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古巣レベルズと対戦のサンウルブズ稲垣啓太、「楽しいとかでは、やってない」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2月27日の開幕節。低い姿勢でのコンタクトでチームを前に出す。(写真:ロイター/アフロ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズの稲垣啓太が、自らの職業倫理や次戦への意気込みについて語った。3月19日に東京・秩父宮ラグビー場で対戦するレベルズは、稲垣が昨季所属したチームである。

国内では日本最高峰トップリーグで3連覇中のパナソニックに所属し、2013年度の最優秀新人賞を獲得。身長183センチ、体重115キロの25歳で、スクラムを最前列で組む左プロップながら鋭いタックルと運動量で魅せる。日本代表としては昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた。

稲垣がディフェンスリーダーを務めるサンウルブズは、試合のなかった第2節を挟んで開幕2連敗中も、強豪の南アフリカのチームを相手に接戦を重ねている。17日は都内で、レベルズとの第4節に向け練習をおこなった。

以下、共同取材時の一問一答(一部編集)。

――(当方質問)シンガポール・ナショナルスタジアムでのチーターズ戦は31-32で黒星。前半に大量リードも、逆転負けを喫しました。

「シンガポールで負けたのは悔しかったです。1点差、惜しかったねと言われるんですが、その1点が難しいんですよね。後半の立ち上がりも悪かったですし、セットプレーも急に崩れた。問題は色々とあると思いますが、1番の敗因は、ああいうタフな時間帯に巻き返されたこと。疲れてくる時間帯に何が起こるかと言うと、考えられなくなって、コミュニケーションが取れなくなって…。そこを突かれて、失点しましたね」

――(当方質問)相手はハーフタイムにメンバーを入れ替えてきた。そちらがレギュラー格とされています。

「メンバーを入れ替えたというより、僕らの弱点をしっかり突いてきました。ラック(密集)サイドの戻りが遅いところを突かれた。カウンターからの失点も多かったですね。システムで崩されたかといえば、そうでもない。個人のミスです。ラックサイドを抜かれたところも、(所定の立ち位置に)相手を見ずに戻りながら、振り向いたら…という感じ。システムは揺らいでいないということと、なぜ抜かれたかを確認しました」

――次戦は古巣との対戦。

「レベルズだから楽しみということはないです。楽しい、楽しくないでは(ラグビーを)やってないので。

もちろん勝ったら嬉しい気持ちはあります。ただ、これは職業じゃないですか。楽しい、楽しくないというものではない。なぜこれをしているかというと、自分のためですよね。人生のスパンで考えたら、ラグビーができるのは短い期間。そのなかで自分の可能性を広げ、選択肢を増やす。そのためにやっている感覚です。

日本代表になったら、皆さんが国のためにと言う。ただ、僕のファーストチョイスは自分のため。それが結果的にチームの勝利に貢献したら、国のために、ファンの皆さんのためになりました、となる。ファーストチョイスは、自分のためです」

――とはいえ、相手には旧知の仲の選手が多い。

「そうですね。『どこに泊ってんの?』と連絡を取り合って。別に、会いはしないです。まぁ、相手の長所、短所は知っているので、その情報を上手く共有できれば」

――相手の要注意人物は。

「ショーン・マクマーンですかね。(身長186センチと、国際クラスのフランカーとしては)サイズは小さい。それなのに、なぜあんなにパワーが出るのかなと。ランナーとしての能力は高いです。7人制も経験していて、運動量も豊富ですし。

ラインアウト(空中戦)でのキーマンはルーク・ジョーンズ(ロック)とアダム・トムソン(ナンバーエイト)。ただ、精度がいいわけではない。分析して、突いていきたい」

――(当方質問)トムソン選手は、日本のトップリーグのキヤノンに所属しています。対戦した経験上、ラインアウトのサインコールで何がしかの傾向を掴んでいたりは…。

「傾向というよりは…。ジョーンズの使うオプションにやや…というところがある。捕った後のデリバリー(味方へのつなぎ)もよくない。こちらは細かいところを突いていきたい。相手のバックスにきれいなボールが渡らないように。出だしのところでプレッシャーをかけられたら」

――改めて、サンウルブズでプレーしている背景は。

「日本のチームでやるべきだと言われていますが、もともとは今年もレベルズでプレーする選択肢の方が、僕のなかでは強かったです。ただ、僕がこのチームに入ったのは、堀江さん(翔太キャプテン、パナソニックや日本代表でチームメイト)がいて、学べるものが多かったから。また、(ほぼ確実に)試合に出られる環境があったこと」

――レベルズからのオファーもあったのでは。

「結構、来てくれとは言われていました。サンウルブズに決めましたと伝えてもです。ただ…。どこのチームもそうですが、スーパーラグビーでは、早い段階で次のシーズンも契約する選手を試合で使う(傾向がある)。そうではない選手は使われない。後で聞いたら、(1試合のみの出場に終わった)僕は、それだったんです。レベルズのシーズンが終わった頃から(オファーを)言われました。ただ、あの時はサンウルブズの体制が整う前で、エディーさんもいたので(ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチは、名称決定前のサンウルブズではラグビー・オブ・ディレクターを務めていた)」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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