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17歳の高校生が考えた「レシート1枚10円の買い取りビジネス」と小遣い稼ぎに走るオトナたち

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
ワンファイナンシャルのレシート買い取りアプリ『ONE』出典:App Store

KNNポール神田です。

久しぶりに面白いビジネスアイデア! しかも高校3年生の17歳がサービス開発しているという…。

ワンファイナンシャルは6月12日、お財布に溜まっているレシートを瞬時に現金化できるアプリ「ONE(ワン)」の提供を始めることを明らかにした。スマートフォンのカメラ機能を使ってレシートを撮影すれば、すぐにアプリ内のウォレットに10円が振り込まれるという。振り込まれた現金は銀行の手数料分以上になれば、国内のほぼ全ての金融機関で好きなタイミングで引き出すことができる。

ワンファイナンシャルCEOで高校3年生の山内奏人さんは「レシートには究極のいろんなデータが含まれている。いつ、どこで、誰が何をいくら払って、いくらお釣りをもらって買ったのか。一人ひとりの購買行動やパターン分析ができるようになる」と話す。蓄積データをメーカーなど企業向けに販売していく狙いがある。

出典:レシート1枚10円で買うアプリ、天才高校生プログラマーが小売市場に挑む

ONE(ワン)毎日たまるレシートををお金にかえよう

https://itunes.apple.com/jp/app/one-%E3%83%AF%E3%83%B3/id1373644984

※2018/06/15現在、登録は停止中だ

誰もが、財布の中に貯まるレシート1枚が10円というお金に変わるとなると興味がそそられる…。それは

レシートの紙片に記述されたデータ価値よりも、たまる一方の無駄な紙片でしかなくなってきたからだ。かつては家計簿に記帳する主婦層も多かったが、最近はレシートを読み取る家計簿アプリがたくさんある。しかもクレジットカードのアプリでさえも、日々の家計簿に分別してくれる時代でもある。その価値が薄れてきた、レシートを一枚10円で買い取ってくれるというのだ…。

『不満買い取りセンター』ビジネスモデル

誰もが持っていて、価値のないとされているモノを買い取ってくれると話題になる…。

レシートを買い取る『ONE』のサービスを聞いて、『不満買い取りセンター』のビジネスモデルを思い出した。

不満買い取りセンターのウェブサイト  出典:不満買取センター
不満買い取りセンターのウェブサイト 出典:不満買取センター

http://fumankaitori.com

誰もが持っているサービスに対しての不満を、『不満買い取りセンター』は1件10円で買い取り、1件5円で販売するという。※現在は通常の不満は1〜10ポイント、お題が決まっているキャンペーンでは最大50ポイントで買取、500ポイントでアマゾンギフトに変換している。

10円分のポイントで不満を仕入れて5円で売る? 赤字じゃないか? しかし、この「?」が重要だ。 仕入れるのはたったの1回だけだが、5円で複数に販売するというビジネスモデルなのだ。買い取った不満を業種別に分類し、毎月5400円で契約する会員1200人に販売する。毎月1000件の不満が集まる…。しかし、10円の買い取りであれば、たったの1万円だ。1万円の仕入れで648万円にスケールするのだ(2015年当時)。

そう、どこにも行き場のない不満を10円で集める。それは貴重な生活者の声である。しかもある程度文章化されている。査定もできる。仕入れ数を限定し、商品としての体裁が整えばあとは営業力で「面」を広げることができる。業界別のレポートにすることができる。顕在化していない不満は、サービス改善のアイデアにつながる…。

このビジネスモデルは、今まで誰も買い取らないものに価値を見い出し、複数社に販売し続けることで成立する。。10円で買い取ってくれるというが、1000件集めてもたったの1万円。1万件集めても10万円しか仕入れにかからない。調査としては破壊的に安い調査なのだ。現在では、さらにその「不満」を「不満インサイトデータ」としてAI分析し販売している。

http://insight-tech.co.jp

そう、このビジネスモデルはそっくりそのまま、レシートを10円で買い取る『ONE』というサービスに当てはまりそうだ。

しかし、17歳の高校生が考えたという…しかし、この高校生はタダ者ではない高校生だったのだ。

17歳の起業家、山内奏人を普通の高校生と考えてはいけない!

17歳のシリアルアントレプレナー山内奏人氏 出典:本人twitter
17歳のシリアルアントレプレナー山内奏人氏 出典:本人twitter

ワンファイナンシャル 山内奏人のTwitter

https://twitter.com/5otoyam

この「レシートを10円で買い取る」サービスを高校生のアイデアとしては、賢い高校生だと考えるのは少し問題がある。山内奏人氏の華麗な経歴を見てみよう。普通の高校生とはまったく違うキャリアだ。

ワンファイナンシャルは2016年5月、ウォルトの社名で創業。チームを率いるのは弱冠16歳の山内奏人(そうと)氏だ。彼は、6歳で父親からパソコンをもらい、10歳でプログラミングを始め、「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞したという、まさしく神童の起業家と呼ぶにふさわしい。

出典:高校生が創業したフィンテックスタートアップのワンファイナンシャル、プレシリーズAで1億円を調達 決済アプリ「ONE PAY」をローンチ

エンジニアとして複数のスタートアップに勤務経験があったという珍しい経歴の持ち主だ。

学術系クラウドファンディングサイト「academist」やニュースメディア「Pedia」を運営するユニバーサルバンク在籍時に「新しい銀行サービスを作りたい」という思いからウォルト創業に至った。

出典:スマホ1台あれば数分でカード決済を導入―― 16歳起業家が作った「ONE PAY」提供元が1億円を調達

最初に作ったのはビットコインのウォレットサービス「WALT」。ライフカードと提携してビットコインをバーチャルプリペイドカードへと交換できる機能なども取り入れたが、ユーザーからも投資家からもあまり受け入れられなかったという。

その次に作った「ELK」は「Kyash」や「paymo」に近い個人間の送金サービス。ただ「第三者型前払式支払手段」の認可を受けていなかったことでプロダクトの使い勝手にも課題があり、プレイヤーが増えていく中で自分達の立ち位置を明確化できなかった。

出典:スマホ1台あれば数分でカード決済を導入―― 16歳起業家が作った「ONE PAY」提供元が1億円を調達

ビットコインのウォレットや個人送金サービスなどを立ち上げ、カード決済のONE PAYでは1億円の資金も調達している立派なITベンチャーなのだ。さらに、失敗の経験がこれだけ豊かなのはベンチャー企業経営歴が20年選手と変わらないほどだ。だからこそ、ポッとでの高校生起業家ではない。それでも、失敗に次ぐ失敗が高校生起業家にのしかかる…。その大半がオトナたちの不正利用なのだ。

17歳起業家の最大の敵はオトナたちの不正利用

スマホ1台あれば数分でカード決済を導入できるアプリONE PAYを手がけていた。

その後ONEPAYMENTへと名前を変えサービスを伸ばしていたが、それに伴い不正利用も増加。2018年4月には不正利用リスクが原因でStripe社から出金APIの利用を止められ、サービスを停止せざるをえない状況に陥った。

一時は再開したものの不正利用のリスクは消えない。山内氏が「多くのユーザーに使ってもらっていたので申し訳ない気持ちはあったが、そのままの形で続けるのは難しかった」と話すように、最終的にはサービスの継続を断念。ユーザーへサービスの終了を通知していた(6月29日に決済機能を停止し、7月31日に出金を含むすべてのサービスを停止)。

ONEPAYMENTはクローズすることになったが、決済データを活用したビジネスへの関心や、新しい金融の仕組みを作りたいという気持ちは変わらなかったという山内氏。(中略)

ONEについてはどのような使われ方をされるのか予想できない部分もあるというが、将来的には「次世代の金券ショップのようなものを作っていきたい」という構想を持っているようだ。

出典:レシートが1枚10円にかわるアプリ「ONE」公開、17歳起業家が新たに目指すのは“次世代の金券ショップ”

そう、今回のこのレシート買い取りサービスの「ONE」は、幾多ものフィンテック失敗の上での苦肉の策でのチャレンジなのだ。経験が少ない中、また金融という法律で一番縛られている、さらに一番厳しい、フィンテック市場で果敢にチャレンジしている。しかし、常に悪質なユーザーの「想定外なお小遣い稼ぎ」によって拒まれているのだ。

常に、革新的なサービスで人々のニーズを汲み取る力は天才的だと思う。しかし、一番の問題は、『不満買取センター』同様に、小遣い稼ぎに、恐るべき時間とリソースを費やしてくる輩への対処だ。

17歳の起業家の成功が常に拒まれるのは、いつも想定外の「オトナたちの小遣い稼ぎ」の不正利用だ。

ビジネスの世界、金融の世界に、高校生割引、未成年特典はない。当然、選手の保護者会なんて甘い組織体もない。悪質ユーザーの不正利用については常に先回りしておかなければならないのだ。しかし、全く革新的な新しいサービスはローンチしてからでないとわからないことが多い。世の中にはそれに果敢にチャレンジする者と、小遣い稼ぎに精をだすさもしい者の両者がいる…。

17歳の起業家はすでに4つ目のフィンテックサービスのスタートを切った。順調なすべりだしかと思うと、あまりにもヒットしすぎて、一時停止状態だ。そう、あのDMM.comが70億円で買収をした即時買い取りサービスの「CASH」と非常に酷似している。革新的なデビューで話題をかっさらい、即日停止、復活後の劇的バイアウトだ。

レシートの中で語られる情報×本人確認での個人データ÷小遣い稼ぎ = 消費行動情報の価値

の方程式は前人未踏の分野だ。高校生であるかどうかよりも、ベンチャーとしての素早いサイクルでのシリアルアントレプレナーの苦悩を一人のオトナとして暖かく見守りたい。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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