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テレ朝・黒柳徹子の『トットちゃん!』が、NHK朝ドラ再放送に2分30秒も食い込むようになった理由

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
『トットちゃん!』の台本は週ごとに表紙の色が違ってカラフル(撮影:木俣 冬)

最近の『トットちゃん!』が少し違う

黒柳徹子を主人公にした、昼の帯ドラマ『トットちゃん!』が12月22日(金)に最終回を迎える。

「あらま」という黒柳徹子(清野菜名)の口癖がいつの間にか口をつくようになってきていたところでお別れなのは、目も口も寂しい。

これまで語られてこなかった若き日の黒柳徹子の恋愛秘話を中心にしながら、戦争をはさんだ昭和の物語を、メッセージ性もこもった、しっかりした脚本で描いた『トットちゃん!』。毎日15分の連続ドラマだったため、NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)以上に朝ドラのようだという視聴者の声もあがるほどだった。

最近の朝ドラは、実験的なことをやることもあり、オーソドックスなものを求める視聴者には、『トットちゃん!』のほうが落ち着くのだろう。

朝ドラと昼の帯ドラマ、15分のドラマ2作を比べながら見るのが楽しくて、時間があれば、朝起きて、朝ドラを見て、昼は『徹子の部屋』『トットちゃん!』、朝ドラ再放送と続けて見ていたところ、最近、ある変化に気付いた。

前はかぶらなかったのに朝ドラの再放送に2分30秒重なってる

あらま。

『トットちゃん!』の本編から続く次回予告を見てからチャンネルを替えると、朝ドラの話がだいぶ進んでしまっている。

以前は、本編が終わるとCMになるので、そこでチャンネル変えると、ちょっとだけ頭が削られているだけだったのだが……。

いつから変わったのだろうと思って遡ると、11月27日(月)の41話、全体の3分の2が過ぎた時期だった。

『トットちゃん!』の本編が長くなったわけではない。

以前は本編に入らなかったCMが入るようになったぶん、本編の放送終了時間が遅くなったうえ、さらに本編後にすぐ予告が入るようになり、そこまで見ると、2分30秒ほど朝ドラに食い込んでしまうのだ。

これはまるで、現在、視聴率的に一人勝ち状態、もうすぐ100作の歴史ある朝ドラに対して、注目度も内容も追随しそうな勢いがある、新規シリーズ・昼の帯ドラマの、強気な姿勢にも思えてくるではないか。

昼の帯ドラマの第一作、倉本聰の『やすらぎの郷』からずっと、CMなしで15分本編を放送していた昼の帯ドラマ劇場のフォーマットがなぜ変わったのか。

服部宣之プロデューサーに聞いてみた。

放送フォーマットはこれからも試行錯誤していく

「本編にCMを入れずに15分間放送することは、『やすらぎの郷』をやるにあたっての倉本聰さんと制作スタッフとの構想のひとつでした。『トットちゃん!』もそれを引き継ぎましたが、途中でCMを入れたら視聴動向がどう変わるか試してみようと考えました。へたしたら、中に2分以上CMを入れることで、視聴者がほかのチャンネルに変えてしまう危険性もありましたが、いざやってみたら、変わらなかったんです。逆に、本編のあとに予告編が続くことで、本編の余韻と、次回視聴の興味をもってもらうことができた気がします」

帯ドラマ劇場は、元々あった『ワイド!スクランブル第一部』『徹子の部屋』『ワイド!スクランブル第二部』のフォーマットに、異例な形で新設された枠だ。

服部Pは「新たに引っ越してきた帯ドラマがどうしたらよりよくご近所づきあいできるか。三位一体で視聴してもらえることを考えている」と語る。

裏番組は生放送のワイドショーばかりで、CMの入り方も含めて内容がフレキシブルだからこそ、新枠の昼の帯ドラマにはまだまだ試行錯誤は続く。18年1月からはじまる3作目の『越路吹雪物語』はどんなフォーマットになるのか現在検討中だ。

すべては視聴者を逃さないために

テレビ番組制作には、中身以外の仕掛けも重要だ。

テレビ番組は、CMの入り方や、番組と番組のつなぎ方を常に試行錯誤している。

『徹子の部屋』からCM等を入れずに帯ドラマをはじめているのは、視聴者を逃さないため。他局でも、『マツコの知らない世界』など、視聴率の高い番組からすぐに次の番組をはじめる手法は行われている。

昼の帯ドラマに、朝ドラらしさを感じるのが、本編がCMで分断されていないことも要因のひとつであったかもしれない。

そのフォーマットが変わった『トットちゃん!』41話は、ちょうど、テレビジョンの華やかな時代が幕を開けて、トットちゃんがテレビで活躍するエピソードがはじまるところだったから、テレビ制作の工夫のひとつであるフォーマット変更を、テレビ業界編ともいえるタイミングに合わせたのか? と服部Pに聞くと「それは関係ないです」とのこと。

とはいえ、『トットちゃん!』では、そういうふうにドラマの端々から深読みをしてくれる視聴者が多く、嬉しかったと続けた。

「皆さんに愛されるドラマが作れたこと、それは黒柳徹子さんが愛されているからで、そんな徹子さんのドラマを毎日の連続ドラマにすることができて幸せでした。最後まで楽しんでいただきたいし、最終回から見ていただいても間に合います!」と服部P。

『トットちゃん!』では、城田優演じるハーフのピアニスト・カール・祐介・ケルナーと徹子の遠距離恋愛というロマンティックな展開も楽しめたし、ほかのドラマでも描かれたことがある、向田邦子(山田真歩)、渥美清(山崎樹範)、森繁久彌(近藤真彦)らが活躍するテレビ業界黎明期のテッパン・エピソードは、何度見ても心が熱くなるものだった。

清野菜名演じる徹子もキュートで、今年なくなった野際陽子の実娘・真瀬樹里が野際役を演じたことにもしんみり。

山本耕史演じるお父さん、松下奈緒演じるお母さん等々……愛すべき登場人物がたくさんいた。

最終回は、徹子と祐介の、離れていても愛し合い続ける(結婚しない)恋の行方が描かれる。

余談だが、台本には、大下容子アナウンサーのナレーションは、単なるナレーションではなく、「天の声」と名前がついていた。

『トットちゃん!』 写真提供:テレビ朝日
『トットちゃん!』 写真提供:テレビ朝日

帯ドラマ劇場『トットちゃん!』

原案 黒柳徹子

脚本 大石静

演出 星田良子 遠藤光貴ほか

出演 清野菜名 松下奈緒 山本耕史 ほか

テレビ朝日 月〜金 ひる12時30分〜  再放送 BS朝日 朝7時40分〜

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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