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ノート(20) 検察は勾留質問調書をどう使い、被疑者側は勾留にどう対抗するか

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~逡巡編(5)

勾留初日(続)

【勾留質問後の検察の対応】

――裁判官に妻との間だけでも接禁を付けないでほしいと述べ、勾留質問調書にその旨の記載をされてしまったのは失敗だった。

 仮監で昼食に出された皮付きのナシ丸ごと1個にかぶりつきながら、そう考えていた。そうした泣き言が通る世界ではなかったし、最高検に“弱み”を握られる結果にもなったからだ。

 というのも、勾留質問後、検察は直ちに勾留質問調書のコピーを裁判所から手に入れ、その日から始まる本格的な取調べに備えている。対応は、おおむね以下の4パターンで異なる。

(1) 被疑事実を弁解録取書(弁録)で認め、勾留質問調書(勾質)でも認めている場合

(2) 弁録で否認し、勾質では認めている場合

(3) 弁録で否認し、勾質でも否認している場合

(4) 弁録で認め、勾質では否認している場合

 実際には否認ではないものの、少なくとも明確に認めていないという意味で、検察では認否留保や黙秘、署名拒否も否認のカテゴリーに含めている。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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