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兵庫から球音! 大阪桐蔭、近江、智弁和歌山はいかに? ハイレベル近畿の展望

森本栄浩毎日放送アナウンサー
あと1か月もすれば夏の出場校が決まる。近畿の情勢は?(昨年の兵庫大会=筆者撮影)

 夏の甲子園をめざす地方大会が沖縄を皮切りに始まった。近畿でも兵庫で25日に開幕し、早くも26日には昨年、春夏連続出場の神戸国際大付(タイトル写真)が登場した。来週末になれば、球音は一気に全国へと広がる。昨夏、今春の甲子園は近畿勢の独壇場だった。この夏もハイレベルな攻防が繰り広げられそうだ。

神戸国際大付は新戦力登場

 史上初めて6月開幕となった兵庫。春は不振でシード落ちした神戸国際大付が、公立の進学校・御影と対戦。危ない場面はなかったが、相手投手に対応しきれず、3-1の辛勝スタートとなった。終盤には沖縄出身の1年生右腕・津嘉山健志郎が登板し、見事な火消しを見せる活躍で、青木尚龍監督(57)を喜ばせた。この日は登板がなかったエース・楠本晴紀(3年)や、値千金の本塁打を放って初戦突破に貢献した山里宝(3年)ら、昨夏甲子園8強経験者に新戦力を加え、夏の2年連続出場を狙う。次戦はシード校の須磨翔風が相手で、早くも最初の難敵と当たることになる。

報徳、社、東洋大姫路など実力接近~兵庫

 兵庫は上位校の実力が接近していて、シード校同士が当たる5回戦以降が本当の勝負になる。春の県大会を制した報徳学園はエース左腕の榊原七斗(3年)が攻撃面でもカギを握る。近畿大会では市和歌山米田天翼(3年)から3ランを放っている。秋に優勝したは、投打のバランスがいい。最速146キロ右腕・芝本琳平(3年)は、ややサイド気味から伸びのある球を投げる。センバツ出場の東洋大姫路は、待望の雨天練習場も完成し、岡田龍生監督(61)も、就任早々から鼻息が荒い。報徳とは1勝1敗で、いずれも投手戦だったが、敗れた春の決勝ではエース・森健人(3年)は登板していない。その森に完封負けしたが、滝川二も長身右腕・坂井陽翔(2年)が成長している。報徳に春の県大会で惜敗した神港学園はシード落ちし、滝川二と同じブロックに入った。4回戦で対戦があれば、注目の好カードになる。明石商は昨秋、神戸国際大付を破りながら、近畿大会出場を逃したが力はある。昨夏準優勝の関西学院は、広岡正信監督(68)が今大会で勇退する。1回戦の相手は昨秋8強の加古川西で、厳しい戦いが予想される。全体的に投手力のいいチームが多く、消耗が激しくなる準々決勝以降は、打線の援護も不可欠になるだろう。

大阪桐蔭を追う履正社、元プロ監督にも注目~大阪

 センバツ優勝の大阪桐蔭をライバル・履正社が追う例年通りの構図になった。3回戦までの組み合わせが決まり、関大北陽が大阪桐蔭と同じブロックに入った。昨夏の準決勝で延長14回タイブレーク勝ちした難敵と、3回戦で当たる可能性がある。同じブロックには公立の強豪・汎愛もいて、2回戦で北陽と対戦か。履正社は、春の府大会決勝で8回に決勝点を奪われて2-3で大阪桐蔭に惜敗した。秋よりも差が縮まった印象で、積極的な走塁を仕掛ける多田晃監督(43)の采配に、西谷浩一監督(52)も「勢いを感じた」と警戒している。秋、春と抑えられた大阪桐蔭のエースの前田悠伍(2年)をどこまで攻略できるか。センバツ8強の金光大阪は、エース・古川温生(3年)がセンバツで自信をつけた。元プロ監督が多いのも大阪の特徴で、興国喜多隆志監督(42=元ロッテ)は、「2強」を脅かす一番手として、古豪復活に手応えをつかんでいる。元オリックスの土井健大監督(33)は東大阪大柏原を率い、昨秋、大阪桐蔭を苦しめた(4-5で惜敗)。大阪偕星学園は前監督に不祥事があり、元阪神の岩田徹監督(55)が就任した。明るい性格でガッツあふれるプレーは、多くのファンの記憶に残っている。同じく阪神で活躍した遠山昭治監督(54)は、浪速の監督として3度目の夏になる。さらに、元ソフトバンクの田上秀則監督(42)は、4年前から母校・大産大付を率いている。

コロナ禍から立ち直れるか京都国際~京都

 実力と経験値で他を圧倒する京都国際だが、コロナ禍が長く影を落としている。センバツ辞退の精神的ショックもさることながら、体調が回復しきれていない選手もいて、春は西城陽に惜敗した。エースで4番の森下瑠大(3年)もその一人で、左ヒジの炎症に悩まされている。平野順大(3年)ら投手は多彩で総合力は府下随一だが、打線がどれだけ援護できるか。

エース・田中を見守る川口コーチ(左)。寮でも映像分析をして細かく教えるなど「やさしく丁寧に指導している」と恩師の原田英彦監督(62)も期待を寄せる。(筆者撮影)
エース・田中を見守る川口コーチ(左)。寮でも映像分析をして細かく教えるなど「やさしく丁寧に指導している」と恩師の原田英彦監督(62)も期待を寄せる。(筆者撮影)

 対抗の一番手には龍谷大平安を推したい。春は東山福知山成美に敗れて元気がなかったが、夏には必ず仕上げてくる。今春、OBの元オリックス・川口知哉氏(42)がコーチに就任し、丁寧な指導で左腕・田中大晴(3年)ら投手陣の底上げを図る。京都国際と当たるとすれば、決勝になる。東山はエース・橋本翔太(3年)ら、右腕の好投手を揃え、準々決勝で京都国際と当たる組み合わせになった。春優勝の西城陽はエース・藤川泰斗(3年)が打でも牽引するが、京都外大西京都共栄学園、秋2位の塔南と同じブロックで最も厳しい抽選運。準々決勝では立命館宇治が入るブロック勝者との対戦で、4分割で見ても最激戦だ。春3位の福知山成美は、比較的楽なブロックで、公立の雄・乙訓がライバル一番手か。

智弁和歌山筆頭、追う市和歌山は厳しい抽選運~和歌山

 昨夏甲子園王者の智弁和歌山を筆頭に、全国屈指の少数精鋭による激戦区。智弁は春の近畿大会で大阪桐蔭を破って優勝し、勢いもある。武元一輝(3年)、塩路柊季(3年)の右腕二枚看板だけでなく、左腕・吉川泰地(2年)が成長。攻撃陣は、昨夏甲子園決勝で本塁打を放った渡部海(3年)や青山達史(2年)らパワーあふれる強打者が並ぶ。投打とも昨年と遜色ない陣容で、夏の連覇も十分に狙える。ライバル一番手でセンバツ8強の市和歌山は厳しいブロックに入った。初戦の初芝橋本は、昨夏、智弁和歌山を苦しめたエース・川端一正(3年)が健在で、最悪の抽選運。大量点は期待薄で、米田の力投に頼るしかない。ここを突破しても、センバツ出場の和歌山東と当たりそうで、息が抜けない。和歌山は4強が決まったあとに再抽選がある。残るシード校は、和歌山商日高で、名門・箕島も上位に入る力を持っている。

2強の一騎打ちムードを打ち破れるか~奈良

 長く2強を形成する天理智弁学園の一騎打ちムードは変わらない。当たるとすれば決勝だが、他校との差は例年より小さそうだ。センバツ出場の天理は、エース・南澤佑音(3年)に安定感があり、中軸の戸井零士(3年=主将)、内藤大翔(3年)らの打棒も勝負強く、投打のバランスが最もいい。3回戦で郡山と当たる組み合わせになった。智弁は全国屈指の戦力だった昨年の反動か、春は精彩を欠いた。昨年同様、投手は左右の両輪で、甲子園でも投げた左腕・藤本竣介(3年)と、やや伸び悩んでいる右腕・大坪廉(3年)が、先輩に少しでも近づこうと必死。得点力アップが連続出場へのカギになりそうで、2回戦の畝傍は油断ならない。春優勝の奈良大付は、多彩な投手陣を粘り強い攻撃力で支える。近畿大会・近江(滋賀)戦での完敗を糧に、巻き返しを狙う。秋に2位だった高田商は近年、天理キラーとして名高い。準決勝まで勝ち上がって、天理と対戦なるか。

近江を追う滋賀学園~滋賀

 滋賀は、組み合わせが決まった段階で詳報したため、重複は避ける。組み合わせ上は、大本命の近江が準々決勝で滋賀学園と当たる。例年、夏に無類の強さを発揮する近江だが、6月以降の練習試合はやや打線が低調で、山田陽翔(3年=主将)ら投手陣をどこまで援護できるか。チーム状態がベストなら負けることは考えられない。

近畿の有力校は?

 最後に、近畿の2府4県の有力校を列挙しておきたい。

大阪=大阪桐蔭、履正社、金光大阪、興国、東大阪大柏原

兵庫=神戸国際大付、報徳学園、社、東洋大姫路、滝川二、神港学園

京都=京都国際、龍谷大平安、東山、福知山成美、西城陽

和歌山=智弁和歌山、市和歌山、初芝橋本、和歌山東、箕島

奈良=天理、智弁学園、奈良大付、高田商

滋賀=近江、滋賀学園、彦根総合、綾羽、立命館守山

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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