流入が強いために台風の北上とともに徐々に北上していきます。しかし、台風26号のときは、前面の寒気団が強く、台風が接近しても前線が伊豆大島の上から動きませんでした。

 中国地方から北海道の広い範囲で土砂災害や浸水害、河川の氾濫などが発生し、49人が亡くなっています。

 死者のうち、46人が伊豆大島です。伊豆大島では、前線による雨が1時間に20ミリ以上で降り続き、総雨量が300ミリを超えたところに、台風によって4時間に400ミリ以上という記録的な雨が降っています(表)。

表 アメダスの伊豆大島の1時間降水量(10月15~16日)
表 アメダスの伊豆大島の1時間降水量(10月15~16日)

 伊豆大島の10月の平均降水量が329.5ミリですので、前線により1ヶ月分の雨が降ったところに、台風によって4時間に1.5ヶ月分の雨が降ったのです。

 伊豆大島には砂防施設ができていたのですが、想定以上の雨によって発生した東西2キロメートル、南北200から400メートルという想定外の規模の土石流には対応できず、多くの人がなくなりました。

図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4の出典:饒村曜(2015年)、平成16年台風23号、気象災害の事典、朝倉書店。

図5、表の出典:饒村曜(2015年)、特別警報と自然災害がわかる本、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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