女性がビジネスで活躍するには「ロジカルシンキング」をもっと学ぶべき?
女性はそんなに感覚的なのか
私は現在、働く女性たちに「ロジカルシンキング」を教える場を提供しています。4年以上、ビジネスウーマンに限定した講座を開催し、女性だからこそもっと論理思考力を身に付けたほうがいいと痛感したからです。
このような活動をはじめる前は、いわゆる「女は感情で動く生き物」という通説には懐疑的でした。しかし、実際に多くのビジネスウーマンとコミュニケーションをしていると、その傾向は否定できないという結論にいたりました。
女性のほうが「感覚的」で、男性のほうが「論理的」であるとは脳科学的には言えないことがわかっています。しかし、現場に入っていると女性のほうが「感覚的」な判断、意思決定をしているように見えるのは「環境」の影響が強いと言えるでしょう。前述したように「女は感情で動く生き物」と世間で言われ続けたために、そのような先入観が思考パターンを形成させたのです。
しかし、だからといって、決して男性が「論理的」であるとは思いません。男性もまた「感覚的」な判断や意思決定ばかりしているのです。何が違うかというと、これは私見ですが、性差など関係なく、同じように「感覚的」ではあるものの、女性のほうが若干「感情的」になる傾向が強いのではないか、というの私の意見です。つまり、感情の抑制が難しい、感情のコントロールが困難なときがあり、冷静さを失うときがある、ということです。
「ロジカルシンキング」するうえでの「3つの整理」
「ロジカルシンキング」と聞くと、ロジックツリーやピラミッドストラクチャー、MECE、プロセス図、マトリックス図……などの思考ツールを思いつく人が多いことでしょう。これらのツールを駆使して戦略を立案したり、問題解決のための仮説や手順を整理したりするのが一般的なロジカルシンキングの使い道とも言えます。
しかし私はもっと「ふだん使いのロジカルシンキング」を提案したいと考えています。以下に3つのポイントを挙げます。
■ 感情の整理 → 感覚的に捉えていることを論理的な視点で受け止めなおし、頭の整理、感情のコントロールに役立たせる
■ 情報の整理 → 今ある情報を分解/類別/統合したり、足りない情報を発見して、意思決定やコミュニケーションに役立たせる
■ 問題の整理 → 何が本来の問題なのか、そして問題の真因と有効な解決策を探し当てることに役立たせる
まずはロジカルに物事をとらえることで、感情を整理し、客観的に物事を見つめる思考の土台を作ります。次に、目の前にある情報を正しく受け止めることで頭を整理します。そして情報を整理することで、どこに問題があり、その真因と解決策を見つけ出すための整理をするのです。
前述したとおり、「感覚的」な判断を「論理的」に変換するためには、まず感情の制御が必要です。この感情コントロールも「ロジカルシンキング」の技術が使えます。ここで思考の土台をつくり、次のステップへ移ることを強くお勧めします。荒ぶる感情をそのままにしておいて、ロジックツリーやマトリックス図を活用することは難しいことでしょう。
「ええい、ややこしい! 何がロジカルシンキングだ。こんなツールを使わなくったって、私が言っていることが正しいのよ。間違いないんだから!」
……となるのがオチです。たとえ、その判断が正しくても、感情的な意思決定だと周囲の人が受け止めれば、信頼されることはありません。
基本の「スケールテクニック」
感情をコントロールするうえで使える思考ツールはたくさんあります。私がお勧めするのが「スケールテクニック」です。感覚的に受け止めていることをすべて数値化するやり方です。
たとえば「その仕事、作業にどのくらいの時間がかかるか」を客観的に見積もり、定量表現してみましょう。たとえば、メールに返信するのにどれぐらい時間がかかるか。上司の報告連絡相談をするのにどれぐらい時間がかかるか。靴をそろえるのにどれぐらい時間がかかるか……どんな小さなことでも、かかる時間を見積もるクセをつけるのです。
これが仮説を立てて検証していく習慣へと変わっていきます。この思考トレーニングを繰り返すことで、「スケールテクニック」の精度は高まり、感覚を数値化することで行動に対する心理ハードルが低くなっていきます。つまり従来の「感覚」が修正されていくのです。
感情に振り回される人は「時間感覚」が足りないという傾向が強くあります。「忙しい」「時間がない」「バタバタしている」が口癖の人は要注意です。思考の土台が脆弱で、感情的になりやすく、論理的な判断がしづらいことが多いはずだからです。
女性に限ったことではありませんが、ついつい感情的になってしまう人。感覚的な判断ばかりして失敗することが多い人は、ロジカルシンキングを少しずつ学んでみてはいかがでしょうか。身近なところから始めれば論理思考力は徐々に鍛えられていきます。