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進路相談2・センター試験に失敗!浪人した方がいい?

石渡嶺司大学ジャーナリスト

センター試験に失敗しました…。志望校は東京農工大工学部だったのですが、確実に受かりそうなのが山形大工学部か室蘭工業大工学部、北見工業大工学部などです。偏差値の低い大学からは就職も悪いと聞いています。理工系なので大学院には行くつもりですが、浪人するかどうかで親と喧嘩している最中です。何か、アドバイスをお願いします。

まーた、学歴コンプとか言われてしまう(苦笑)

偏差値ネタを取り上げるたびに「東洋大社会学部出身のくせに偉そうに」「しょせん、学歴コンプ」とネットで叩かれる石渡です。こんにちは。

しょーがねーじゃねーか、大学関連の記事・本を書いていれば偏差値ネタも手を出すことになるわけだし、どうせどう書いたって叩かれるわけだし(…誰に対して言っているんだ、こいつは)。

…、ごほん。

えー、いただいたご質問のポイントは2点。

「偏差値の低い大学からの就職は悪そう」

「浪人した方がいいかどうか」

それぞれ順番に行きます。

工学系統は研究分野の一致が最優先

まず1点目の「偏差値の低い大学からの就職は悪そう」から。

結論から言えば気にする必要はありません。

工学部系統の就活は技術職・研究職か総合職のどちらか。

研究職・技術職だと、大学での研究内容をそれなりに生かせます。

一方、総合職は営業から総務まで幅広い範囲の部署で働きます。この場合、大学での研究内容は無関係です。

工学部系統で国公立大だと大体の学生は大学院に進学し、修士で就職することになります。

この大学院進学という前提があれば、研究職・技術職については大学名や学部の偏差値とは無関係に、まず研究内容が企業の求める内容かどうか、これが第一条件です。

仮に、企業が求めていない研究分野で大学の偏差値が高かったとしても、研究分野が合っていないという時点でアウト。選考に参加できません。

高偏差値でも対象外なら「ごめんね」

以前、象徴的な事例に遭遇したことがあります。

某有名メーカー・採用担当者と一緒に就活イベントをやってその後、飲みに行ったときのことです。

懇親会に参加した名古屋大の理学部の院生が

「技術職・研究職を考えているんですけど」

と話しかけてきました。ところが、

「理学だよね?うーん、うちの研究内容と合わないから技術職も研究職も無理。ごめんね。総合職なら受け付けるけど」

代々木ゼミナールの偏差値で名古屋大理学部は62とかなりの難関。さすが旧帝大です。

ところが、このメーカーは

「ごめんね」

の一言でおしまいでした。

これがそのメーカーの求める機械工の学生だと、おそらく下にも置かない扱いだったことでしょう。

この名古屋大理学部の院生もわかっていてあえて聞いたらしく、お断りの一言にも

「そうですよね」

と応じていました。

偏差値50割れの山形大がすごい理由

このイベントのしばらく後に山形大工学部で講演する機会がありました。

この山形大工学部、学部の偏差値で言えば46~49と決して高いわけではありません。

先ほどご紹介した名古屋大理学部に比べて13~16ポイントもの差があります。

ところが。

院生についてみていくと、就職状況は悪くありません。

名古屋大理学部の院生に対して

「ごめんね」

と断ったメーカーA社とほぼ同じ規模のメーカーも就職先としてあります。

これはどうしてでしょうか?

理由は簡単です。

企業が求める研究内容に合っていたからです。

「低偏差値=就職が悪い」と言われる不思議

山形大に限らず、他の国公立大工学部でも事情は同じです。

こうした、国公立大工学部に行くと学生のパターンが決まっています。

1~2年生:うわー、偏差値低すぎ~。センターで失敗した。もう人生、おしまいだ~

3~4年生:なんか、先輩を見ていると案外行けるな…

修士2年終了時:就活、大変だったけど、受験直後に思っていたほどにはひどくなかったね

最近も、こういう記事がありました。

多額ローン、就職先はブラック…Fランク大学卒業生の厳しい現実〜なぜ入学者減らない?

こういう大学があることは否定はしません。

しかし、国公立大工学部系統でそこまでひどいか、と言えばそんなことない、と自信を持って言えます。

では、なぜ、「低偏差値=就活が悪い」と言われ続けるのでしょうか?

この理由は書き手の出身学部、取材先です。

私も含めて、就活関連の記事・書籍の書き手は文系学部卒業者(石渡は東洋大社会学部)がほとんどです。

そして、取材内容や想定読者も文系学部を基本としています。

私もそうした部分がなかったとは否定できません。

が、それにしても、文系偏重の話を就活全般の話に置き換えていった結果、イメージで一番損をすることになったのが国公立大工学部系統です。

話をご質問のポイントに戻します。

1番目の「偏差値の低い大学からの就職は悪そう」、

これについては、上記に書いたような理由で、それほど悪くないし、大学院まで行く前提なら、「悪そう」どころではない、とお伝えできるか、と思います。

浪人の損得勘定、目的を整理

2番目の「浪人した方がいいかどうか」

これは、1番目の「低偏差値大=就活が悪そう」がそもそも違います。

なので、

「だったら山形大(あるいは北見工業大)でもいいか」

となるかもしれません。

まあ、それなら無理に浪人しなくてもいいですね、で、おしまいです。

しかし、それでも浪人した方がいいかも、と思われるかもしれないのでもう少し書いていきます。

浪人する目的は、

その1:浪人して難関大に入った方が就活で有利になりそう

その2:浪人して、どうしても研究したい分野や師事したい教員のいる大学に行きたい

その3:現役での大学受験の失敗をリベンジしたい

まあ、この3つくらいでしょうか。

ついでながら、浪人のデメリットとしてよく言われるのは、

その1:浪人すると、就活で不利になる

その2:大学受験に時間を費やすなんてムダ。それよりは他のことに時間を使った方がいい

ま、こんなところでしょうか。

では、浪人の目的から。

その1は国公立大工学部系統ならそれほど不利にならないことは先ほど書いた通りです。

その2は、そこまで目的がはっきりしているなら、浪人する意味はある、と言えるでしょう。

ただし、学科や分野で言えば、偏差値が多少落ちる大学であっても、実は似たような学科・分野を持っている大学が結構あります。

大学のサイトなどを確認のうえで、似たような研究ができるかどうか、検討してみてください。

それから学部と大学院を変えるというルートだってあります。

その3は、まあ感情論ですね。

似たようなところだと、

「同級生の××に負けたくない」

とか。

この感情論、浪人した私はよくわかります。

わかるんですが、この感情論だけで保護者に予備校の学費等の負担を求める根拠になりうるか、というと、ちょっと厳しいです。

リベンジとか同級生に負けたくない、と言うのであれば、大学に入ってからも勉強をして好成績を収めるとか、そういうそういう方向性だってあるわけです。

それを大学受験にのみ限定してしまうのは、保護者の方の理解はなかなか得にくいかな、と。

浪人のデメリットは?

一方のデメリット(と言われているもの)も見ていきましょう。

その1の「浪人すると、就活で不利になる」

これは40年以上前の俗説です。女子学生だと20年前くらいまでは言われていましたが、今は浪人・留年合わせて2~3年くらいならセーフ。

その2「大学受験に時間を費やすなんてムダ。それよりは他のことに時間を使った方がいい」は浪人経験者である私からすれば複雑なところ。

1年回り道をするくらいならすぐ大学に入った方がいいという意見もわかりますし、

回り道をした方がいい人生経験になる、という意見も一理あります。

私は大学受験で2浪しまして、親からすればいい迷惑だったでしょうけど、まあ、いい経験だったなと思います。

ただ、この浪人してよかった、という話、しょせんは後付けなんですよねえ。

結論:目的と感情の整理を親子で

というわけで、結論。

就職での損得勘定を考えれば浪人する意味はあまりありません。

現役合格できそうなところで手を打つのが妥当でしょう。

それでもなお浪人を、ということであれば保護者の方とよく話し合ってください。

その場合、なぜ浪人をするのか、目的と感情をきちんと整理しながら検討してみてください。

おまけ:山形・室蘭・北見、どこが楽しい?

ついでながら、学生生活でどこが楽しそうか、というのを著者周辺でヒアリングしてみました。

あくまでも著者周辺でそれぞれ偏見・独断が入っています。

現状と異なる場合は現状を優先します(不動産屋的決まり文句)

●山形支持(大学所在地は米沢市)

・米沢という街はコンパクトにまとまっていて便利

・観光スポットなどもあって楽しいですよ

・米沢で足りないものがあっても仙台・山形が近い

・東京への就活を考えればどう考えても米沢

・牛肉うまいっすよ

・意味もなく芋煮会をやるのが楽しい

県立米沢女子短大があるから、女の子の友達ができやすい

●山形不支持

・東北独特の雰囲気でなんか暗い

・「~です」と言えばいいものをなんで、「~でした」と過去形で言うんだ?

・女子短大が近くと言っても、そう簡単に仲良くなれるわけがない

・仲良くなれても、どうせ2年で卒業するか他大に編入するか、どちらにしても別れることになる

●室蘭支持

・札幌に近い。特急で1.5時間程度。北見などより全然近い(4.5時間程度)

・新千歳空港に近いので首都圏での就活もしやすい

・太平洋沿いなのでそれほど雪害などがひどくない

・登別温泉、洞爺湖、ニセコなど遊ぶスポットはいくらでも

●室蘭不支持

・製鉄産業が看板だったのに絶不調

・北海道の中でも暗い雰囲気。過去にはこういう事件

・観光スポットはともかく、そんなに遊ぶところないような

●北見支持

・笑っちゃうほど何もないけど、大自然は満喫できる

・オホーツク海に近くて、海の幸は安くておいしい

・農作物もふくめ、ご飯がおいしい

・何もないけど、まあこういうところで4年間過ごすのもいいかな、と

・東京へも女満別空港からならすぐ。言うほど不便ではない

●北見不支持

・本当に10万都市か、と思うくらい何もない

・札幌まで電車で4.5時間。

1・2月の最高気温が+にならないほど寒い。

・若者がそもそも少ないので面白くもなんともないですよ

…。なんか、色々ありますが、各自でご判断を。

※進路・教育関連の記事については以下の記事もどうぞ

センター試験受験で得する職業

進路相談1・親が勧める福祉系学部に進学するかどうか

英検2級で学費タダの大学~現代大学奨学金事情

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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