中谷選手に待望の今季1号!福永投手も好投でチーム10年ぶりの7連勝でした《5/11 阪神ファーム》
阪神ファームは11日からウエスタン・中日3連戦に臨んでいます。初戦は鳴尾浜で、12日と13日は和歌山県西牟婁郡の上富田スポーツセンター野球場での開催。よく考えたら交流試合はありましたけど、鳴尾浜での公式戦は4月19日のオリックス戦以来。かなり久しぶりだったんですね。
11日は先発の福永春吾投手が1回に失点するも、以降はしっかり立て直して好投!打線は5回に一挙6点を取って援護しています。始まりは中谷将大選手の、待ち焦がれた今季1号!そして俊足ルーキーコンビによる“挽回の”連続タイムリー(詳しくはのちほど)、とどめが北條史也選手で50日ぶりの第2号3ランでした。
2点差まで追い上げられながら逃げ切って、阪神は2008年(9月3日~20日)以来、10年ぶりとなる7連勝!6連勝も2014年以来なかったんですよね。これでチームは20勝で、もちろんリーグ一番乗り。さらに2016年6月21日以来の貯金6という記録も。
12日も勝って15年ぶりの8連勝!
と思ったら、きょう12日の中日戦も3対1で勝っちゃったんですね。才木浩人投手が先発で7回1失点、ついで地元・和歌山県西牟婁郡出身の岡本洋介投手が2イニングを抑え、3対1の勝利。これで8連勝です!出しかけた記事を保留し、また遡って記録を調べたら、なんと2003年以来15年ぶりのことでした。スポーツニッポン新聞社の記録を確認してもらったので間違いありません。でも懐かしい名前がたくさん出てきたので、この8連勝に関しては次の記事で書かせていただきます。
では先に、きょうは7連勝となった11日の試合詳細をご覧ください。
《ウエスタン公式戦》5月11日
阪神-中日 9回戦 (鳴尾浜)
中日 100 000 201 = 4
阪神 000 060 00X = 6
◆バッテリー
【阪神】○福永(2勝1敗)‐尾仲‐Sモレノ(0勝1敗5S) / 長坂
【中日】●大野雄(2勝2敗)(5回)-小熊(1回)-小川(1回)-浅尾(1回) / 木下拓-杉山(7回~)
◆本塁打 神:中谷1号ソロ、北條2号3ラン(大野雄)
中:松井佑1号ソロ(モレノ)
◆二塁打 中:モヤ、松井佑、友永
◆盗塁 神:島田(11)、北條(4)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]左:島田 (3-1-1 / 1-1 / 1 / 0) .268
2]遊:熊谷 (4-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .207
3]三:北條 (3-2-3 / 1-1 / 1 / 0) .220
4]右:板山 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .285
5]一:陽川 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .204
6]中:中谷 (4-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .195
7]指:小宮山 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .375
〃打指:緒方 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .200
〃打指:西田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .333
8]捕:長坂 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .264
9]二:森越 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .205
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
福永 7回 94球 (5-3-2 / 3-3 / 5.40) 148
尾仲 1回 17球 (1-0-0 / 0-0 / 1.72) 145
モレノ 1回 28球 (2-1-1 / 1-1 / 4.91) 150
《試合経過》※敬称略
福永は1回、ヒットと四球などで1死一、二塁として4番のモヤに右前タイムリーを浴び、先制を許しました。しかし2回、3回は三者凡退。4回は2死から松井佑に右前打されるも谷を初球で右飛に打ち取って、5回と6回は再び三者凡退と、ほぼ完ぺきに抑え込みます。
打線は大野雄に対し、1回は島田が四球を選んで二盗成功、しかし熊谷のバント失敗など後続も断たれて無得点。2回は三者凡退。3回に長坂がショートのエラーで出て、森越の右前打で無死一、二塁となり、今度は島田がバント失敗…。熊谷は三ゴロ併殺打で得点なし。4回に北條が四球を選びますが、また併殺でチャンスを広げられません。
ようやく5回、先頭の中谷がカウント2-2からの6球目、138キロの真っすぐをレフトへ。新井コーチの「これは行ったぞ!」という声がベンチから聞こえる大きな当たりは、中谷の今季1号!これで1対1となります。続く小宮山が中前打、長坂の打球はまたしてもショートのエラーを誘い、無死一、三塁。1死後に島田が右前へ勝ち越しタイムリー!熊谷も左前タイムリーで続きました。
そして、なおも1死一、二塁で北條。1ストライクからの2球目、これも141キロの真っすぐをレフトへ、第2号の3ランが飛び出して6対1とします。その後はリリーフ陣に抑えられ、6回と7回は三者凡退だった打線。8回に浅尾から北條が中前打して盗塁を決め、陽川の四球などで1死一、二塁としたものの追加点はなし。
一方、福永は7回に先頭のモヤに右中間越えの二塁打を浴び、続く松井佑も左翼線への二塁打で1点を返されます。谷の遊ゴロで松井佑を進め、四球で1死一、三塁。ここで高橋投手コーチがマウンドへ行って間を取りました。次の石垣が遊ゴロで併殺!と思ったら一塁はセーフ、この間に1人還ります。
6対3となって、8回は尾仲が登板。先頭の友永に左翼線二塁打されながら後続をしっかり断って無失点。1死三塁で渡辺が中飛を打ち上げますが、中谷が矢のようなバックホームを見せ、三塁走者は動かず。最後の9回はモレノで、いきなり先頭の松井佑に初球(150キロ)をレフトへホームラン…。これで2点差です。その後もヒットと四球はあったものの、三振と遊ゴロで締めて逃げ切りました。
試行錯誤を続ける中谷と北條に
試合後、約1時間で支度をして和歌山へバス移動するため、例によって慌ただしい取材でした。でも試合が早めに終わったので、みんな余裕があったような気もします。最初に矢野燿大監督の話からご紹介しましょう。
中谷選手の1号ホームランに「やっと出たねえ!えらい時間がかかったけど」と、まずは笑顔。「きのうから、見ている感じが変わってきた。打てるかな?というタイミングになってきている。きょうの凡打も、見逃している姿とか打球の飛んでいく方向とか、今までとは違うかな。ここから上がっていく可能性があるようなホームランかなと思う」
打率がなかなか2割にも届かない現状で「3割打てるに越したとはないけど、長打ってのが(中谷選手の)魅力だし。ただし三振かホームランか、ではね。率も増やしながらホームランになっていかないと」と矢野監督。「1軍では確実性が足りなくて外されていたところもあるので、長打も率も両方めざしていく。パワーは誰にも負けないんだから」
だからこそ、この一発で上昇気流に乗ってくれとの願いはありますね。何度も言われて、これが余計に本人を苦しめたのかもしれませんが、昨年は1軍で20本を打った中谷選手です。その魅力を生かす場を得るため、打率も上げていけますように。
矢野監督は続けて「北條も足の上げ方を変えたりして、ちょっとずつ打球方向がよくなってきた。きょうも対応できたホームランだったからね。1、2、3ガーンではなくて。それと、最後の1本がいい。ホームランだけで終わるのと全然違う。ホームランよりはシュアな二塁打が多く出るような選手になっていけば。安定したバッティング北條の持ち味。そういうのが増え始めた」と分析しました。
心技体の“心”も大事だと知る
次は福永投手について、矢野監督は「前回もよかった。最後をピシッと締めてくれるといいんだけどね。勝負にいった球をモヤに打たれたのは反省。でも(いいのが)2回続いたのは自信にしていい」という言葉でした。3回続いたらグッと本物に近づきます。
高橋建投手コーチも「(好投が)続いていますね。球の強さが前回から戻ってきている。きょうも、しっかりした投げっぷりだったし。かなり評価できます」とのこと。「立ち上がりと、7回に長打連続ですね。でもあそこで崩れなかったことが大きいと思います。7回の松井佑はゴロのヒットでしたが、モヤは…。いいバッターに打たれた2本は反省点です」と崩れて大量失点にならなかった部分と、さらに課題も挙げています。
では本人のコメントです。1日のソフトバンク戦に続いて今回も好投、何がよくなった?と聞かれ「メンタル。気持ちです」と答えました。球自体はキャンプからずっとよかったですもんね。「そうなんですよ~。これまで(登板中に)前の1球、次の1球をかなり考えていたんですが、“今の1球”ってのだけにフォーカスして、それを繰り返し、繰り返しやっています。ゲームの中で次のボールを考えたりするけど、あ~前の1球が…とか、次にどういう球を?とか考えるのは少なくなりました」
それに気づいたのも前回のソフトバンク戦だとか。「それで気持ちがだいぶ変わってきたと思う」。きっかけがあった?「4月は、かなりボールがいっているのに連打が止まらなくて。いろいろ考えた中で、ボールよりもっと大事なことがあるのでは、と思いました。技術以外のことは体も問題なかったし。心技体で考えたら、心やなと。それでこの前よかったので、きょうも」。自分を客観的に見られるのが福永投手の長所でもありますね。
「きょうは何とかゲームを作れて、よかったです。また次も続けられたら」と言い、最後に「4月はしっかり苦しんだ、その成果が出たかなと思います」と続けます。本当に、いいボールを投げていながらカンカン打たれる試合が結構ありました。心を鍛えて、1軍へ昨年のリベンジに行きましょう!
1号の中谷選手、2号の北條選手
続いて、今季1号ホームランの中谷選手。ですが…感想を聞くと「よかったです」、去り際に「頑張ります」、ふた言だけ。バスに乗る前、もう一度「よかったねえ!」と声をかけたら「はいっ!よかったです」と少しホッとしたような感じでした。打った138キロの球は「真っすぐです」、いい感触だった?「はい」。そして矢野監督が、凡打の内容がよくなったと話していたことを告げたら「そうです、そうです」と返事しています。
北條選手は3月22日の広島戦(由宇)で九里投手から打って以来、50日ぶりの今季2号。試合を振り返って「ホームランを打った後の打席を大事にしないと、と思っていました。ライト方向へのイメージを持っていた」と言います。ホームランについては「1打席目の真っすぐをとらえきれなかったので、次の打席、その次の打席ととらえられてよかったです」とのこと。矢野監督の評価もそこでしたね。
矢野監督が分析した、足の上げ方を変えてよくなったという点は「ノンステップ気味から徐々にやってきて、少し日にちが経って足を上げずに。今のところ、いい感じかなと思います」と本人も手応えありの様子です。左ピッチャーからあまり打てていなかったとか?「右バッターで左を打てなかったら使ってもらえないので、そこは気にしてやってきました。きょうをきっかけにしていけたら、いいと思います」
なお今季は鳴尾浜や甲子園での試合終了時、整列して挨拶をする際に“ヒーロースピーチ”を行います。誰がマイクを持つかは矢野監督が選定。11日は北條選手が「ファームは連勝中なので、あしたは上富田に全員集合でお願いします!」としゃべりました。前もって考えていたかと尋ねたら「考えてなかったです。福永かなと思っていたんで」と北條選手。ま、急に振られても何ら心配しなくていいキャラですけど。
バントの失敗を取り返した?
最後は、ルーキーコンビです。これまで打順が8番と9番、または9番と1番で並んだ試合は何度かあったものの、11日は初めて1番に島田海吏選手、2番に熊谷敬宥選手という並びになりました。そして仲良く送りバントを失敗し、仲良く連続タイムリーで挽回しています。
熊谷選手は「バント失敗した分、何とかしようと考えていたので。取り返せてよかった」と少しホッとした表情。この日は守備機会も多く(遊ゴロだけで7つ、他に二ゴロ併殺が1つ)、いい動きでした。「練習していることが少しずつできているかなと。きょうボールがたくさん飛んできて、エラーなしっていうのは大きいと思います」
開幕して最初は連発していたエラーも、この1か月はほぼ全試合にフル出場していて1つだけ。それと盗塁は現在リーグトップの19個で、いつ20台に乗るかも楽しみですよね。「ちょっと疲れがあるので」と言っていたけれど、そう言いながら走るタイプでしょう。
島田選手は、私が「バント…」と言いかけただけで「練習します!」と、かぶせ気味に返事が。実は9日のオリックス戦(舞洲)の4回にも無死一、二塁の場面でバントを決められず、結果はファーストライナーでした。これがなんと、なかなか見られないトリプルプレー(三重殺)になってしまったのです。それもあったのかな。
とはいえ9日は最後の2打席で連続ヒットを放っていますし、11日も次の打席にチャンスでタイムリーを放ったので少しは挽回できたのでは?と振ってみたのですが「全然取り返せていません」とキッパリ。ちなみに12日は島田選手が1番、熊谷選手が8番でした。島田選手は先制の犠飛に加え、ヒットも放っています。熊谷選手も1安打でした。
<掲載写真は筆者撮影>