「カフェで仕事」文化のNYで挑戦する、ウィーワークの次なる野望とは
ニューヨーク発のシェアオフィス大手、ウィーワーク(WeWork)。2008年に日本初進出を果たし、現在東京、大阪、横浜、福岡の4都市、14拠点に拡大している(その数は、日々増加中)。
ウィーワークとは?
私がウィーワークのニューヨーク本社を取材した、日本進出が発表される直前(2017年)の記事。『ライフハッカー』より
ソフトバンクの出資で世界展開を加速
ウィーワークは、ソフトバンクグループから20億ドル(約2200億円)の追加出資を受けることになり、同社や傘下グループからの出資総額は日本円で1兆円を超え、企業価値として470億ドル(2019年1月末現在、約5兆1500億円相当)が見込まれている。
現在ウィーワークは、日本を含む世界27ヵ国に400以上の拠点を持ち、会員数は40万人以上。
また同社は、シェアオフィス(以下コワーキングスペース)事業のみならず、住まいをシェアするコミュニティのウィーリブ(WeLive)、教育関連コミュニティのウィーグロウ(WeGrow)など、ウィー(We)のエコスシテムを恐ろしいほどの勢いで「増殖」中だ。
そんな同社は1月、ウィーワークからザ・ウィーカンパニー(The We Company)に社名変更し、リブランディングとして新たな施策を展開。その新規事業の一つが、メイド・バイ・ウィー(Made by We)というもの。1月22日、本拠地ニューヨークにオープンした。
メイド・バイ・ウィーの写真を見る
メイド・バイ・ウィーはウィーワークと何が違う?
(1)コワーキングスペースは、30分の利用から使えるオンディマンド
ウィーワークの「共用スペース」のように専用デスクはなく、利用時間に応じて支払う。予約なしでも利用可。利用料金は30分6ドルで、それ以降は1分ごとに20セントが加算される。
1日利用の場合は予約すると、その日だけ指定される作業スペースをあてがわれ、8amから6pmまで利用可。利用料金は65ドル(ウィーワーク会員は50ドル)。
上記ともに、ウェブサイトから事前にアカウントを作れば、ウィーワークのメンバーでなくても誰でも必要に応じて利用できる。会費や年会費などは不要。
料金の詳細はこちら。
(2)コワーキングスペースにリテールショップを併設
リテールショップが設けられ、ザ・ウィーカンパニーに属する会員が制作、販売する商品を幅広く取り扱う。一部のWeWorkに設置されているWeMRKT(商品棚)の発展系のようなもの。
ウィーワークと変わらないもの:
カフェスペース、イベントスペース(着席で96名収容可)、会議室(6部屋)、電話用の個室(10ブース)が使える。
このように、メイド・バイ・ウィーはウィーワークと比べて利用料金が廉価で、いつでも誰でも利用できる気軽さから、ウィーワークは手が届かないと感じたり、単発利用したいと思っているスタートアップ、創業まもない会社、クリエイター、フリーランス、リモートワーカー、出張者などからのお試し需要が見込まれている。またワークプレースから目の届く場所に商品を陳列、販売することで、相乗効果も期待されている。
巨大化するウィー(We)のエコシステムの中で「つながる」
ニューヨークでは大手スターバックスから個人経営のカフェまで、無料のWifiを完備していて、もはやコーヒーを飲む場、憩いの場としての本来の役割以上に「仕事をする場」として人々に利用されている。
(ラップトップの使用を歓迎しないカフェオーナーも中にはいるのだが、コンセントを塞いだり張り紙をしたりしているので、意向がわかりやすい)
とにかく市内のほとんどのカフェではコーヒー代だけで仕事ができるのだから、わざわざ料金を支払ってまでメイド・バイ・ウィーを利用する価値があるのかという疑問は、現地で聞こえなくもない。
そのような声を遮るように、ウェブサイトでは「コーヒーを飲みに気軽に立ち寄って雰囲気を見てください。もちろんアカウント作成は不要です」と書かれている。またオープニングに先駆け、同社パートナーのジュリー・ライス氏からこのようにコメントが出ている。
「メイド・バイ・ウィーは、世界中にいるウィーコミュニティの利用者同士を『繋げる』ことを念頭に置いて創業しました」
以前、私がウィーワークの本社を訪れた際も、取材に対応してくれた広報スタッフは、「メンバー同士のネットワークが強固である」ことが、同社の特徴だと強調しているのが印象的だった。(私も2014年から1年半ほどウィーワークを利用しており、その「結束力」は体感済みだ)
「The We Company」という新社名からも「私たち」、つまりメンバー同士が繋がることへのこだわりを感じ取れる。「世界中にいる40万人のWe」と繋がる第一歩として、メイド・バイ・ウィーがどのように浸透していくか、これから注目したい。
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止