豚は豚でも カツ丼がこのところ好調 中食を反撃
今、とんかつ・カツ丼業態が好調
豚は豚でも、丼のなかで30代、40代の男女、いずれも人気NO1なのが、かつ丼。
かつ丼を提供するとんかつ・カツ丼業態も2015年の見込みで、前年比より成長率117%と言われ、2位にランクインされ、好調である(富士経済参照)。
「とんかつ」と言えば、高価格設定が当たり前で、1000円以上の単価も見込める業態とされてきた。それに追従する形でカツ丼も800円以上、なかには1000円以上がごくごく普通だった。
口に含むとカリッと音をたて、耳の奥にまで伝わり、食感、そして豚本来の甘味、火が通りそうでいて、その一歩手前の半熟の溶き卵がとろり。それが口の中で微妙なハーモニーとなり、「おいしいな・・・少々、高くても許せる・・・」と思ったもの。
さて、これまで高級とされていたとんかつ・カツ丼業態。最近では、中食の価格を意識した低価格設定で勝負し、それが功を奏している。
そこで今回は、とんかつ専門店のメニューに必ずあり、中食業態(主にスーパー、弁当専門店)の定番とされるカツ丼について比較致しました。
コンビニではカツ丼は難しい
このところの好調である理由の一つに、コンビニが手を出しにくい商品であること。コンビニは多くの場合、そのほとんどが(ローソンの一部、地方で頑張っているイートインのセイコーマート、コミュニテイストアのコミステなどを除くと)工場製造であり、店舗内調理、つまり出来立てではない。そのため、素材が良くても、カリッとした食感が維持できない。パン粉のカリッ、そしてとろっとした卵、お米に煮汁が染み込みすぎず、その一方でまったく浸み込んでいないのも不自然。その絶妙なさじ加減は、店舗内調理だからこそなせる業。コンビニでは、一時期、大量に陳列されていたカツ丼。丼の定番なのに、現状、そのほとんどは期間限定、もしくは陳列されていないことからも伺える。
ということで、店舗内調理での提供が可能な、低価格とんかつ専門店、スーパー、そして弁当専門店。これらのカツ丼が三つ巴の戦いになるとも言える。
低価格とんかつ専門店、中食のカツ丼の価格を見ると
昨年、自ら、WEBアンケート200名(男性111名、女性89名 年齢10代から50代)で実施。その際、61名が購入動機のNO1は「価格」をあげた(このほかにボリューム、出来立てなどの項目を入れる)。
そこで、各業態の価格を挙げてみると
外食組
低価格カツ丼
・かつや529円(税込)梅
・松乃家 490円(税込)
・かつさと 540円(税込)
中食組
スーパー
・ヤオコー537円(税込)
・ライフ 関東価格 538円(税込)
・ヨークベニマル537円(税込)
・ヨーカド―598円(税込)
・イオン537円(税込)
それ以外のスーパーでは、スモールポーションでの販売、なかにはカツ丼が売り場にないような状況が見受けられた。
弁当専門店
・オリジン弁当550円(税込)
・ほっかほっか亭530円(税込)
・ほっともっと470円(税込)
・本家かまどや520円(税込)
ちなみに調査期間(2015年7月から2016年3月)です。
グラフにすると、よりわかりやすいため、作成いたしました。
ここではコンビニは、年間置かれていないこともあり、外しました。
外食のかつ丼価格は、中食の業態いずれにも対応できる価格設定となっている。
アンケートを元に多変量解析いたしました。
・出来立てを重視する人は550円のカツ丼を購入する
・価格を重視する人は30代で夕食に450円のカツ丼を購入する
この他にアンケートでは
・外食600円以上でも購入する
・中食では500円までが上限価格
という結果。
つまり現状、低価格のとんかつ専門店の価格は、すっぽりと中食の価格にもはまっており、分析の条件、アンケート結果にも満たす、余裕をもった価格設定と言える。
1gあたりの単価、ここでも外食健闘、弁当専門店も頑張っている
次に1Gあたりの単価を見てみた。容器から、中身をお皿に移し、計量いたしました。各業態ごとの平均を出し、比較したものです。ちなみにコンビニは、年間販売されていないので、調査期間中、コンビニ2社(ローソン、セブン―イレブン)の平均1g単価となっている。一応、グラフにコンビニの1g単価を入れました。
低価格とんかつ専門店の1gあたり1.158円は、中食業態、いずれも互角に戦っている(フードビズ「中食の中味」80号池田恵里にも掲載)。
コンビニ 1.515円
スーパー 1.152円
弁当専門店1・08円
コンビニ1.515円(売り場に並んでいたのは、調査期間中2社のみ)
中食で健闘しているのが、弁当専門店の1.08円。弁当専門店は、注文を受けてから調理し、提供。これは、とんかつ専門店のカツ丼の提供方法とほぼ同じ。唯一、カツ丼専門店との違いは、違う調理、つまり炒め弁当とカツ丼といった調理の異なる商品を同時に注文を受け、作らなければならない。それもあってピーク時は、厨房、つまりバックヤードは戦場とかす。そんななか、価格、1gあたりの平均価格もさることながら、商品内容も、各社、盛り付け(上手に斜め切りのネギが入った卵の白身をとんかつの上にのせることでカツの茶色を綺麗に見せる)など、よくよく考えられ、衣とバッター、そしてとんかつのバランスも良かった。
スーパーは、中食業態のなかでカツ丼のシェア率が最も高い。バックヤードでは大量にとんかつを作り、その延長線上にカツ丼も各社、調理の違いがあるにせよ、店舗内調理で一度に大量製造している。そして定番中の定番であった。しかしここに来て、調査した店舗では簡易な調理、もしくは売り場にトンカツ・カツ丼が並んでいないところも見受けられた。
カツ丼を俯瞰してみる大切さ
カツ丼のベースとなるカツレツの100世帯あたり年間購入頻度は1990年に260だったものが、2013年には402となり55%上昇している(家計調査報告)。家では調理しない、出来ない。けれど・・・食べたい。高齢化が進んでも、ニーズは確実にある。そしてこれまで顧客の購入先の多くはスーパーであり(惣菜白書2015年)、売り場を見ると惜しいようにも・・・
胃袋は縮小し、いかに一人一人の固定客が離れないように、各社、懸命である。とはいえ、その一方で、業態内での動向に意識が集中してしまい、外食まで目がいっていないのではないだろうか。もう既に外食も含め、他の業態にも目を光らせていくのが当たり前で、今回、外食の低価格カツ丼の好調ぶりを見ると、これまでは想定外だった業態からも中食の顧客は奪取される。そんな時代に突入している。