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ルイス・ネリを下したWBCスーパーバンタム級王者が受け入れられない初黒星

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 判定が告げられ勝者がインタビューを受けているなか、敗者は2冠王者に近付いていった。そして「勝ったのは俺だ。ここにいる全ての人がそれを分かっている。俺はお前を5回ほど痛めつけた」と捲し立てた。

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 現地時間の27日、米国ネバダ州ラスベガスで行われたWBCスーパーバンタム級チャンピオンのブランドン・フィゲロア(24)と、WBO同級王者、ステファン・フルトン(27)との統一戦は、フルトンが2-0の判定勝ちを収めた。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 今年5月15日に、"問題児"ルイス・ネリを7回KOで下したフィゲロアの姿に、快哉を叫んだジャパニーズファンも多かったことだろう。

 だが、今夜のフィゲロアは半年前ほどシャープな動きは見せられなかった。身長で4センチ、リーチで5センチの体格的アドバンテージを生かせず、初回からWBO王者にジャブで刺し負ける。

 フルトンは右ボディフックから入ったり、右ストレートを有効にヒットしてペースを握った。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 WBCチャンピオンはスイッチを繰り返すが、それも効果的ではなかった。

 「12ラウンドにわたって、ずっとプレッシャーを掛け続けた。クリーンショットも浴びせた。俺が失ったラウンドは、せいぜい4回くらいのものだろう。勝利を盗まれた。今年最悪のミスジャッジだ」

 フィゲロアは憮然とした表情でインタビューアーの質問に応じ、「リータンマッチをやりたい気持ちはあるが、こんな調子じゃな…」と明言を避けた。また、「126パウンド(フェザー級)に階級を上げるの?」という最後の問いに「ああ」と答えてリングを降りた。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 個人的には、2名のジャッジによる116-112の採点は妥当だったと感じる(残る1名は114-114)。メキシコ移民の血が流れるフィゲロアを応援するために、会場には多くの同胞がやって来ていた。「メ・ヒ・コ!」「メ・ヒ・コ!!」なる合唱で、WBCチャンピオンを後押しした。

 しかし連打の回転はフルトンの方が間違いなく速く、リングはWBO王者の距離で展開される時間が長かった。11回、12回はフィゲロアがポイントを取ったが、勝利に十分なパフォーマンスだったとはとても言えない。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 勝者、フルトンは言った。

 「接戦でしたが、勝ったのは私です。フィゲロアが放ったパンチの全てをグローブで止めていましたし、彼は何発も私の腕を打ちました。フィゲロアの動きは雑でラフでしたね。私のパンチの方が的確でしたよ。素晴らしい経験になりました」

 2冠王者の戦績は20戦全勝(8KO)に、フィゲロアは22勝(17KO)1敗1分けとなった。負け知らずだったフィゲロアは、どうしても黒星を受け入れられないようである。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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