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神戸製鋼ダン・カーター、日本デビュー談話が優等生すぎる件。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
メディアは「ダン・カーター上陸」のストーリーにのまれていた(著者撮影)。

 ラグビーのニュージーランド代表として世界歴代1位の1598得点をマークしたダン・カーターが9月14日、東京・秩父宮ラグビー場で神戸製鋼の一員として日本最高峰のトップリーグでのデビューを飾った。

 第3節で昨季王者のサントリーを36-20で制した。ゴールキックは8本中2本を失敗も、前半22分には抜け出した見方をサポートしてトライを記録。80分フル出場を果たし、マン・オブ・ザ・マッチを獲得した。

 4年に1度のワールドカップでは史上初となる2大会連続での優勝を決めたカーターは、身長180センチ、体重92キロの36歳。神戸製鋼とは2年契約。試合後は特別に会見が設けられ、本人がにこやかに語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「今日はチームにも私にもスペシャルな試合でした。今日の相手チームの方が昨季のチャンピオンでもあったので、僕らとしては大きいチャレンジでした。聞いた話によれば、神戸はしばらくサントリーに勝っていなかった。やっと勝ててうれしく思います。ハードワークのおかげです。個人的にはやっとトップリーグの試合に出られてうれしかった。この2か月間ハードワークをして、やっとジャージィが着られて嬉しかったです。日本ではウェルカムを受けていて、試合をするのが楽しみでした。多くの方々に見に来ていただいてうれしく思います」

――2か月間、日本にアジャストするのは大変だった?

「そうではないですね。2か月間、いろんな方に助けてもらい、いろんなチームメイトに歓迎もしてくれたのでなれるのは早かった。夏合宿中では神戸製鋼の練習試合を見られたし、開幕節ではウォーターボーイもしました。今回チームメイトがよく頑張ってくれた。皆さんの頑張りで私の役割をしやすくなった。マン・オブ・ザ・マッチはどの選手でもおかしくなかった」

――日本のレベルと自らの体調について。

「日本ラグビーのスタンダードは毎シーズン高まっています。スピードが速く映ります。きょうは80分出場ではないと思っていました。後半22分にイーリ ニコラス(カーターと同じスタンドオフを務める)が出てきたところで『交代かな』と思ったらそんなことはなく、80分プレーしました! 日本のスピードには慣れなきゃいけない状況でした。きょうは雨でゲインスピードが遅れ、助かりました。4か月振りの試合、大分、緊張していました。16年のプロ経験があるのになぜ緊張するかと思われるでしょうが、新しい国でプレーする時は、それまで達成したことと関係なく、自分のプレーを最初から発揮しなくてはいけない。チームの尊敬を得ないといけない。だから、緊張していました。今日はあくまでスタート。もっと改善しないといけない」

――今日のプレーについて。

「全体的に言うと自分のパフォーマンスは良かった。スキルは出せた。通常だと自信をつけるのに数試合かかるものですが、今日は久々の試合でスキルを発揮できたのは、驚いたところです。その要因は、ハードワークとこれまでの経験です。またチームメイトも、自分がやりやすいようにしてくれた。自分の仕事をできてうれしく思います」

――所版、ゴールキックを外していましたが。

「最初にキックはプレッシャーが大きかった。でも、いいスタートを切りたいというプレッシャーがあって思い通りにいかなかった。それで自信を無くす選手もいますが、経験上、次の仕事に集中しようとしました。後半はキックも入れられました。トライも取れて、うれしいですね。なかなかここまでトライが取れなかったですが、取れてうれしかったです。神戸に帰り、キック練習をしようと思います。まぁ、いつもしていますが」

――橋本大輝ゲームキャプテンは「最初、ちゃんと連携が取れるか連携の不安だったが、5~10分プレーしてそれがなくなった」と話していました。

「橋本は素晴らしいリーダー。キャプテン経験もあります。実は何度も橋本さんと食事はしていますが、ビールを飲むと彼の英語は素晴らしくなる。彼が思うほど、彼は英語が喋れる! …うちの強みのひとつとして、リーダーが多くいることがあります。いろいろとコミュニケーションが取れている」

――神戸製鋼、久々の優勝に向けこれから何をすべきか。

「毎週、毎週、試合が苦しくなっていくと思います。具体的に言えば、今日は最初の30分間はいいプレッシャーをかけられていましたが、その後のプレッシャーをかけるのを止めて近道を取ったり、うまくプレーができないことがありました。我々が望んでいるのは80分間、理想のプレーをすることです。昨季も継続的にはできなかった。80分、継続的いいプレーがしたいですね。パソコンとI Padで試合を振り返り、今後の課題を理解して次の週の練習に入りたいです。来週もビッグゲーム。(対するトヨタ自動車を率いる、元南アフリカ代表監督の)ジェイク・ホワイトもどうしても勝ちたいと思っているでしょうから、今日は勝ったことを喜んで、来週の試合に控え、プレッシャーでの動きなどを勉強していきたいです。毎週、毎週、成長しないといけない。そうなればプレーオフに行けるし、優勝に繋がる。ただ、間違いなく簡単ではありません。

 最後に、今日は多くの記者の方に来ていただいてうれしいです。人数でいうとテストマッチ級です。記者の皆様の仕事はラグビーの情報を多くの方に伝えることです。ワールドカップ(日本大会)まで12か月しかない。色んな情報を伝えて欲しいと思います」

 捕る、投げる、蹴るといった基本技術とそれを繰り出す判断は一線級。何より、この日のハイパフォーマンスについて「チームメイトも手伝ってくれた」と強調する。おまけに、聞かれる前からメディアへの謝辞。長らくスター選手であり続けた戦士の、これが態度だった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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