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アトピー性皮膚炎による結膜炎、デュピルマブ治療での副作用増加の謎に迫る!

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【アトピー性皮膚炎に伴う結膜炎の発症メカニズム】

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下により、アレルゲンなどの侵入を許してしまう慢性の炎症性皮膚疾患です。この皮膚炎が引き金となり、結膜炎などの眼疾患を併発するリスクが高まることが知られています。

今回、米国の研究グループは、マウスモデルを用いてアトピー性皮膚炎に伴う結膜炎の発症メカニズムを探る実験を行いました。その結果、皮膚の炎症部位で感作されたCD4陽性T細胞と活性化された好塩基球が、眼の結膜組織に移動し炎症を引き起こすことが分かりました。さらに、IL-4受容体α(IL-4Rα)シグナル伝達経路の阻害により、一部の結膜炎症状が緩和されることも明らかになりました。

この研究は、アトピー性皮膚炎という皮膚の慢性炎症が、眼の結膜組織の炎症を誘発するメカニズムの一端を示したものです。今後、ヒトでの検証が進めば、皮膚炎を適切にコントロールすることで眼疾患の発症を予防できる可能性が期待できるでしょう。

【デュピルマブ治療に伴う結膜炎増加の謎】

アトピー性皮膚炎の治療に使用される分子標的薬デュピルマブは、IL-4RαとIL-13の作用を阻害することで高い治療効果を発揮します。しかし、一部の患者では皮膚炎が改善する一方で、逆に結膜炎の発症が増加するという副作用が報告されています。

研究グループは、マウスの皮膚炎モデルにデュピルマブ類似抗体を投与したところ、結膜炎の症状が一部緩和されたものの、完全には抑えられないことを発見しました。また、結膜組織の遺伝子発現解析から、デュピルマブ投与により涙に含まれるタンパク質や酵素をコードする遺伝子群が有意に増加することも明らかになりました。

これらの結果は、IL-4Rαシグナル阻害だけでは説明できない結膜炎増加のメカニズムが存在する可能性を示唆しています。ヒト涙液中のバイオマーカー解析などを通じ、この副作用の原因解明が進むことが期待されます。

【アトピー性皮膚炎による結膜炎への対策】

アトピー性皮膚炎患者さんにおいて、眼の異常を自覚した場合は早めに眼科を受診し、結膜炎の有無を確認することが大切です。皮膚のバリア機能を高め、炎症をコントロールすることが結膜炎の予防にもつながります。

スキンケアでは、保湿剤の塗布を心がけ、肌の乾燥を防ぎましょう。刺激の少ない低刺激性の日焼け止めを使用し、アレルゲンを遮断することも効果的です。また、炎症がある場合は、医師の指示のもと、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などを使って炎症を抑えることが基本です。重症の場合はデュピルマブなどの生物学的製剤の使用を検討しますが、結膜炎の発症リスクについて医師とよく相談しておきましょう。

アトピー性皮膚炎は、QOLを大きく損ねる難治性の疾患ですが、最新の研究により、病態の理解が進んでいます。皮膚科と眼科が連携し、皮膚と眼の両方の健康を守る医療体制の構築が望まれます。

参考文献:

- JCI Insight. 2023 Feb 8;8(3):e163495. doi: 10.1172/jci.insight.163495.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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