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イージスアショア代替艦は多胴船?

JSF軍事/生き物ライター
参考写真:ジェネラルダイナミクス社より三胴船型フリゲート「インディペンデンス」

 イージスアショア計画の中止による代替計画はイージス艦2隻の追加調達となり、計画名称「イージス・システム搭載艦」となっています。BMD(弾道ミサイル防衛)に機能を限定した専用艦や全ての対空対潜の戦闘能力を備えたフルスペック艦が検討された末に、現状ではフルスペックの機能を持つことが予定されています。

 また「イージス・システム搭載艦」はイージスアショア用に契約したロッキード・マーティン製SPY-7レーダーを搭載する予定で、従来のイージス艦用よりもレーダーパネル面積が大きい仕様を発注しているため(ただしSPY-7はパネル面積を自由に発注仕様を変更可能)、船体サイズが拡大される予定です。一部に船体幅を増やす報道もありましたが、対北朝鮮BMD任務の為に急いで戦力化しなければならない要求上、設計の変更が少なくて済む船体長を伸ばして大型化する方式を採用するものと思われていました。

 しかし、海上自衛隊調達情報HPの公募公示にある東京地区・補給本部の4月9日の公募「補本公示03-1第6号」の中で(補本とは補給本部の略)、イージス・システム搭載艦の設計検討についての公募に応募できる者の資格として以下のような驚くべき条件がありました。

(8)最新の多胴船の設計・製造等の経験を有すること。

出典:令和3年度イージス・システム搭載艦の艦の設計に向けた検討に必要な情報収集・分析に係る技術支援役務についての契約希望業者募集要項:海上自衛隊補給本部(令和3年4月9日)

 多胴船とは双胴船(カタマラン型)や三胴船(トリマラン型)などの形式になります。「イージス・システム搭載艦」はそのような斬新な設計を採用するつもりなのでしょうか? それともちょうどよい機会なのでついでに検討するだけで、本気で採用する積りは無いのかもしれません。

 戦闘用の軍艦での多胴船の採用例はあまり例が無く、小さなミサイル艇では幾つかありますが、駆逐艦以上の大きさでは採用例がありません。アメリカ海軍の三胴船型フリゲート「インディペンデンス」級(満載排水量約3000トン)が現在のところ一番大きな部類の多胴船の水上戦闘艦になります。

 過去に日米共同研究で「高速多胴船の最適化」という三胴船(トリマラン型)の研究が行われたことはありますが、これは1000トン程度の小さな高速哨戒艦で設計されています。

防衛装備庁より日米共同研究トリマラン艦
防衛装備庁より日米共同研究トリマラン艦

Research on Future Trimaran (US-JAPAN Co-operative Research)

防衛装備庁より「将来三胴船基礎技術」
防衛装備庁より「将来三胴船基礎技術」

外部評価報告書 「将来三胴船基礎技術の研究」 :防衛装備庁

 なお参考までに海上自衛隊の最新鋭イージス艦「まや」型は満載排水量約10000トンです。戦力化を急ぐのであれば「イージス・システム搭載艦」が多胴船型を採用するとは非常に考え難いことですが、もしも採用された場合は、イランで計画中の三胴船型戦闘艦「Safineh」計画(当初3000トンと伝えられていたが6000トン級という情報が判明)を抜いて、世界最大の多胴船型水上戦闘艦となるかもしれません。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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