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大阪桐蔭がセンバツで挑むジンクス! 20年近く続く呪縛とは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
神宮大会初優勝の大阪桐蔭が挑むセンバツにまつわるジンクスとは?(筆者撮影)

 「神宮大会で優勝すると、センバツで優勝できない」。このジンクスは、20年近く動かしがたい事実として存在する。実際に、神宮王者が翌春センバツで優勝したのは、2001(平成13)年の神宮で優勝した報徳学園(兵庫)が、翌年の春に優勝した例までさかのぼる。(今記事から、センバツ仕様で4月からの新学年表記とします)

「神宮枠」導入後のセンバツ優勝はない

 さらに突き詰めれば、神宮大会優勝校の地区を増枠する「神宮枠」が導入されたのが、報徳の優勝の翌年、つまり03(平成15)年の75回大会だから、18年間、神宮の王者はセンバツで頂点に立っていない。直近の2例は、センバツそのものの中止と神宮大会中止で論じるに値しないが、少なくとも昨センバツ王者・東海大相模(神奈川)は関東大会で優勝しておらず、ジンクスを打ち消すには至っていない。神宮枠導入後にセンバツで優勝した例は皆無なのだ。

ジンクスに挑む「切り札」大阪桐蔭

 このジンクス打破に今春、挑むのが大阪桐蔭(タイトル写真)。言わずと知れた高校球界の頂点に君臨する最強チームである。春夏甲子園で計8度の優勝を誇り4年前には史上初の2度目の春夏連覇を果たした。実績においても、かつてのPL学園(大阪)に勝るとも劣らない。まさに、満を持して、最後の切り札が登場する。

神宮王者のセンバツ平均成績は8強を下回る

 75回大会以降の神宮王者の成績を振り返ると、このジンクスがいかに「強敵」であるかがわかる。過去17例のうち、78回センバツで不祥事により出場辞退した駒大苫小牧(北海道)を除き、初戦敗退はわずか3例。13校が初戦を突破しているが、16校の勝ち星の合計は31。つまり平均で2勝に達していない。センバツは概ね2勝で8強なので、計算上、神宮王者は8強前後で敗退することが多いと言える。秋の王者としてマークされることは当然だが、意外なほどの不成績で終わることも少なくない。

準優勝は履正社など4校

 最高成績は準優勝で、これは4例ある。76回大会の愛工大名電(愛知)は、済美(愛媛)に1点差で惜敗。84回大会では光星学院(現八戸学院光星=青森)が、藤浪晋太郎(阪神)の大阪桐蔭に敗れ、夏も決勝で同校の軍門に下って春夏連覇を許した。88回大会は名門の高松商(香川)が延長の大熱戦の末、智弁学園(奈良)にサヨナラ負け。翌年の履正社(大阪)は、大阪桐蔭に3-3の同点から、9回に突き放されて敗れた。強豪、名門をもってしても、このジンクスは打ち破れていない。興味深いのは、4回のうち2回、大阪桐蔭が優勝を阻止し、自らが優勝旗を手にしていることである。

「全員で競争」と西谷監督

 さて、4日の組み合わせ抽選会では、初戦が1回戦最後となる6日目の登場と決まった。日程的には、終盤戦で試合が立て込むため、昨夏に続いて最悪に近い。抽選会の直後、星子天真主将(タイトル写真右端=3年)は「冬の練習で体力がついたことを実感している」と手ごたえを口にした。「ここからはチームを解体し、全員で競争」と秋の王者になっても西谷浩一監督(52)は、さらに厳しい練習を課した。その成果は確実に表れ、7日の練習試合でも打線が大爆発していた。秋のスタート時に課題だった攻撃面は心配なさそうだ。

カギは3年生投手陣のレベルアップ

 となればジンクス打破への課題は、やはり3年生投手陣のレベルアップに尽きる。いずれの投手も調子の波が大きく、投げてみないとわからないようでは、西谷監督も使いづらい。現状、大黒柱の前田悠伍(2年)との差は開く一方だが、大阪桐蔭といえども、下級生一人が背負えるほど、このジンクスは甘くない。初戦の鳴門(徳島)の左腕・冨田遼弥(3年)は、大阪桐蔭が伝統的に苦手とする左腕の好投手でもある。初戦は前田が先発するとしても、打線の援護で彼の負担を軽減できるかは見通せない。

日程運が追い打ちかけるが吉兆も

 さらに追い打ちをかけるのが日程運で、これは昨夏とダブる。1回戦の登場が遅く、終盤戦の強行軍を見据えて大黒柱の松浦慶斗(日本ハム)を温存。これが裏目に出て、2回戦で近江(滋賀)に逆転負けを喫した。今回も、軸になる前田をいかにうまく使い回せるか。前田は、先発でも救援でも十分に力を出せるので、先輩投手が先発した試合で前田を温存できる展開が最も望ましい。百戦錬磨の西谷監督だから、よもや昨夏の二の舞はないだろう。また前述の履正社との大阪決戦時も1回戦登場が最後で、今回と全く同じ日程運。吉兆と言えなくもない。「切り札」大阪桐蔭が、神宮王者の呪縛から逃れ、いかにこの「見えない大敵」を打ち破るか。読者の皆さんも、いつもと少し違った視点から注目していただきたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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