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サブカルの聖地・アキバの路地裏でタイムトラベル。孤高のジャンボ串に会いにいく【とり庄/東京】


今回、冒険するのは東京・秋葉原の「とり庄」。駅からほど近く。煌々とした電気街の路地裏にポツリと佇むこの焼鳥屋は、そこに店があることを知らなければ素通りしてしまうかもしれない……。ただひっそりと、粛々と。サブカルの聖地に残る昭和レトロの匂いに誘われて暖簾をくぐった。

焼鳥は1.5~2倍ほどある大ぶり

赤提灯に赤い暖簾、ビールケース、折りたたまれた台車。んん。なんとまぁ、渋いこと。電気街の喧騒をよそに、路地裏の「とり庄」だけ昭和の面影を残している。

時計に目をやると18時。薄暗く小狭いカウンターには仕事帰りと思しき先客の姿があった。それもおそらく、いつも通りの風景。一番奥に通され、とりあえずのビールを頼む。ジョッキは冷凍室から出したばかりの、キンッキンのやつだ。

さぁ、焼鳥だ。5本、7本、10本、14本のセットがあるのだけれど、ここが注意どころ。というのも「とり庄」の串はとにかくデカい。よくある焼鳥屋の串と比べても優に1.5倍〜2倍。もし10本以上食べるつもりなら、よほど腹を空かしておかないと収まらないはず。

5本セットの一例
5本セットの一例

「とり庄」は今どきの焼鳥屋のように1本ずつ……ではなく、その日、その時の状況に応じて、数本が一度に出される。きっと昔から変わらないだろうスタイル。正直、串の盛り合わせは得意ではない(冷めるから)のだけれど、ここは「郷に入っては郷に従え」といったところ。まずは手堅く5本セットだ。

砂肝
砂肝

銀杏
銀杏

何貫か分からないほどにたっっぷりと打たれた砂肝に、銀杏。砂肝のジャックジャクとした食感、強めに当てた塩がビールをぐいぐい呼び寄せる。銀杏もしかり。そうそう。「とり庄」は大ぶりな串に塩をきちっと効かせる。そんな焼鳥だ。

ねぎま
ねぎま

つくね
つくね

ねぎまとつくねは、こっくりとしたタレで。このねぎまもいったい何グラムあるのかと思うくらいにずっしりとして、肉の重みが指先に伝ってくるよう……。挟まれたねぎの焦げ具合といい、もう昭和レトロ感、満載。

繊細というわけではないけれど、無性にこういうタレのねぎまを食べたくなる時があるのは、子供の頃に食べたねぎまの味が舌に刻まれているからかもしれない。うーん。焼鳥のDNA恐るべし、だ。

手羽
手羽

さて、5本セットの最後は大ぶりな手羽。これをひっくり返し、アッツアツの骨をひねって一つ一つはがしていく。骨まわりに付いた肉を食べたなら、あとは手羽肉にハフハフ! とかぶり付くだけ。いい。若鶏の手羽を食べるときは、いつもこの時間が愛おしい……。

骨をはがした手羽
骨をはがした手羽

骨をはがした手羽
骨をはがした手羽

「とり庄」の隠れた一品は、皮

手羽をたいらげ、これで終えるつもりだったのだけれど、もう1本食べておきたいネタがあったことを思い出した。それが「皮」だ。

ただ、皮といっても「とり庄」のネタは風変りで、ねぎに皮を巻き込み、パリッと焼き上げたものを指している。

皮

「青のり、置いておきますね」と大将がぼそり。そうそう、ここでもうひと味。七味でもなく山椒でもなく、青のりを振りかけるんだ。

ほんのりとしたねぎの甘みと皮の甘み。そこに、青のりの磯の香りをふんわりまとわせて。派手さはないものの「とり庄」の隠れた一品と言えるネタかもしれない。

結局、焼鳥は6本。〆はアツアツのスープで。ジャンボ串のいいところは、串だけで十分満たされること。それがテンポよく出されるので、1時間くらいでサクッと飲んで摘まんで……という客も多いわけだ。

帰り際、客入りも落ち着いていたので創業何年になるのか聞いてみれば「もう40年を超えましたね。秋葉原の町並みも随分と変わった」と大将。

「なんかね、店を出るとふと、真っ白な世界が広がっているように感じることがあるんだよね……」

まるで川端康成の『雪国』の書き出しを思わせる言葉。オタク、サブカル、ポップカルチャーの聖地として発展し続ける電気街で、ここだけは昔のまま時を止めている。もはや、昭和遺産といったところ。

でも「とり庄」はそれでいい。それがいいんだ。

店舗情報

【店名】とり庄
【最寄り駅】秋葉原駅
【住所】東京都千代田区外神田4-3-12
【予約】03-3251-0290
【定休日】日曜
【串のアラカルト】あり

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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