17歳の高校生が考えた「レシート1枚10円の買い取りビジネス」と小遣い稼ぎに走るオトナたち
KNNポール神田です。
久しぶりに面白いビジネスアイデア! しかも高校3年生の17歳がサービス開発しているという…。
ONE(ワン)毎日たまるレシートををお金にかえよう
https://itunes.apple.com/jp/app/one-%E3%83%AF%E3%83%B3/id1373644984
※2018/06/15現在、登録は停止中だ
誰もが、財布の中に貯まるレシート1枚が10円というお金に変わるとなると興味がそそられる…。それは
レシートの紙片に記述されたデータ価値よりも、たまる一方の無駄な紙片でしかなくなってきたからだ。かつては家計簿に記帳する主婦層も多かったが、最近はレシートを読み取る家計簿アプリがたくさんある。しかもクレジットカードのアプリでさえも、日々の家計簿に分別してくれる時代でもある。その価値が薄れてきた、レシートを一枚10円で買い取ってくれるというのだ…。
『不満買い取りセンター』ビジネスモデル
誰もが持っていて、価値のないとされているモノを買い取ってくれると話題になる…。
レシートを買い取る『ONE』のサービスを聞いて、『不満買い取りセンター』のビジネスモデルを思い出した。
誰もが持っているサービスに対しての不満を、『不満買い取りセンター』は1件10円で買い取り、1件5円で販売するという。※現在は通常の不満は1〜10ポイント、お題が決まっているキャンペーンでは最大50ポイントで買取、500ポイントでアマゾンギフトに変換している。
10円分のポイントで不満を仕入れて5円で売る? 赤字じゃないか? しかし、この「?」が重要だ。 仕入れるのはたったの1回だけだが、5円で複数に販売するというビジネスモデルなのだ。買い取った不満を業種別に分類し、毎月5400円で契約する会員1200人に販売する。毎月1000件の不満が集まる…。しかし、10円の買い取りであれば、たったの1万円だ。1万円の仕入れで648万円にスケールするのだ(2015年当時)。
そう、どこにも行き場のない不満を10円で集める。それは貴重な生活者の声である。しかもある程度文章化されている。査定もできる。仕入れ数を限定し、商品としての体裁が整えばあとは営業力で「面」を広げることができる。業界別のレポートにすることができる。顕在化していない不満は、サービス改善のアイデアにつながる…。
このビジネスモデルは、今まで誰も買い取らないものに価値を見い出し、複数社に販売し続けることで成立する。。10円で買い取ってくれるというが、1000件集めてもたったの1万円。1万件集めても10万円しか仕入れにかからない。調査としては破壊的に安い調査なのだ。現在では、さらにその「不満」を「不満インサイトデータ」としてAI分析し販売している。
そう、このビジネスモデルはそっくりそのまま、レシートを10円で買い取る『ONE』というサービスに当てはまりそうだ。
しかし、17歳の高校生が考えたという…しかし、この高校生はタダ者ではない高校生だったのだ。
17歳の起業家、山内奏人を普通の高校生と考えてはいけない!
ワンファイナンシャル 山内奏人のTwitter
この「レシートを10円で買い取る」サービスを高校生のアイデアとしては、賢い高校生だと考えるのは少し問題がある。山内奏人氏の華麗な経歴を見てみよう。普通の高校生とはまったく違うキャリアだ。
ビットコインのウォレットや個人送金サービスなどを立ち上げ、カード決済のONE PAYでは1億円の資金も調達している立派なITベンチャーなのだ。さらに、失敗の経験がこれだけ豊かなのはベンチャー企業経営歴が20年選手と変わらないほどだ。だからこそ、ポッとでの高校生起業家ではない。それでも、失敗に次ぐ失敗が高校生起業家にのしかかる…。その大半がオトナたちの不正利用なのだ。
17歳起業家の最大の敵はオトナたちの不正利用
そう、今回のこのレシート買い取りサービスの「ONE」は、幾多ものフィンテック失敗の上での苦肉の策でのチャレンジなのだ。経験が少ない中、また金融という法律で一番縛られている、さらに一番厳しい、フィンテック市場で果敢にチャレンジしている。しかし、常に悪質なユーザーの「想定外なお小遣い稼ぎ」によって拒まれているのだ。
常に、革新的なサービスで人々のニーズを汲み取る力は天才的だと思う。しかし、一番の問題は、『不満買取センター』同様に、小遣い稼ぎに、恐るべき時間とリソースを費やしてくる輩への対処だ。
17歳の起業家の成功が常に拒まれるのは、いつも想定外の「オトナたちの小遣い稼ぎ」の不正利用だ。
ビジネスの世界、金融の世界に、高校生割引、未成年特典はない。当然、選手の保護者会なんて甘い組織体もない。悪質ユーザーの不正利用については常に先回りしておかなければならないのだ。しかし、全く革新的な新しいサービスはローンチしてからでないとわからないことが多い。世の中にはそれに果敢にチャレンジする者と、小遣い稼ぎに精をだすさもしい者の両者がいる…。
17歳の起業家はすでに4つ目のフィンテックサービスのスタートを切った。順調なすべりだしかと思うと、あまりにもヒットしすぎて、一時停止状態だ。そう、あのDMM.comが70億円で買収をした即時買い取りサービスの「CASH」と非常に酷似している。革新的なデビューで話題をかっさらい、即日停止、復活後の劇的バイアウトだ。
レシートの中で語られる情報×本人確認での個人データ÷小遣い稼ぎ = 消費行動情報の価値
の方程式は前人未踏の分野だ。高校生であるかどうかよりも、ベンチャーとしての素早いサイクルでのシリアルアントレプレナーの苦悩を一人のオトナとして暖かく見守りたい。