【ノート】アルフォンス・ミュシャ「王道十二宮 ラ・プリュム誌のカレンダー」のノートをふだん使いする
ミュシャ展が開催中
ミュシャ展が、現在、神奈川県茅ヶ崎市の茅ヶ崎市美術館で開催されています(8月25日まで 詳細は https://www.chigasaki-museum.jp 参照のこと)。
その作品群を実際に見て楽しむ機会としてはとても貴重です。ちなみに一部を除いては撮影も可能です。
そして作品群の鑑賞と同じかそれ以上に楽しみなのは、ミュージアムショップのグッズ類ですね。
こんにちは。デジアナリスト・手帳評論家・歌手の舘神龍彦(たてがみたつひこ)です。
今回は、このミュシャ展のミュージアムショップで見つけた、ノート、そしてペンケースを紹介します。
ミュシャとは
アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)は、19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパの芸術様式「アール・ヌーボー」を代表する画家です。ちなみに女性の絵が有名ですが男性です。
ミュシャは、舞台女優サラ・ベルナールの演劇「ジスモンド」のポスターを描いたことで一躍有名になったというエピソードがあります。これには諸説あり、いきなり白羽の矢が立てられたというものもあれば、かなり前から「ジスモンド」のために仕事をしていたという話もあります。
ともあれ、女優サラ・ベルナールの演劇のポスターが、ミュシャのフランスにおける知名度と名声の向上に貢献したことは間違いなさそうです。
そしてこのときに描かれたポスターは後年に大きな影響を与えます。
文言と円環やアーチ、植物、それに中央の女性という組み合わせ。今でこそよく見る構成です。そしてその源流のひとつこそが、このアルフォンス・ミュシャなのです。
3つの展示室を巡って作品と生涯をたどる
この展覧会では、3つの展示室を周りながらミュシャの主要な作品を時代ごとに見る事ができます。また3つめの展示室では、ミュシャ関連の書籍ではあまり紹介されていないような、切手やお菓子のパッケージなどもあります。
絵やポスター、パッケージ、お皿etc それぞれに共通するモチーフがありながらも、表現する形態によって微妙に作風が変わっていくのがわかると思います。
ミュシャの芸術を日常的に味わう
話を元に戻しましょう。展示を見終わるとミュージアムショップに目が行くと思います。ここには、ノートやバッジ、それに缶入りのリンツなど、ミュシャの描いた絵をあしらったいろいろなアイテムがあります。一筆箋や絵はがきなどもあります。
さてこれらをどう受け止めればいいのでしょう。
結論から言えば、これは前世紀中頃に他界したミュシャが実はのぞんでいたことではないかと考えます。
「私は芸術のための芸術を作るよりも、大衆のための絵の制作者でありたい」。
ミュシャの言葉の1つです。
そのひそみに倣って言えば、これらのノートやリンツの缶ペンケースは、まさに大衆のための絵であり、その絵が宿った文物だと言えます。
そもそも、1901年にはビスケット缶容器のデザインもしています。
つまりリンツが入った缶ペンケースは、その末裔だとも言えます。
ヴァルター・ベンヤミン(1892~1940)をひくまでもなく、複製技術時代の芸術は、アウラ=真正性を喪失しています。
そして同時に、現代は、印刷はもとより、Webの出現によって、事実上無数の複製が存在しうる時代でもあります。複製がユビキタスなのです。
もっとわかりやすく説明しましょう。たとえば、この記事のタイトル画像を、100人の人が同時にスマートフォンで見た場合、そこには100の同一の画像が存在することになります。
これが現代という時代です。
そして、印刷やバッジにプリントする技術などによって、ミュシャの絵は、いろいろな形に展開する可能性を手に入れたとも言えます。おそらくミュシャ自身は、こういう時代の到来は想像できなかったでしょう。ですが、缶ペンケースや、バッジ、ノートなどにあしらわれることこそ、実はミュシャが望んだ“大衆のための絵”ではないかとも思えるのです。