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アフリカ南部で異常少雨 1400万人が飢餓の危機 

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
砂漠と化したコーン畑(南アフリカ・フリーステイト州)(写真:ロイター/アフロ)

砂漠と化した畑は砂埃が舞い上がり、果てなく続く乾いた大地に、ヤギや牛の死体が点々と転がっている。これが、数十年来の干ばつにあえぐ、今の南アフリカ中部の現状である。

2015年は1904年からの統計で最も雨量が少なかった。南アフリカ共和国気象局。
2015年は1904年からの統計で最も雨量が少なかった。南アフリカ共和国気象局。

2015年は観測史上最も雨の少ない年だった。年間降水量は400ミリと、例年のおよそ3分の2にとどまった。気温も異常に高く、12月は日最高気温を記録した。そしてこの異例の少雨・高温は農業を直撃し、主食であるコーンの価格は今月史上最高額に達した。

干ばつによる食糧問題に直面しているのは、南アフリカだけではなく、マラウィ、ジンバブエ、マダガスカルといった周辺国にも及んでいる。国連食糧計画は、18日(月)アフリカ南部の国々で、1400万人が飢餓に陥る可能性を指摘した。

なぜ干ばつ?

エルニーニョ時の典型的な気象。climate.gov
エルニーニョ時の典型的な気象。climate.gov

そもそもなぜ、記録的な干ばつが起きているのだろうか。

その原因として、現在起きているエルニーニョ現象が挙げられる。2014年から始まった今回のエルニーニョは観測史上3番目に規模が大きく、それが世界の気象に与える影響は大きい。ある研究によると、過去南アフリカで起きた干ばつ17回のうち、エルニーニョに引き続いて起きたものが7回もあり、しかもそのどれもが、記録的に深刻な干ばつであったという。

今後の天気はどうなる?

長く続いた干ばつだが、今はようやく雨季に突入している。また、干ばつと関係のあるエルニーニョはピークを過ぎ、今後はその傾向が弱まっていく見通しが出ている。さらに、エルニーニョの次はラニーニャが続けて発生することがあり、その場合はアフリカ南部で雨が多くなるという傾向がある。待ちに待った恵みの雨の到来だが、干ばつの程度が激しいこと、またすでに作物の栽培時期は過ぎていることから、食糧事情がすぐに好転するわけではない。

世界市場で影響が出そうな農作物

ところで、このアフリカ南部の干ばつは私たちの食卓や生活にどのような影響があるだろうか。

まず、食用・家畜用両方のとうもろこしの輸入が急減する。またライチや、美容で人気のルイボスティーも価格が高騰する見通しである。加えて、ジンバブエやマラウィのタバコの生産量も減少しており、私たちの生活にも影響が及ぶおそれがある。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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