児童扶養手当、年6回の支給へ ひとり親家庭、家計運営しやすく
11月11日。
約70%のひとり親世帯が受給している、児童扶養手当。この児童扶養手当の支給日である。
児童扶養手当は、離婚によるひとり親世帯等、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される過程の生活の安定と自立の促進に寄与するために手当を支給している(2010年から父子家庭にも支給)。
文字通り、ひとり親世帯の命綱となっている(年収160万円まで子ども1人のひとり親世帯の場合は42,910円を支給)。
児童扶養手当が何6回の支給に
2019年11月から、児童扶養手当制度には大きな変化がある。
それは、年に6回、2カ月に1回の支給となることだ。
これまでは、年に3回、4月、8月、12月にまとめ支給が行われてきた。それが年6回の支給になる。
この4カ月に1回の支給がどれほどたいへんだったか。毎月の家計は多くなったり少なくなったりしていた。以下のグラフを見ればわかるだろう。(この図はパートで働き月10万円程度の収入のあるシングルマザーが手当をもらった場合の模式図だ。実際はパートなので、長期休暇のある8月のあとの9月や、1月などは収入が減るのでもっと波がある)。毎月の収入に大きな波があることがわかるだろうか。
日本人多くの人の収入は、毎月入ることが多いだろう。年金は2ヶ月に1回。
働いて得る給料は、月給制のところが多い。またそれに合わせて、通信費や光熱費などの支払いやクレジットカード等の決済も毎月払いが多い。
ところが、低所得世帯が多いひとり親世帯に支給する児童扶養手当は、年に3回(4月、8月、12月)の支払いが長い間続いてきた。
そこで、わたしたちは2015年以来、児童扶養手当毎月支給を要望してきて、これが聞き届けられ、今年度から年6回支給が実現することとなった。
今回、わたしたちしんぐるまざあず・ふぉーらむは、新入学お祝い金2019の受給者794人に調査を行い、児童扶養手当の支給回数について聞いた調査結果をまとめた(※2019年4月に進学予定の子どもたちにお祝い金を小、中、大学等に進学する場合は3万円、高校に進学する場合は4万円を渡した。)
もともと、児童扶養手当の全額支給の所得制限をひとつの基準にしたおものであるので、新入学お祝い金受給者の平均年収は212万円、平均就労年収は153万7000円で、子どもは平均2.1人、非正規で働く人も多く、預貯金はゼロが23.1%、10万円以下は4割となった。
教育費の捻出に困る世帯の生活の苦しさがわかる。
年6回となることをひとり親は歓迎
これらの世帯に、児童扶養手当の支給回数が増えることをどう思うか聞いてみた。
すると、なんと3分の2の保護者は「嬉しい」と答えたのである。
回答の自由記述欄には
・どうしても 1 ヶ月の月謝やいろいろ出るので 2 ヶ月に 1 回の方が心のゆとりが出て助かる
・家賃を預金から崩さずに払えるから
・一気にもらうと一気に使いやすいため
・まとめてもらうともらわない月のお金の使いかたが難しくなるから
・計画性がないため出来るだけこまめに支給していただける方が計画を立てやすい
などの声があった。
筆者が分類してみると、
● 家計の管理がやりやすくなる
● 生活がらくになる
● 4 カ月目の生活が厳しかったから
● 給食費や電気・ガス・通信費などの支払いは毎月だから
● 赤字が早く補える
というものだった。
また、『嬉しくない』と答えた人は2.9%と少なく、その理由はまとまったほうが家計管理しやすいという意見だった。
また、「どちらでもない」は30.9%で、
● 4 か月に 1 回の支給になれている
といつ入金されても家計管理ができる余裕のある人たちだろうと想像できる。
預貯金ゼロのひとり親世帯の暮らし
では、実際に、教育費にも困るひとり親世帯の暮らしというのはどんなものだろう。
インタビューした、4人の子どものいる関東甲信越に住むシングルマザーの暮らしはとても厳しかった。
パートで工場にフルタイムで9時から17時まで働いて得る賃金は時給が1000円で、13万円程度。社会保険などひいた手取りは約10万円。養育費は離婚後2年で減額となり、2年前に支払われなくなったため、コンビニのバイトを週2日、さらに臨時の日雇いの仕事をしてなんとか暮らしており、車検のときの費用が返せないでいた。子どもは高校と中学に進学するときに、このシングルマザーは市役所への相談、養育費の再度の取り立てをし、自治体の相談窓口から紹介されて新入学お祝い金も申し込んだ。
彼女は、2カ月に1回の支給になることを喜んでいた。4か月目の暮らしがとても苦しかったから、また突然の出費にも対応しやすくなるからと言っていた。
毎月の支払に追われている、シングルマザーの暮らしは様々な費用の支払いに追われる暮らしである。2カ月に1回の支給になると赤字を補填するために何カ月も待たねばならない間、ずっとストレスが続いているよりも早く赤字が補填できるのだ。
筆者もその気持ちはとてもよくわかる。
家計の収支に余裕がある人、預貯金がある人にとっては、手当がいつ支給になるかは、そんな大きなことではない。
しかし、預貯金が少ない世帯にとっては、臨時の支出は生活苦や滞納に結び付く。
年3回の支給から年6回の支給へ。それはこの世帯にとっては非常に多きな変化だろう。
まったく蓄えのない、臨時の出費に対応できないひとり親世帯の暮らしが、どれだけ大変なものかわたしたちは想像力を持たなければならない。
今回、国はこの声を聞き、制度を変えることを合意した。自治体はコンピューターシステムを変えねばならず、その事務費、人手もかなりのものだと聞いている。
4月、8月、12月に手当支給がない
では年6回の支給になるとどんな家計の波になるのだろうか。以下はその模式図である。
児童手当は年に3回の支給であるから、どうしても手当のない月が出てくる。
4月、8月、12月、いちばん物入りの時期に児童扶養手当も児童手当も支給がない。どう備えるのか。
これが大切になるだろう。
高校奨学給付金も前倒し支給に
予算は同じでも、手当や給付金はその支払い方によって生活困窮者の家計に与える影響が違う。そのことをもっと行政は考えていいだろうと思う。
就学援助は、入学準備金を、入学前に前倒し支給する自治体が増えてきた。でも、高校奨学給付金はまだである。同じ予算でもできることがある。
最後に。さきほどの調査では、当然だが、多くの世帯が「 毎月支給だとなおいい」と答えていた。
このことも、伝えたおきたいと思う。
参照 しんぐるまざあず・ふぉーらむの新入学お祝い金事業2019の様子
https://www.single-mama.com/topics/congrats2018report/