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【年度内六冠ロード】藤井聡太竜王(19)棋王初挑戦に向けて好発進! 中川大輔八段(53)に勝利

松本博文将棋ライター

 7月8日。東京・将棋会館において第48期棋王戦コナミグループ杯・挑戦者決定トーナメント2回戦▲中川大輔八段(53歳)-△藤井聡太竜王(19歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時24分に終局。結果は116手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 藤井竜王は3回戦で久保利明九段と対戦します。

藤井「棋王戦ではなかなかこれまで上に進めていないので、少しでも上に進めるようにがんばりたいと思います」

 藤井竜王の今年度成績は7勝3敗となりました。

藤井竜王、いやな流れを断ち切る

 中川八段は2012年以来の本戦トーナメント参加です。そこで当たったのが初対戦の藤井竜王でした。

中川「うーん、まあ、宝くじ当たったようなもんですよね(笑)。せっかく教われるからね、ちょっと気合入れて行ったんですけども」

 振り駒は「と」が3枚出て、中川八段先手。戦型は相掛かりとなりました。

藤井「ちょっと手が広い局面が続いて。どういう構想で指すのか、難しかったですけれども」「ちょっと序盤から一手一手難しくて。考えてもなかなかわからない局面が多かったなと思います」

中川「いやあ、全然わかんなかったですね」

 30手目。藤井竜王は自陣の銀を上がります。これが早くも目をひく一手でした。

中川「(30手目)△4二銀はちょっと珍しい手で、昔はなかった手でしたよね。△5三銀、△6四銀とこっち(盤面左側)に使ってきますからね。だから(▲2二角成と)角を換えて△同金の格好がわるい形にならないんですよね。それがちょっと新しい感覚で。だから私の方も角の交換をがまんしてね。単に(33手目)▲4五銀と行って。少し局面を穏やかっていうか」

 中川八段は腰掛銀を五段目に進め、揺さぶりをかけます。藤井竜王も慎重に応じて戦いは起こらず、長い序盤の駆け引きが続きました。

 午後遅く、ようやく本格的に駒がぶつかると、まずは藤井竜王がポイントをあげました。

藤井「(62手目)△3六歩から△6四角としたあたりは流れはいいのかなと思ったんですけど。ただ、そうですね、ちょっとそのあと、攻め込まれる展開になってしまって。そのあたり指す手がうまくいってないのかなと思っていました」

 藤井竜王好調に見えましたが、そこから中川八段が盛り返します。「継ぎ桂」で王手金取りをかけたあたりは、流れを引き寄せたかにも見えました。

中川「こっちはしょうがなく・・・。(相手の)歩切れを突いてね、しょうがなくやってるところがあるんで。ちょっと余されるかな、とも思ったんですけど、どうやって余されるのか、ちょっとわからなかったんですけども」

 コンピュータ将棋ソフトが示す評価値も形勢ほぼ互角にまで戻ります。そこで再び藤井竜王が突き放していきました。

中川「冷静に指されて・・・。どうも、届かないですね。(88手目△3七歩成に▲4九金と引いたところで)攻めていく手もあったかもしれないけど、やっぱりちょっと厳しいでしょうね。(△4八とで金を)こう取られた格好がね。ちょっとやっぱり(藤井玉は)広いんですよね、追っかけていくときに。9二までいって、あの(8一の)飛車が利いてて、絶対詰まないですからね。うーん、絶対詰まない格好なんで。届かないかなと思いながらやってましたね」

藤井「最後(96手目)△4六馬と引いたあたりで、少し、一手勝てそうかなと思いました」

 藤井竜王は自玉を広い左辺へと逃して安全にし、相手玉を狭い端に追い込む正確な寄せ。最後はいつもながらにきれいに詰ませて、勝利を飾りました。

中川「まあ、こんなもんでしょう。うん、振り駒で先手になったんで、好きなように指させていただいたんで。そういった意味ではね、力は出し切ったかなと。負けましたけども」

 年度内で六冠達成の可能性を残した藤井竜王。渡辺明棋王への挑戦権獲得まで、最短であと5勝です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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