アトレティコのプランと、インテルの思惑と。
欧州の8強入りを懸けた戦いが、始まる。
今季のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦で、アトレティコ・マドリーとインテルが激突。ファーストレグでは、ホームのインテルが1−0で勝利している。
■アトレティコのプラン
アトレティコは現在、リーガエスパニョーラで4位に位置している。コパ・デル・レイでは準決勝まで勝ち進んだが、アトレティック・クルブに敗れてファイナルへの切符を逃している。
コパの敗退はアトレティコにとって痛手だった。リーガにおいてはレアル・マドリーが首位を快走しており、逆転は困難。チャンピオンズリーグのタイトルを争う、というのはシーズン終盤に向けて重要なファクターだ。
アトレティコは今季、アルバロ・モラタとアントワーヌ・グリーズマンが好調だ。2人合わせてリーグ戦で25得点をマークしている。
ただ、シーズンは佳境に入り、負傷が彼らを苦しめている。アンヘル・コレア(7得点)、メンフィス・デパイ(5得点)に代役を務めさせるだけではなく、マルコス・ジョレンテ(6得点)をFW起用するなどディエゴ・シメオネ監督は策を弄しているが、やはりモラタとグリーズマンが必要不可欠な選手になっている。
■補強と得点力
アトレティコは今夏、ジョアン・フェリックス(バルセロナ/レンタル)、マテウス・クーニャ(ウルヴァーハンプトン/移籍金5000万ユーロ/約81億円)、ヤニック・カラスコ(アル・シャバブ/移籍金1500万ユーロ/約24億円)を放出した。
一方、補強に関してはロドリゴ・リケルメ、サムエウ・リーノのレンタルバックが決まったが、大物アタッカーの加入はなかった。
シメオネ監督は課題を感じていた。事実、今冬の移籍市場で、アトレティコはモイーズ・キーンの獲得に迫っていた。ユヴェントスとクラブ間合意に至り、さて移籍だという段階で、フィジカルコンデイションの問題が見つかり取引は不成立に終わった。
■インテルの思惑
他方でインテルは、昨季のファイナリストとして、アトレティコとの一戦に臨む。
インテルが最後にチャンピオンズリーグで優勝したのは2009−2010シーズンだ。ジョゼ・モウリーニョ監督の率いるチームが、決勝でバイエルン・ミュンヘンを下してビッグイヤーを掲げた。
モウリーニョ・インテルにディエゴ・ミリートという偉大なストライカーがいたように、現在のインテルにはラウタロ・マルティネスがいる。
ラウタロは昨季、公式戦57試合に出場して28得点を記録した。2022年のカタール・ワールドカップでは、リオネル・メッシと共にアルゼンチン代表の優勝に貢献。名実ともに、インテルのエースとして認められている。
そのラウタロの「相棒」を、インテルは探していた。そして、この夏、ボルシア・メンヒェングラッドバッハを退団してフリーになっていたマルクス・テュラムを獲得。ラウタロ・マルティネス(リーグ戦23得点)とテュラム(10得点)、ゴールを量産する2トップが完成した。
シモーネ・インザーギ監督は【3−5−2】を基本布陣にしている。
中盤においては、この夏、マルセロ・ブロゾビッチが退団した。移籍金1800万ユーロ(約28億円)でアル・ナスルに移籍したブロゾビッチの代わりに、選ばれたのはハカン・チャルハノールだった。
アンカーで守備力を担保したブロゾビッチだが、チャルハノールはオーガナイザーとして機能している。また、得点力を備えており、今季公式戦31試合で11得点3アシストをマークしている。
守備力が売りのイタリア勢だが、インテルはディフェンスだけではなく攻撃力を有している。
「インテルは現在、ヨーロッパでトップ4あるいはトップ5に入るチームだ。セリエAでの戦いぶりを見れば、それは明らかだ。昨シーズンは、チャンピオンズリーグで素晴らしい試合をしていた。決勝では、マンチェスター・シティと競り合った」とはシメオネ監督の言葉だ。
「私はインテルのプレースタイルを好んでいる。これは、少し前からずっと言っていることだ。彼らはシンプルに、正しくプレーする。時に、シンプルというのはベストな選択肢になる。彼らは組織として、全員がチームのためにプレーしている。重要なのはデュエルの場面で、そこを制した方が勝利に近づくだろう」
パルティード・ア・パルティードーー。「試合から試合へ」がシメオネ・アトレティコの信条だ。
とはいえ、シーズンの行方を左右するような試合は存在する。アトレティコ対インテルの一戦がそれに相当するのは間違いない。