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『あさが来た』が見せた夢の後に、リアルを叩きつける『とと姉ちゃん』

渥美志保映画ライター

いよいよ始まりました、『とと姉ちゃん』。「ディーンロス」から立ち直ったかと思ったら「新次郎ロス」に陥り、それを慰めるかのごとく登場した西島秀俊がアッという間に死ぬという第一週でした。朝ドラには翻弄されっぱなしです。

朝ドラ歴代最高視聴率を叩き出した前番組の『あさが来た』は、私も大好きで欠かさず見ていました。大阪きってのお金持ちの家に生まれてお金持ちのボンボンと結婚し、内では支えてくれる系二枚目・新次郎が、外では引っ張ってくれる系二枚目・五代さんが、それぞれに全面的に愛しバックアップをしてくれて、上司たる義理の父親は自分を見込んで仕事を教え任せてくれる――という現代でもまずありえない設定に、日本中の全女子が気持ちよくなったのは言うまでもありません。

でも実際の白岡新次郎(広岡信五郎)は友近演じるうめの位置にいた女性に子供産ませてたりします。『あさが来た』は現実とは少し違う、夢を描いたもの。いいんです、夢見るために作られるドラマもアリなんですから。

そんな番組の後を引き継ぐ『とと姉ちゃん』。今週の放送では死にそうな父親が「家族のために父親になれ」と長女に頼む、はい「とと姉ちゃん」誕生!というドラマの根本を決定する展開があり、そしてそれがほぼ事実だということを知り、私が死にそうになりました。そりゃあ時代はあるでしょうが、大の大人だって「そんなん言われても」って思うところ、とと姉ちゃん10歳です。

そしてもっと不安なのは、とと姉ちゃんの仕事上のパートナー(私生活のパートナーじゃありません、念のため)となる、唐沢寿明演じる花山伊佐次をどうすんのか、ってことです。この人、主人公のモデルとなった大橋鎭子さんに「仕事に打ち込むために結婚はしない」と誓わせたという人物です。そして実際、大橋さんは生涯結婚してないし……。

『あさが来た』で夢見せた後に、なんで「現実はこうじゃ!」と叩きつけてくるの、NHK。どうしてなのNHK。どうする気なのNHK。

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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