【川越市】設計図や釘は必要ない? 川越まつりの山車は、どのように組み立てられるのか
川越まつり会館の駐車場で、川越まつりの山車の組み立て現場に運よく遭遇。中々、見る機会がない貴重な山車の組み立て作業を見学させていただきました。
今回は、川越まつりの山車がどのようにして組み立てられるのかレポートします。
「山王の山車」
組み立てていた山車は、元町二丁目の「山王の山車」。人形は山王の猿神をあらわし、明治時代に制作された三ツ車が特徴の山車。川越の山車は四輪がほとんどですが、三輪の山車が三台存在し「山王の山車」は、その中の貴重な一台です。
設計図も釘もいらない
山車の周りには、沢山の人が作業をしています。組み立ては、町公認の鳶(職方)が担当しますが、山車を持っている町の人(町方)も声を掛け合い協力して一緒に組み立てていきます。
山車は200種類以上の部材から出来ており、釘を一本も使わず、はめ込み式で組み立てていくそうです。組み立てていく部材は、予めブルーシートの上にはめ込む順番通り並べます。
1つ1つ組み立てるので非常に手間がかかるのですが、不思議なことに誰も設計図を見ている人はいません。設計図なしでも声をかけながら、手際よく組み立てていきます。
では、設計図なしでなぜ200種類以上の部材を組み立てていけるのでしょうか?
「部材には1つ1つ番号が記されているから、ただ順番通り組み立てるだけだよ。」
と町の人は、いとも簡単に言うのですが職方や町方の経験値があってこそなせる技です。
釘も使わず、設計図もなく声をかけながら組み立てていくなんて、本当に驚きです!
段々と山車の形状が出来上がり山車の中心部は人形がせりあがる仕組み。山車内部は、人がギリギリ立てるほどのスペースで非常に狭いです。
さすが職方は、身のこなしが機敏で軽やか。町方も下から見守り、組み立ての順番や位置などを助言していきます。
美しい刺繍が施された幕を張る準備をし、山車の下から上の職方に手渡します。
普段は既に出来上がっている絢爛豪華な山車しか見たことがなく、このような作業を経て山車を装飾していくんですね。
上の幕を張り終えたらいよいよ、人形の登場です。どのように人形を上げていくのか興味津々で見ていたら、人形をひょいっと持ち上げ、上まで流れるように運んでいます。
大切な人形を落とさぬよう、この時ばかりは緊張が走ります。無事に人形が、山車の上にあがり一安心。
山車の組み立ては、専門の職方だけが担当すると勝手に想像していましたが、作業現場を見ると町方と職方の共同作業で組み立てており一体感が感じられました。
その皆で協力している一体感が、見ていてとても素敵でカッコいいんです!
次の作業は、大枠の幕張。段々と豪華な山車の姿が見えてきます。順番通りに作業していても、はめ込むのにコツがいる工程もあり、時には何度もやり直し時間を要することもあります。
幕を張り終えると山車の組み立ては、ほぼ完成に近づいてきました。
三輪の山車は四輪の山車より重量が軽く、およそ3トン。山車を動かすときには、道具を一切使わず人力で動かしていきます。息の合った掛け声と共に一気に持ち上げます!
ちなみに川越まつりでは、山車を曳く際の掛け声は「そーれい」と言います。
最後に人形を山車の上に出して、装飾品を取り付けます。美しい人形が、山車の上に見えるとまた一段と豪華で気品を感じます。本当に美しい山車で、見てて「うっとり」。
今回の作業は、ここまで。細かい装飾品は後日取り付けが行われるそうです。組み立て作業に要した時間は、およそ6~7時間。
私たちがお祭りで見る絢爛豪華な山車は、このように町方と職方の共同作業で組み立てていくのです。初めて拝見させていただき、とても感動しました。貴重な体験に感謝!
私の町は山車を保有しておらず川越まつりの時期には、山車を持っている華やかな町に憧れを感じます。今回の組み立て作業を見て山車を保有している町方の華やかさだけではない大きな責任を感じました。
・伝統ある山車の保存していく責任
・まつりで山車を安全に巡行させる責任
・技術や文化を継承していく責任
元町二丁目に限らず山車を保有している町の人々は、これらの責任を担っているのです。
私たちが川越まつりを楽しめるのも山車を保持している町の人々の努力のおかげだとあらためて感謝したいです。
思いがけず元町二丁目の山車の組み立てを見学することができ、山車を組み立てる工程を知ることができました。
今回の川越まつりでは、町方や職方の想いが詰まった山車を新たな視点で楽しみたいです。
いよいよ、10月15・16日は、待ちに待った「川越まつり」。今年は、29台すべての山車が見れる貴重な年です。三年ぶりの山車の巡行をみんなで楽しみたいですね!
どうか、雨が降らずに沢山の山車が見れますように!