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話題のライバー・ハゲカノがハゲカノになるまでの葛藤とこれからの思い

中西正男芸能記者
「17LIVE」で注目のライバー・ハゲカノさん(この写真のみ本人提供)

 ライブ配信アプリ「17LIVE」で注目のライバー(配信者)となっているハゲカノさん(27)。高校時代から原因不明の脱毛症に悩まされる中、出会ったのが配信の世界でした。様々なウイッグをつけて配信することで自らの内面も変わっていき、さらにウイッグをつけていない自分への思いも変わっていったと言います。今月、フジテレビ「Live News イット!」でも取り上げられ話題となりましたが、ハゲカノという刺激的な名前を使うに至った経緯。そして、奥底にある思いを語りました。

人と違うところを隠す感覚

 髪が抜け始めたのは高校1年の頃でした。最初は“十円ハゲ”ができて、皮膚科に通っていたんですけど、他のところも抜けてきてしまった。

 いろいろな病院にも通い、民間療法的なものもたくさん試しました。でも、そういうものはお金がすごくかかりますし、学生なので、結局親に払ってもらわないといけない。

 そうなると「そこまでして、親にお願いするものなのか。高額な治療を受けても治るかどうかは分からないのに。でも、治療法があるなら試したい自分もいる」。そんな葛藤が渦巻き、それがまた次の悩みになる。そんな負のスパイラルが生まれていきました。

 そして、髪の毛がないという“人と違うところ”を隠さないといけない。そんな思いからなるべく目立たないウイッグをつけて日々の生活を送るようになっていました。

「もういいか…」

 高校を卒業してからは医療系の専門学校に通ってたんですけど、そこで友だちから「17LIVE」のことを聞いたんです。当時はまだ配信というもの自体がほとんど知られていない時代だったんですけど、見た瞬間に「こんな世界があるんだ」と衝撃を受けました。

 直感的に「これを自分もやりたい」と思って、リスナー(視聴者)として見始めてから1カ月ほどで自分も配信を始めたんです。

 専門学校で理学療法士の免許を取得し、卒業後は病院で働いていたんですけど、それと並行してライバーとしての活動もしていました。そのうち、ライバーとしての比重が徐々に高くなっていって、それなら東京に出ようとなり上京したというのがこれまでの大きな流れです。

 ただ、上京した頃は正直まだ治療への思いもありました。東京に出るということは治療の選択肢も増えるだろうし、まだ可能性もあるかもしれない。その希望を持って東京に出てきたのもまた事実でした。

 実際、東京で良い病院を調べて診てもらいました。ただ、そこで処方されたお薬が福岡で最初に出してもらったお薬と同じものだったんです。その瞬間、なんというか、何かの糸が切れるというか。心の中で「もういいか…」となりました。それが4年ほど前でした。

自分自身を否定したくない

 そんな気持ちの変化もありつつ、引き続きライバーとしての活動はしていたんですけど、コスプレ感覚で毎回違うウイッグで配信をしていると、見てくださっている方から「今日もまた髪形が違うね」と髪形に関するコメントをたくさんいただくようになったんです。

 そうなると、さらにもう一歩踏み込んで「そもそも、なんでウイッグをしているの?」という質問もいただくようになりました。

 その頃は治療からも離れていましたし、ウイッグをつけていない自分の姿が嫌いなわけでもない。それなのに、ウイッグで隠している。だんだんそれ自体が自分自身を否定しているような感覚にもなっていったんです。

 ちょうどその迷いが出てきた頃、2020年2月頃だったと思うんですけど、NHKさんの番組「沼にハマってきいてみた」のから若者の配信文化みたいなテーマで取材を受けることになりました。

 そこでいろいろな思いが集約したというか、このタイミングで、ウイッグをつけている理由をしっかりお話するのがいいんじゃないかと考えたんです。

 脱毛症の話もストレートにお伝えすると、大きな反響をいただきました。やっぱり、何も悪いことでもないし、自分でも自分が嫌いなわけでもないんだけど、今まで話していないことをテレビで話す。そこへの不安はあったんですけど、自分でも驚くほどポジティブな意見をたくさんいただいたんです。

 同じような悩みを持っている人も想像以上にたくさんいらっしゃったし、不安を圧倒的に上回るくらい「言って良かった」という思いが込み上げてきました。

ハゲという言葉

 そして、そのあたりからハゲカノという名前を使うようになったんです。高校時代はハゲという言葉にすごく敏感でしたし、そのワードを避ける思いもすごくありました。

 でも、今はその言葉と真正面から向き合えるし、一番分かりやすいワードでもあるし、その言葉が持っているネガティブな要素も大っぴらに出すことで少しは薄まるんじゃないか。そういう思いもあって自分の呼び名をハゲカノにしました。

一緒に活動しているハゲカレと対になった呼び名というのもあるんですけど、昔の自分だったら絶対につけていない名前だったと思いますけど、今はこの呼び名をすごく愛おしく思ってもいます。

 最近は人の見た目に関してすごくセンシティブな世の中になっています。その風潮は私も感じてはいますし、そこを自分はあえてグッと前に出ることで受け止めている。

 でも、これは本当に人によると思います。私はたまたま真正面から、大っぴらに、という選択肢をとりましたけど、これも合う人と合わない人がいる。当然のことなんですけど、全員に同じ答えはないし、その人に寄り添った選択肢を自分も周囲も探す。それが乱暴ではない世の中なのかなとも思っています。

 私は脱毛症をきっかけにウイッグをかぶることになったんですけど、そのきっかけがなくても「かわいいから」ということで日々を楽しくするという理由でたくさんの人がかぶる。

 そうなると、ウイッグというもの自体への特別な目も少なくなるだろうし、楽しく生きられる人も増えるんじゃないか。自分の経験を通して、そんなことを思って、去年ウイッグの会社も立ち上げました。

 …まじめなにえらそうなことを次々に申し訳ないですけど(笑)、私自身がいろいろなことを感じたからこそ、少しでも良い方向に進んでほしいなと。

 純粋にそう思いますし、そのために自分ができることがないのか。それをこれからも探しながら、過ごしていけたらなと思っているんです。

(撮影・中西正男)

■ハゲカノ

福岡県出身。27歳。高校1年の頃から原因不明の脱毛症に悩まされ、ウィッグを着用するようになる。高校卒業後は医療系の専門学校に進み、理学療法士の資格を取得し整形外科に勤務。専門学校在学中から「17LIVE」のライバーとして活動。当初は整形外科での仕事と並行して活動をしていたが、ライバーとしての比重が高くなり上京。現在のパートナーである「ハゲカレ」と出会い「ハゲカノ」の名前で活動するようになる。ウイッグをより身近なものにしたいとの思いから2021年10月に「株式会社NEJIKO」を設立し、自らのウイッグブランドを立ち上げた。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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