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パッキャオの67戦目

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
HollywoodにあるWildcard Gymでフレディ・ローチと(写真:ロイター/アフロ)

何度か引退を口にしながらも、リングに戻ってきたマニー・パッキャオ。

彼は来月、38歳となる。

オスカー・デラホーヤを完膚なきまでに叩きのめしたのは、2008年12月6日のことだった。当時デラホーヤは35歳。6歳下のPacmanに食われ、いや引導を渡され、リングを去った。

マイク・タイソンがいい例だが、瞬発力が武器のファイターはステップインのスピードがなくなると、ボロボロになる。

パッキャオは衰えながらも、スタイルを変えて生き延びてきた。おそらく、その源となっているのは、"飢え"だろう。それも並みの飢え方ではない。

アメリカに進出してからずっとBig Matchで参謀を務めて来たフレディ・ローチは言う。

「マニーの故郷を一緒に訪ねたことがあるけれど、怖くて仕方なかった。治安が悪いとかいうレベルじゃない。ボディーガードを30名くらいつけてもらったよ。

台風などの自然災害も多いし、幼い頃から彼は生活の為に山を越えて、バケツに水を汲みに行ったそうだ。食べるものも無く、犬を食料にしたことさえあったってさ」

ファーストラウンドから試合終了まで、絶対に獲物をKOしてやろうとするスタイルは、生い立ちに影響されているのかもしれない。Pacmanは言う。

「望んだものは、簡単に手に入らない」

傍目には、望んだ物のすべてを手にしたかに見えるパッキャオ。67戦目は何を求めて闘うのか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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