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日本代表の選考はどうなっているのか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
会見するジョーンズ(写真提供=JRFU)

 日本ラグビーフットボール協会は8月7日、同月25日(現地時間)からのパシフィックネーションズカップ(PNC)に挑む日本代表のメンバー36名(フォワード19名、バックス16名、リハビリテーション組1名)を発表。エディー・ジョーンズヘッドコーチがオンラインで会見した。

 メンバーは以下の通り。読み方は「選手名(所属先)…身長・体重・生年月日・キャップ=代表戦出場数 記号」。

■フォワード19名

<左プロップ>

岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス)…180・105・1995/2/19・2 ●▲
三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ)…180・115・1995/6/8・9 ●※
茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)…187・116・2000/3/17・3 ●▲※

<フッカー>

坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1993/6/21・44 ●⑲㉓
原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)…175・101・1999/4/15・3 ●▲※
松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ)…175・100・1997/6/6・0 ★※

<右プロップ>

木津悠輔(トヨタヴェルブリッツ)…178・115・1995/12/2・5 ⑲※
竹内柊平(浦安D-Rocks)…183・115・1997/12/9・6 ●※
為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…180・108・2001/9/3・3 ●▲※

<ロック>

エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)…196・122・1996/7/7・0 ★
桑野詠真(静岡ブルーレヴズ)…193・112・1994/10/11・1 ●▲※
サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)…202・120・1995/7/17・5 ●※
ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…201・117・2002/4/11・14 ●㉓※

<フランカー/ナンバーエイト>

サウマキ アマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ)…189・107・1997/3/8・5 ●㉓※
下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)…188・105・1999/1/17・6 ●㉓
ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)…192・102・2000/6/14・2 ●▲※
アイザイア・マプスア(トヨタヴェルブリッツ)…191・112・2000/12/21・0 ★
山本凱(東京サントリーサンゴリアス)…177・100・2000/3/17・1 ●▲
ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…187・112・1997/1/20・8 ●※

■バックス16名

<スクラムハーフ>

小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…171・74・1994/10/31・2 ●
藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…171・76・1999/2/8・2 ●▲※
村田大和(京都産業大学)…168・69・2004/10/15・0 ★大U

<スタンドオフ>

松田力也(トヨタヴェルブリッツ)…181・92・1994/5/3・39 ●⑲㉓
李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)…176・86・2001/1/13・14 ●㉓※

<ウイング>

海老澤琥珀(明治大学)…173・79・2004/10/27・0 ★大U
根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…173・82・1998/9/15・2 ●※
マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)…182・91・1996/3/23・0 ★※
ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)…177・95・1994/4/12・11 ●㉓

<センター>

立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…180・94・1989/12/2・56 ●⑮
サミソニ・トゥア(浦安D-Rocks)…182・108・1995/5/24・3 ●▲※
長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…179・90・1999/11/25・10 ●㉓
ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ)…188・93・1996/6/13・0 ●※
ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・102・1997/5/2・20 ●㉓

<フルバック>

矢崎由高(早稲田大学)…180・85・2004/5/12・3 ●▲大※
山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…176・84・1994/9/21・9 ●


■リハビリテーション組1名

ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京)…195・118・1994/12/7・7 ●㉓※


●=今年6~7月のサマーキャンペーンに参加

▲=今年6~7月のサマーキャンペーンで代表初選出(候補合宿は除く)

★=今回代表初選出

大=大学生

U=今年度20歳以下(U20)日本代表

※=今年2、5月にあった現体制候補合宿のいずれかに参加→2月はクロスボーダー戦非出場チームから、5月はリーグワンプレーオフもしくは入替戦不参加のチームから選出

丸数字=ラグビーワールドカップ出場年

 指揮官はこのほど新しく招いた選手への所感、かねて招集外となる見込みだった大学生が3名も入ったことなどに触れた。非テストマッチを含め1勝4敗で終えた6~7月のキャンペーンの振り返りもまた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「まずは今回、日本のラグビーを再建するプロジェクトのステージ2を迎えられて嬉しく思います。現在参加可能ななかから一番いいメンバーを集めた。PNCには日本と同等の様々な国(カナダ代表、アメリカ代表、サモア代表、トンガ代表、フィジー代表)が参加している中、我々は前回のサマーキャンペーンから向上できる点があり、期待しているし、楽しみにしている。

 サマーキャンペーンからの改善点を見ていきたい。イタリア代表戦(7月21日に14―42で敗戦)はポゼッションのうち40パーセントが被ターンオーバーされた。基礎の向上にフォーカスしたい。

 我々が若いチームであると考えたうえでも、目指している『超速ラグビー』を実現するためには、落ち着きながらプレーを遂行するのが肝となる。基礎を向上させ、チャンスを作り出す。そして冷静さを保ってスコアまで持ってゆくことが大きな課題です。

 PNC。期待しています。現状いいメンバーを選んでいます。主将は追って皆様に報告します」

 約9年ぶりに再登板のジョーンズは、前年度までの常連組の高年齢化、および相次ぐ辞退を鑑み、今年6月の本格始動から若返りを敢行。最初のキャンプのメンバーとして発表された36名のうち13名が代表デビュー前だった。指揮官の弁。

「今回に関してはジャパンラグビーの次の世代が肝になる。今の世代は日本を世界のトップ4に導く世代だと考えている。今回20キャップ以上の選手は4人のみ。それが日本ラグビーの現状だと考えています。前回のワールドカップを踏まえ、日本ラグビーが変わらないといけないことは明らか。投資の時間。その過程では痛みも伴い、望まない結果もついてくるかもしれない。ただ私は若手に大きな自信を持っています。育成に力を入れ、次世代の日本ラグビーを作っていきたいです」

 今度のPNCのメンバーも、その流れに沿って選ばれた。リリースにはこんな但し書きもあった。

リーチ マイケル選手(東芝ブレイブルーパス東京)は休養の為、齋藤直人選手(スタッド・トゥールーザン)とテビタ・タタフ選手(ユニオン・ボルドー・ベグル)は所属クラブの活動に伴い、また姫野和樹選手(トヨタヴェルブリッツ)とシオサイア・フィフィタ選手(トヨタヴェルブリッツ)、福田健太選手(東京サントリーサンゴリアス)はゲームフィットネス向上中のため、今回は選考対象外となります。

 つまりリーチの務めるロック兼フランカー、姫野やタタフの担うフォワード第3列の専門家、齋藤、福田の入っていたスクラムハーフ、フィフィタがプレーするセンターの枠では一部メンバーの「繰り上げ当選」が発生したと取れる。

 また昨秋のワールドカップフランス大会のメンバーでは他に、スクラムハーフの流大(東京サントリーサンゴリアス)がすでに代表引退を表明。フッカーの堀江翔太氏はすでに現役を退いている。

 また左プロップでは稲垣啓太とクレイグ・ミラー(以上埼玉パナソニックワイルドナイツ)、右プロップでは具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)とヴァルアサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、ロック兼フランカーではジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、ウイング兼フルバックでは松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)が、本人およびジョーンズの口から辞退が伝えられている。

 辞退の理由、辞退する期間がいつまでかについては千差万別で、それが解消されてからも目下選出されているメンバーとの競争はある。

 さらにフランス大会組では、フランカーの福井翔大、ベン・ガンター(以上埼玉パナソニックワイルドナイツ)は6月の宮崎合宿へ参加も、故障のため離脱を余儀なくされている。

 ジョーンズは今度の会見「現在参加可能ななかから一番いいメンバーを集めた」と語ったが、それは上記の内容を前提とした発言である。

 質疑応答に入る。司会者からメンバーに入らなかった選手への質問は控えるよう通達があった。

――もともと大学生はサマーキャンペーンを最後に所属先へ戻る予定だったが、今回も3選手が招集されています。その経緯は。また、それぞれPNCだけの参加か(10月以降はニュージーランド代表などと対戦)。

「前回のサマーキャンペーンでは多くの大学生に参加してもらった。今回は各自の所属大学での活動に専念してもらう傾向が見られます。ただ永友洋司チームディレクターとの協議の結果、早稲田大学、明治大学、京都産業大学からのご支援をいただき、矢崎、海老澤、村田をカナダの遠征に連れていけることになりました。

 セレクションに関しては、他選手も含めパフォーマンスがベース(基準)となる。それぞれが出場の選考対象となるか、各自のパフォーマンスを踏まえ、以後のセレクションに入るかどうかを決めていきたい」

 ジョーンズの言葉通り、6~7月の活動ではフッカーの佐藤健次(早稲田大学)、右プロップの森山飛翔(帝京大学)が全日程、フランカーの利川桐生(明治大学)らが部分的に帯同していた。

「大学シーンを見ると才能がある選手は十分にいると感じている。ただ育成には時間、丁寧なコーチング、選手のハードワークが不可欠。タレントをパフォーマンスに変えるのが仕事。ただタレントがいるのがポジティブ。タレントをパフォーマンスに変えるのが楽しみなところです。一例をあげます。矢崎。いい才能のある若い選手です。自分がボールを持っている時の動きはいいが、ボールを持っていない時の動きをワールドクラスにすればもっとよくなる。どんどん育成をします」

――それ以外の初選出組について。

「それぞれの強みを活かしたプレーを期待しています。代表でプレーするチャンスを手にしたばかり。『超速ラグビー』を体現することへいかに早く順応できるか、いかにチームマンであるかを注視したいです」

――カナダから帰国後のPNC日本ラウンドでは、追加招集を考えるか。

「選考については、現状、日本でどのような選手が(資格などを鑑み)出場可能かを見極めている。日本にどのような選手がいて、出場可能な選手は何名いるか…。我々のラグビーを体現できる選手は何名いるか…。次のワールドカップ(オーストラリア大会=2027年)を見据えた進行中のプロセスという風に考えています。PNCは大きな機会。U20の海老澤と村田にとっては、次の高いレベルでプレーするチャンスが目の前にある。次に行けるチャンス」

――10月のキャンペーンまでに改善したい点は。

「(フィールド上の課題は)ボールを大切に扱うこと。我々としてはペース、スピードに乗ることがジャパンの肝で、他国との差を埋める場所だと思っています。ここに関しては別の方法を取ることは考えていない。ただ、改善点でいうと、フォワードはセットピースで安定性を極め、ボールを勝ち取ってもらいたい。バックスはハンドリングエラーをなくして展開していけるか。この2点を注視してトレーニングを積み、試合に臨んでいきたいです」

――今回、戦術理解を促すためのプログラムは。

「基礎の部分を徹底的にやる。これに尽きる。確かにこれまでの試合では理解力が問題点に挙がった部分もある。ここは時間もかかるし、トレーニングでの連携も必要。ただ、大前提に基礎の部分がある。

 オリンピックの話を。男子の日本のバレーチームは身長で劣ったが、ディフェンスの基礎がいいからこそハイレベルな試合で通用する。また体操の岡慎之助選手も印象的。解説者の方が『基礎がいいからこそこのパフォーマンスができる』と話していた。我々のチームではキャッチパス、ブレイクダウンのワークを徹底的にやる。ここで周りと差をつけられる。選手の取り組む姿勢は申し分ないので、根気強く指導したい」

――今回、ラインアウトコーチは不在。

「(イタリア代表戦で不振に終わったラインアウトは)遂行力が課題だと思っている。ハイレベルの試合の経験、練習を積むことが一番。

 コーラーを務めるワーナー・ディアンズ。高いレベルでの試合は34回しかしていないようなもの。それに対し、ニュージーランド代表のスコット・バレットは300試合。それに対峙しなければならないとなると、コール、フィールドと勉強しなければならない点がある。どうしても時間がかかる部分。近道は決してありません。都心から千葉へ一気に行けるアクアラインは、ラグビーには存在しない」

――主将はもう決まっているのか。それともキャンプ入り後に決めるのか。

「回答としてはある程度のアイデアでまとまっている。何人かのシニア選手とも話をしている。ただ、まずは選手を集めてから最終判断をしたいです」

――PNCでの目標は。

「『超速ラグビー』を向上、発展させることがメイン。試合の強度、レベルを上げたい。もちろんPNCでチャンピオンを目指します。テストラグビーでは勝つことに意義がある。ただ我々は育成のステージにあることも認識しないといけない。若手チームであり、若手を育成するには忍耐力が必要。『超速ラグビー』を極め、結果に繋げたい」

 チームは8月10日から宮崎合宿をおこない、17日に初戦のカナダ代表戦のある敵地へ入る。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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