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内閣支持率は危険水域に!それでも続く岸田政権

安積明子政治ジャーナリスト
支持率低下に頭が痛い?(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

青木率が点滅し始めた

 内閣支持率の下落が止まらない。共同通信が9月17日と18日に実施した世論調査では、岸田政権を支持すると回答したのは40.4%で、前回(8月10日と11日に実施)より5.7ポイント下落した。過去最低だった7月30日と31日の調査の51%を下回り、底が抜けた印象だ。

 他の調査を見ても、内閣支持率は下落の一途をたどっている。9月9日から11日までNHKが行った調査は岸田政権の支持率は前回から6ポイント減の40%で、10日と11日に実施された朝日新聞の調査も、前回から6ポイント減の41%。いずれも内閣成立以来の最低値の記録だ。

 なかでも深刻なのは、毎日新聞と社会調査研究センターが9月17日と18日に行った調査だろう。岸田内閣の支持率は前回(8月20日と21日に実施)より7ポイント下落して29%となったが、一般的に内閣支持率は30%を切ると危険水域と言われる。しかも自民党だけ政党支持率が下がっており、前回から6ポイント減の23%。内閣支持率と合わせると52となり、「50を割ると政権が倒れる」とされる青木率が点滅する。

解散すら囁かれるが……

 岸田政権にとって最もショックだったのは、9月9日から12日まで行われた時事通信の調査だろう。面接方式で行われるため、もっとも世論を反映しているとされる同調査では、岸田政権の支持率は前回から12ポイントも低い32.3%を記録した。

 この時に囁かれたのは、年内解散説だ。支持率の下落傾向が続くなら、落ち切らないうちに解散して政権を建て直すというのが常套手段。臨時国会が10月3日に招集される予定だが、これなら年内解散・総選挙も可能な日程だ。物価対策を盛り込んだ第2次補正予算を準備していることも、選挙準備と見なせるだろう。しかし与党側にはすぐに解散しにくい事情もある。

 ひとつは友党である公明党の事情だ。週刊文春と週刊新潮はそれぞれ9月8日発売号で、熊野正士参議院議員の女性問題を報じた。そもそも公明党はこの種のスキャンダルに非常に厳しく、すぐさま該当者を議員辞職させるとともに離党させ、まさに“跡形もなく”処理してきた。2017年9月に女性に宿舎の鍵を渡したことが週刊文春で報じられた長沢広明復興副大臣(当時)の場合は、25日に文春編集部から取材が入ったことで問題が発覚。翌日には長沢氏は公明党を離党し、議員辞職もやむなくされた。

やはり山口代表でないとダメ
やはり山口代表でないとダメ写真:つのだよしお/アフロ

熊野氏を切り離すことができない事情

 だが熊野氏の場合は8月下旬に入院して以来、外部からの接触を一切禁じられている状態だ。すなわち本人の意思が必要な辞職願を書くこともままならず、離党もできないということだ。公明党としてはスキャンダルを切り離すためには熊野氏を除名する手段もないわけではないが、それでは党としての責任逃れという批判を受けかねない。

 そしてこの問題は、山口那津男代表の8期目となる代表続投を決定付けた。もっとも後継者とされた石井啓一幹事長の党内の評価がイマイチであるため、山口続投への期待が大きいことが主な原因だ。だがもしここで代表の座を降りれば、熊野氏の問題に山口代表が責任をとったという形になりかねない。2誌の記事の内容の一部を「事実ではない」として文藝春秋社と新潮社を山口代表と北側一雄副代表が訴えている以上、誤解は避けなければならないからだ。

“森ショック”で岸田政権は救われる?

依然として影響力が絶大な森元首相
依然として影響力が絶大な森元首相写真:Motoo Naka/アフロ

 東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約を巡る汚職事件も、少なからず影響するはずだ。すでに森喜朗元首相は検察の任意聴取に3度応じており、現職議員の関与も囁かれている。よって臨時国会が始まるとこの問題について野党が激しく追及することは間違いなく、旧統一教会問題なども加われば、自民党は火だるまになりかねない。もっとも反清和研の勢力は、それを望んでいる様子でもあるらしい。というのも、安倍晋三元首相という軸を失った清和研にはもはや求心力がないからだ。清和研が最も影響を受けた旧統一教会の問題に加え、元領袖として依然として権力を握る森元首相の動向次第で、派閥が一気に分裂しかねない。

 では政権に最少のダメージでこの危機を逃れる方法はあるのか。それは臨時国会開会前の逮捕だ。そうなれば野党の追及に対して、岸田政権としては「すでに司直の手に委ねている」との言い訳が使えるが、解散総選挙はしばらくお預けとなる。多くの国民にとって清和研でも他の派閥でも自民党であることには変わりなく、派閥の事情は関係ない。

 内閣支持率の急降下は、ほぼ1年前の菅政権の退陣を思い出させる。あの時は9月の自民党総裁選や10月の衆議院議員の任期満了を前に菅義偉首相(当時)が追い詰められたためだが、今回はそのような事情はない。岸田首相には「黄金の3年間」の強みが残っている。

 ただひとつ脅威があるとすれば、自民党の政党支持率が内閣支持率を上回り、党内からの突き上げを喰うことだが、その急先鋒に立つはずの安倍元首相は今は亡く、強大なライバルも不在。さらに野党も1年前より弱体化しており、「低支持率の首相」という汚名に甘んじれば、延命を図ることも可能。ただしそれが、日本のためかどうか……。果たして我々の民意は“聞く力”を誇る岸田首相に届くのか―。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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