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「基地反対運動に公共性ない」!?反対派市民テント撤去か否か―内閣府のゴリ押しで緊迫する沖縄・辺野古

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
基地反対派テントの撤去を求めに来た内閣府職員ら(手前の3人)

「オール沖縄」で基地反対派の知事が就任、先の衆院選でも「基地反対」を明確にした野党が全勝した沖縄。こうした沖縄の民意にもかかわらず、安倍政権は辺野古沖(同県名護市)への基地建設を強行しようとし、基地反対派の市民への圧力を強めている。現在問題となっている新たな基地建設は、名護市にある米軍基地「キャンプ・シュワブ」の沖合に計画される。そのため、基地反対派の住民達は、キャンプ・シュワブのゲート前にテントを設営し、抗議の座り込みを続けている。だが、内閣府の沖縄総合事務局、防衛省の沖縄防衛局は、市民側にテントの撤去を要求。機動隊による強制撤去も辞さない構えだ。緊張が高まっている現場を取材した。

○「基地反対運動に公共性ない」沖縄統合事務局の担当者が暴言

筆者が現地入りした26日は、沖縄総合事務局と沖縄防衛局が求めたテント撤去の期限日だった。市民側は、「機動隊による強制撤去は避けたい」として、ゲート前で234日間続けてきた座り込みの拠点となるテントを、国道を挟んだ向かい側の緑地に引っ越した。だが、同日午後、再び沖縄総合事務局・北部国道事務所の大城純一副所長が訪れ、再度テントの撤去を「指導」した。「許可無くテントを国道沿いの緑地に設営した」と撤去理由を語る大城副所長に筆者が「申請したら許可するのか?」と質問すると「申請があっても許可しない。(米軍基地反対運動には)公共性がない」と突っぱねる。沖縄県民の8割が基地反対という民意や、憲法に保証された「表現・集会の自由」を全く無視した態度はいかがなものか。キャンプ・シュワブには、数十人の機動隊員達が護送車と共に集結。正に一触即発の状況だ。座り込みを続ける市民達のリーダーの一人、沖縄平和運動センターの山城博治さんは「歩道も確保しているし、米軍基地フェンスに垂れ幕などを付けないようにしているなど、(沖縄総合事務局に)要求された通りにしている。それでも『撤去』だと言ってくるのでは、交渉にならない」と憤る。「沖縄総合事務局がこんなに強硬な姿勢をとってくることは今までなかった。恐らく、安倍政権から『徹底的にやれ』相当強く言われたのではないか」(山城さん)。

キャンプ・シュワブ前の抗議テントを守ろうとする人々
キャンプ・シュワブ前の抗議テントを守ろうとする人々

○横行する機動隊員、米兵、警備会社社員の暴挙

あくまで沖縄の民意を気にかけない国側の態度に、ゲート前座り込み参加者達も憤るが、山城さんは「沖縄県民の理解があっての活動だ」と「今日の夜あたり、機動隊員が襲撃してくるかも知れませんが、絶対に殴り合いにはならないようにして下さい」と非暴力の活動に徹するように訴えた。こうした呼びかけの背景には、機動隊員が市民を挑発し、スキあらば逮捕しようとしている問題がある。座り込みに参加している男性は「機動隊員がすぐ近づいてきて『ほらほら、殴れよ、殴ってみろよ』と煽ったりするんですよ」と筆者に話す。問題は機動隊員だけでなく、先日は米軍兵士もフェンス越しに拳銃を構え、市民側を挑発したという。今月22日には、米軍の雇った警備会社社員らが数人がかりで、山城さんを背後から引き倒し、両足を引っ張るかたちで数十メートル引きずってキャンプ・シュワブ内に不当拘束した。山城さんは身柄を名護署に引き渡され、さらに那覇地検に引き渡され、翌23日に解放されたものの、「これまで基地反対運動をしていて、あんな乱暴なやられ方をしたのは初めて。頭とか打ちどころが悪かったら危なかったですね」と苦笑する。

テント前で報告する山城博治・沖縄平和運動センター議長
テント前で報告する山城博治・沖縄平和運動センター議長

○カギとなる翁長知事の動向

26日は、口頭での「指導」と「テント等の設営禁止」の立て札を立てるだけに終わったものの、国側と沖縄側のにらみ合いは続く。今後のカギとなるのは、翁長雄志・沖縄県知事の動向だ。現在、国側が辺野古沖で行っている米軍新基地の建設のための活動の合法性は、知事の許可を必要とする。これに対し、沖縄県は、辺野古沖でのボーリング調査のためのコンクリートブロック投入でサンゴが粉砕されている問題について調査中であり、調査がまとめられた段階で、仲井真前沖縄県知事が認めた辺野古沖の埋め立て許可を、翁長知事が取り消すと観られている。つまり、辺野古での米軍新基地建設は違法となるわけだ。山城さんは「あと一週間もすれば、状況は大きく変わるでしょう」と語る。「沖縄世論を盛り立てていくためにも、頑張り続けます」(山城さん)。沖縄の人々が直面しているのは安倍政権の横暴だ。ならば、辺野古での出来事も「ローカルニュース」ではなく、日本全体の問題として考えるべきではないか。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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